これまで仮想通貨に冷たい目線を注いでいた大企業が次々と市場に参入を果たしています。この記事ではそうした仮想通貨市場に参入することを発表した大企業の中でも注目すべきものと、大企業が参入することによる影響をまとめてご説明していきたいと思います。

仮想通貨に大企業が続々参入

仮想通貨に大企業が続々参戦仮想通貨市場、その基幹技術であるブロックチェーンの有用性が広く知れわたり、好意的な意見も目にするようになりましたが、依然として不透明な部分も多く、国家による規制も依然として厳しいものが多いです。当然、大企業も仮想通貨に否定的なもの多数でした。ブロックチェーン技術には肯定的だが、基本的に仮想通貨の期待度に関しては懐疑的だったわけです。技術を試験的に運用している企業もあったが、多くはIT関連企業で、金融企業の参入はどちらかというとトレンドに載っているようなところもありました。

だが、最近では本格的に大手企業が仮想通貨事業に参入しだしている、あるいは参入を検討していることを公式に発表しだしています。そもそもGMOのように取引所を持っているところもあるが、最近では大手銀行の一つである三菱東京UFJ銀行が取引所を、日本大手ECの一つである楽天が独自仮想通貨発行を検討していることを発表し話題になりました。

日本では楽天が独自通貨、三菱が取引所の運用を検討中

日本では楽天の三木谷会長が2月27日にスペイン、バルセロナで行われた、IT系企業による世界最大級の見本市「モバイル・ワールド・コングレス」で独自通貨「楽天コイン」の構想を発表しました。2014年にはビットコイン決算代行サービスの「bitnet」の知的財産権を保有、イギリスでブロックチェーン関連技術の研究所を開くなど、仮想通貨に限らずフィンテック研究に積極的に取り組んでいた楽天。早くから仮想通貨事業に参入することは噂されていました。

ですが、実際のところは楽天市場の商取引にビットコインを使うのではないかという程度のものだったのです。しかしながら、2月27日に行われた発表は世間を驚かせました。実際のところは、いつ、どこで、どのように「楽天コイン」を運用するのかは定かではありません。完全に試験段階です。既存の大手企業としては世界的に見てもかなり早い段階で、仮想通貨事業への参入を発表した稀有な例と言えます。

また、日本でいち早く仮想通貨事業への参入を公表しているのが三菱東京ufj銀行です。日本の大手取引所であるbitflyerに投資をするなど早くから日本における仮想通貨事業では影響力を持っていました。その三菱東京UFJ銀行も楽天同様、独自の仮想通貨MUFGコインを発行する計画を公表しています。ただ、こちらは楽天に比べると一歩踏み込んでいます。すでにある程度の計画を立てていて、2018年度中にはMUFGコインを流通させるための取引所を設立、ここに上場して運用を開始することを発表しています。うまくいけば世界で初めて独自の仮想通貨を運用する大手金融機関が誕生することになります。

日本国政府の仮想通貨への取り組み

仮想通貨事業参入企業をまとめてご紹介こうした背景には単純に仮想通貨を支えるブロックチェーン技術の革新性がより現実味を帯びてきた、一般社会での利用も視野に入れることができるようになったということもありますが、より大きいと考えられるのが日本国政府の取り組みです。日本は世界的に見ても仮想通貨に関する規制がいい意味で弱く寛容と言えます。

では全く顧客保護や規制に向けた取り組みがないかといえばそうではありません。金融庁で仮想通貨取引所の登録制度を作るなど、いち早く国主導で仮想通貨に関するガイドラインを策定、運用をスタートしました。現在も先進諸外国を含め正式に国家規模でガイドラインが策定、運用されているのは日本のみです。こうした土台があったからこそ、現在のMUFG、楽天(そのほかにもSBIやGMO,DMMがマイニングの分野で仮想通貨参入を公式に発表しています。)といった大手企業の参入にはこうした日本政府の取り組みも一役買っているのです。

それに対して仮想通貨先進国ともいえるアメリカでは政府がそもそも否定的、かつ現時点でガイドラインを発表していません。これは単純に対策が遅れているというよりも、より大きな権力構造が背景に存在してることが要因にあります。俗にウォールストリートとひとくくりにされてしまいますが、ゴールドマンサックスやJPモルガンなど大手証券取引会社をはじめ、個人ではウォーレンバフェットなど数多くの金融の兆児をアメリカは生み出しています。世界の金融市場を動かしているわけなのです。当然ここにうごめいている利権は非常に大きなものがあります。

アメリカ政府も怪しい意味ではなく、当然こうした金融市場の影響を受けています。そもそもブロックチェーンの技術はこうした中央集権的な既存の金融の仕組みではない新たな仕組みを目指して、生まれたものだったので、当然こうした業界からの否定的な声は非常に多かったのです。もちろん仮想通貨の脆弱性や、犯罪に使われやすい、そもそも価格が安定しないという当たり前の批判も多かったのは事実です。ですが、その一方でこうした利権構造も無視できないものでした。ですが、こんな流れの中、アメリカが誇る大手の証券会社もここにきて次々と仮想通貨市場への参入を表明し始めています。

海外ではゴールドマンサックス、JPモルガンなど大手証券会社が参入

アメリカではゴールドマンサックスが大手証券取引会社としてはいち早く仮想通貨事業への参入を発表しました。同社のストラテジストは最近では仮想通貨が途上国など一部の金融市場では通貨としての正式な価値を持つにいたる可能性があるということも指摘しています。それに遅れて事業に参入することを発表したのが、JPモルガンです。こちらはゴールドマンサックスの参入よりも大きな衝撃を与えました。なぜなら、JPモルガンのジェイピー・ダイモンCEOは2017年7月での公式発表で、非常に強い語調で仮想通貨を批判し懸念を表明していたからです。

事実2018年1月9日に新たな事業として仮想通貨の先物取引を検討していると発表した同社の会見でダイモン氏は自身の過去の発言を「後悔している」とまで言ったほどです。こうした大きな方向転換を仮想通貨の勝利と呼ぶ専門家も登場しています。仮想通貨は登場当時からそのブロックチェーンの革新的な技術は評価されつつも、ブロックチェーンによって描かれる新たな金融市場に関しては否定的にとらえられてきました。

事実仮想通貨の大本ともいえるビットコインの躍進の陰には「シルクロード」と呼ばれる裏市場が大きくかかわっていました。また、依然としてマウントゴックスやコインチェック騒動のように、単純にシステムだけでなく、関連する仕組みに大きな欠点が存在しているのも事実です。こうした理由からある種大手金融企業は冷めた目で、仮想通貨関連のバブルともいえる状況を傍観しているような状況でした。

ただ、広がるシェア、仮想通貨を離れて現実世界にも転用できる可能性が出てきたブロックチェーン技術など仮想通貨関連の動きが大きくなり、見逃せなくなってきたのです。もはや仮想通貨やブロックチェーン技術がうまくいくかどうかではなく、その先を見越す必要が出てきたのです。仮にブロックチェーン技術がうまくいき、仮想通貨が当初の理想としていた金融市場が完成すれば、JPモルガンやゴールドマンサックスが土台としていた過去の金融市場は全く意味がなくなってしまいます。

こうなったときに仮想通貨に対応できていない、あるいは対応が遅れていると、今いる地位が脅かされるあるいはゴールドマンサックスやJPモルガンほどの企業が立ち遅れていると世界規模の混乱が起こる可能性もある、こういった理由から、もう仮想通貨業界を無視することができなくなってきたのです。

大企業参入の影響とは

では実際こうした大手企業が仮想通貨事業に参入してきた場合どのような影響がもたらされるのでしょうか。一つ言えるのはセキュリティや顧客資産に関する問題の改善が期待されるということです。現在の仮想通貨取引を管理しているのは多くの場合技術畑の人間が中心となっています。つまりセキュリティはまだしも顧客資産の保護など金融の仕組みに関しては素人といっても過言ではない人々が行っていたのです。

大手の金融サービスであれば、そもそも膨大な過去の蓄積があります。また金融サービスでなくとも巨大な資本力を持っている企業が参入すれば、外部の人材を取り入れる、システムを運用することは既存の取引所に比べて容易でしょう。こうした部分で現在の仮想通貨市場により良い影響を与えるという期待が持たれています。その一方でマイナスの面を危惧する声も上がっているのです。

仮想通貨の市場規模は現在急上昇中70兆円ほどといわれています。非常に大きな金額です。ですが、ここであげたJPモルガンは時価総額40兆円ほどの企業、またアップルは現在世界一位で90兆円ほど、と依然として世界的企業の時価総額には及ばない規模の市場なのです。しかも、仮想通貨を保有しているのは多くの場合名もなき個人投資家たちです。大手企業が仮想通貨事業に参入すると、簡単に市場が操作されてしまう可能性があるのです。これまで仮想通貨を支えていた多くの企業によって作られてきた勢力図が塗り替えられてしまう。現在の仮想通貨投資の様相が全く変わってしまう可能性があるのです。

今回は仮想通貨市場に参入してくる大企業が増えていることを受けて、注目すべき企業と大企業が市場に参入した際の影響について記事を書いてまいりました。今の混とんとした仮想通貨市場の流れを考えると、メリットの方が大きいように思われます。その一方で仮想通貨がそもそも持っていた、自由な経済圏という理想からはかけ離れてしまう危険性もまた併せ持っています。注意して動向を見守っていく必要がありそうです。