DAppsはブロックチェーン技術で運用されているアプリケーションの総称です。ゲームなど一般的な人にもなじみやすいサービスの提供が増え、にわかに注目度が高まっています。今回はこのDAppsを改めて、そもそも何なのか、DAppsはどのような分野で活用されているのか、DAppsの現在の課題は何なのか、といった点を含め細かくご説明していきます。
DAppsとは?
まず初めにDAppsとはなんなのか見ていきましょう。DAppsとはdecentralized applicationsの略です。基本的にはsを取ってdapそれらアプリケーションを総称して、DAppsと呼びます。DAppsの呼び方は色々ですが、ダップスなんて呼ばれることも。Decentralizedは非中央集権という意味ですが、この言い方はお分かりの通り、非中央集権的なシステム、要するにDAppsはブロックチェーン技術を応用したアプリケーションになります。大枠で言ってしまえば実は仮想通貨ビットコインもdappの一つなのです。DAppsを非常に簡単に言うと上述の説明で問題ないのですが、厳密にいうと以下の三つの定義全てに当てはまるものが、一般的にはDAppsと呼ばれています。
オープンソースのアプリケーションであり、特定の管理者に制御されず分散化されていてオペレーションは自動化されている
DAppsは、オープンソースや特定の管理者に制御されずに分散化されているという部分は仮想通貨お馴染みの文言です。ちなみに自動化という部分は鋭い方ならお気づきの通り、ブロックチェーン上で実行される自動の契約「スマートコントラクト」を指しています。
さらにお気づきの方は「あれっさっき仮想通貨ビットコインもDAppsって言っていたけど、スマートコントラクトって実装していたっけ」とお思いかもしれません。事実、スマートコントラクトはある種仮想通貨イーサリアムの専売特許のようにもなっています。現在目にすることの多いDAppsも多くがイーサリアムのプラットフォームを利用しています。ですが、実は仮想通貨ビットコインのプロトコルはもともとスマートコントラクトを実装可能です。
ただ、仮想通貨ビットコインの場合はもともとが「革新的な決済サービス」として生まれスマートコントラクトを広めるために作られたものではありません。対して仮想通貨イーサリアムは仮想通貨ビットコインとの差異を明確にするため、スマートコントラクトを強みとして打ち出しました。ここに違いがあるのです。少し話がずれましたが、DAppsはまず定義の一つとして、繰り返しになりますが、オープンソースのアプリケーションかつ分散化されていてそのおぺーレーションは自動化されています。
暗号化されたトークンを持ち、参加者にはトークンで報酬が支払われる
DAppsの定義の二つ目、仮想通貨ビットコインを事例にみてみるとよいでしょう。仮想通貨ビットコインでおなじみとなった仮想通貨のマイニングですがまさしくこの定義そのものの作業です。マイニングも成功者には報酬として、トークンである仮想通貨ビットコインが支払われます。この実際の場面でいうところのDAppsの定義部分は、ゲームなど独自の経済圏が生まれやすい分野に強みがあるといわれています。
ユーザーの同意によってプロトコルが改善される
DAppsの三つ目の定義です。システムに参加、利用しているユーザー間の同意によってシステムそのもののプロトコルを変えていくことが可能なものがDAppsです。先ほどの分散化の概念もここに大きくかかわってきます。中央という決定組織がいないからこそ、ユーザー間の同意によって、プロトコルの改善という大きな仕様変更ができるようになっています。
これら三つの定義を持つものが完全なDAppsです。投機目的として注目されがちな仮想通貨関連技術ですが、このDAppsへの運用という点で現在は実社会での利用という側面でも非常に注目され始めています。現在の仮想通貨などのアプリケーションは中央集権的な仕組みを持っています。便利な一方で大きな問題を持っているのも事実です。中心が存在するがゆえに、攻撃を受けると全てが台無しになってしまう。中央が存在するために、不透明になりがち。また中間搾取者が入るため、手数料が高額になる。こういった大きなデメリットを持っています。
これらデメリットはスマホゲームを想像してもらうといいでしょう。運営側のサーバーがダウンすればゲームは大幅にストップします。DAppsであれば、ブロックチェーン上に分散しているサーバーによって、システムが運用されているため、どこかが落ちてもどこかがその代わりをすれば問題ありません。多少影響を受ける可能性はありますが、少なくともDAppsが完全にダウンすることはないのです。
また、たびたびガチャ課金の問題が話題になりますが、これも中央集権的な運営が存在していて、仕組みがわからないことから端を発しています。DAppsであれば、オープンソースであり非常に透明性が高く、最初からガチャの出現率もわかってしまいます。仮に不正を行ったとしてもそのこともすぐにわかってしまうため、DAppsで不正を行うこともできないのです。
DAppsはこういったように、それまでの中央集権的なアプリケーションが抱える問題を解決する素養を持っています。そのため非常に話題になっているのです。識者やプログラマーの間では、今後のアプリケーションはDAppsのように分散化したものが主流になっているとも予測されています。
DAppsの実用事例
現在は依然として使用段階で、完全にDAppsとして運用されているものはありません。ですが、以下の分野で今後運用が期待されている他いくつかのDAppsサービスが試験的に運用されています。
ゲーム
まずゲームです。先ほどDAppsのスマホゲームでの例を提示したように、ゲームでは不透明性や中央集権的な仕組みによる不安などを克服するべく、Dappsを作る試みがなされています。現時点で、仮想通貨イーサリアムの仕組みを運用した「イーサエモン」「bit pet」「クリプトキティーズ」といったゲームが試用されています。仮想通貨での課金アイテムの購入や販売が行えるようになっています。
現在はまだゲームとしての完成度は低いため仮想通貨投資目的のユーザーが先行者利益を目的にプレイしているような状況です。ですが、今後システムの改善が進み、ゲームとしても楽しむことができるようなものができれば、SF小説や漫画の世界のような仮想現実を舞台とした夢のようなゲームができる可能性もあるのです。
取引所
仮想通貨取引所、仮想通貨が抱えてしまった大きな誤算の一つでしょう。現在は非中央分権化を目指した、仮想通貨が中央集権的な仮想通貨取引所に管理されています。当然そういった状態を改善しようとすべく生まれるものがあるわけで、その一つがDappsの仮想通貨取引所です。現在は「0x」というものが有名です。ただ、実際のところ、中央集権状態にはならないものの、結果としてユーザーが仮想通貨の安全を担保しなくてはならない状態になっていて、依然として問題は残っています。
予測市場
将来を見越して先にお金をかける、市場のことを指しています。この市場の透明性を果たすために、仮想通貨関連技術、ひいてはDappsが有効なのではないかといわれています。DAppsは透明性が高いため不正などを行いにくくする可能性があるためです。現在は「Gnosis」というサービスが有名です。
分散型ストレージ
分散化しておくことで、データの流出、あるいは紛失を防げるということでストレージの分野でもDappsが注目を集めています。この分野では2014年と比較的早くから活動を始めた「storj」や独自のスマートコントラクト技術を運用している「sia」というサービスが現在有名です。
著作権保護
最後にご紹介させていただく、Dappsでの運用が期待されている分野が著作権保護です。ブロックチェーン技術は完全オープンということで、あれっ?とお思いのかたも多いかもしれませんが、それはあくまでソース上での話。DAppsのオープンなシステムは著作権保護の観点でも有用です。不正利用がすぐにわかるからです。また、分散されているため、中央がいなくても運用が可能。人件費の削減などにもつながります。
Dappsの今後の課題
ここまででご紹介してきたように非常に有用な点のあるブロックチェーン技術を利用したアプリケーションDApps。ですが現在使用段階とご説明させていただいたように、DAppsは未解決の課題を多数抱えています。大きく分けるとそれは二つです。一つは取引手数料の問題。これは仮想通貨イーサリアムや仮想通貨ビットコインのスケーラビリティ問題にも大きくかかわってくることです。取引数が増えてしまえば現在のシステム上、取引にかかる手数料、時間共に増えるようになってしまっています。それはDAppsでも同じなのです。
もう一つが、スマートコントラクトの処理速度の問題。ブロックチェーン技術は分散されて管理されています。運用するのは一つ一つの起点となるコンピューター上です。分散されていて一つ一つの影響は小さいとは言え、現段階では各起点となるコンピューターの処理速度にばらつきがあり、また性能の低いコンピューターにシステムが影響を受けるようになってしまっています。こういった点を解決することが求められています。
ブロックチェーン技術を利用したDAppsは現在の中央集権的なアプリケーションが抱える問題を根本的に解決する可能性を持っています。依然として、使用段階ですが、見通しは明るいといえます。ゲームも多数提供されています。仮想通貨投資はちょっとどうも、という方はまずはDAppsのゲームから始めてみるのもいいかもしません。