ダイヤモンドを金融商品として取引できる取引所を、ブロックチェーンにより構築する新しいICOの「CEDEX(セデックス/単位:CED)」は現在トークンプレセール中です。ICOの目的は、ブロックチェーンを活用して、宝石のダイヤモンドを金(ゴールド)のような金融商品として取引できる世界初の取引所を立ち上げることです。

ベースは「スマートコントラクト」の技術

CEDEXはスマートコントラクト技術をベースにしたICOダイヤモンドは「永遠の輝き」というキャッチコピーでもおなじみの宝石の代表格ですが、ジュエリー用途以外に工業用の用途があります。「世界で最も堅い物質」という特性を活かしダイヤモンド工具が金属や鉱物の切断や研磨に使われています。ただし工業用に使われるのはもっぱら人工ダイヤモンドで、南アフリカやコンゴ、ロシア、カナダ、オーストラリアなどの地下から採掘した原石を研磨してつくる天然ダイヤモンドは、もっぱら宝石として取引されます。人工ダイヤモンドのジュエリーも市販され、製造技術の進歩で天然に近い品質のものも出現しています。

CEDEXはブロックチェーンの技術を利用し、天然ダイヤモンドを金(ゴールド)のような金融商品としてネット上で取引できる取引所の開設を目的に発行される仮想通貨です。CEDEX取引所が開設されれば、仮想通貨のCEDEXはそこでダイヤモンドの売買に利用されます。ダイヤモンドの実物との交換だけでなく、その配送や保管に必要な費用もCEDEXで支払えるようになります。

CEDEXの本部はイスラエルにあり、発行上限は5,000万CEDです。技術的にはイーサリアム(THE)の「スマートコントラクト」がベースの「ERC20準拠トークン」です。ダイヤモンドの取引には「鑑定書」が必要ですが、文書の管理にスマートコントラクトが適していると考えられるからです。

ダイヤモンドが金融商品になれなかった理由

CEDEXはダイヤモンドの取引所を開設しようとしていますが、ダイヤモンドの国際的な取引の現状についてご説明します。ダイヤモンドが宝石の王者なら、貴金属の王者は金(ゴールド)でしょう。世界にはロンドン、ニューヨーク、スイスのチューリッヒ、香港、東京の「5大金市場」があります。ロンドンは現物取引中心ですが、ニューヨークは先物取引中心で、金(ゴールド)は株式や為替や債券と同じように〃証券化〃され、需要と供給の関係によって価格が変動する「金融商品」として扱われています。

しかしダイヤモンドは現状、金融商品になっていません。20世紀には自由な価格設定が行われる現物市場すらありませんでした。南アフリカ・ヨハネスブルクに本社があり、世界の供給量の8割近くを占めた国際シンジケート、デ・ビアスの意向つまり「言い値」で価格が決まったからです。それが2000年7月、デ・ビアスは「1933年以来維持してきた世界のダイヤモンド原石の需給調整機能を緩和する」と発表し、ダイヤモンド価格の自由化が起きました。背景には、アフリカ以外のロシア、オーストラリア、カナダなどでダイヤモンド原石の産出量が伸び、デ・ビアスの独占的な地位が崩れたことがあります。

現在、取引の中心地はベルギーのアントワープで、世界で唯一の原石の取引市場があります。研磨済みのダイヤモンドの取引地としてはアントワープ、ロンドン、ニューヨーク、イスラエルのテルアビブが大きく、他にアムステルダム、パリ、ミラノ、ヨハネスブルク、インドのムンバイなどにもあります。しかし先物市場はまだありません。金融商品ではないというのは、そういう意味です。

ダイヤモンドの取引所をつくり、金融商品化を実現しようとしているCEDEX

CEDEXはダイヤモンドを金融商品として取引できる取引所開設を目的とした仮想通貨金(ゴールド)の地金は、日本なら三菱マテリアルなど金地金を製錬・鋳造し刻印を押した業者が純度と重さを保証するので、取引業者の店頭でそのまま手渡しての取引ができます。しかしダイヤモンドは「鑑定書」がついていなければ取引ができません。

ダイヤモンドの鑑定は難関の資格試験に合格した鑑定人が拡大鏡をのぞき込み、「カット(Cat)」「色(Color)」「透明度(ClarIty)」「重さ(Carat)」の「4つのC」で評価し、価値を査定します。天然と人工の識別も難しくなっているそうです。「重量×相場」で価格が決まる金(ゴールド)と違い、何カラットという重さだけで価格が決まるわけではありません。ですから素人には本当の価値はいくらなのか判断できず、美術品と同じように鑑定書が揃っていなければネットオークションにかけることすらできません。

しかし鑑定人も人の子で、何人かで同じダイヤモンドを鑑定しても鑑定金額にばらつきが出たりします。そうした点が、ダイヤモンドの公正な価格形成を阻み、金融商品になる道を閉ざしていたとも言えます。

そんな壁を仮想通貨の技術によって突き崩し、ダイヤモンドのネット取引所をつくり、金融商品化を実現し、流通をより活発にしようとしているのがCEDEXです。学習機能がついた独自開発のプログラム「DEX」で鑑定評価のばらつきを防ぎ、AIを活用して価格を設定し、ブロックチェーンによって鑑定から価格設定までのデータを正確に保存して透明性を確保し、スマートコントラクトによって鑑定書も設定価格も偽造されないように管理し、公正な取引を確保することで需要と供給の関係で価格が変動する金融商品化につなげます。そうなれば、同じダイヤモンドを何人かで共同所有して自分の持ち分を証券化し、自由に売れるようにもできます。

IDEXとテックフィナンシャルズが協力

CEDEXの「ダイヤモンド取引所開設構想」には、お手本の〃先輩〃がいます。それはオンラインで運営される「IDEX(アイデックス/国際ダイヤモンド取引所)」で、世界のダイヤモンド在庫の約75%の上場実績があるといわれ、2000年にデ・ビアスが価格決定から降りた後はIDEXの値付けが「世界基準」のような扱われ方をしています。

しかしIDEXは、アントワープやロンドンやニューヨークなどで活躍する約7,000人のプロのトレーダー(取引業者)だけが参加するプロのための取引所で、CEDEXが目指している卸売業者、買取業者、個人投資家などが幅広く参加し、金融商品化もできるような取引所とは異なります。それでもCEDEXはIDEXと協力関係を結び、システム運営など広範囲のノウハウを吸収しています。

CEDEXには鑑定評価のばらつきを防ぐために学習機能つきの「DEX」がありますが、そこにIDEXが培ってきた価格設定のノウハウ、取引の実データ、取引指標などを学習させています。それによってCEDEXでも適正な値付け(価格設定)や透明性のある取引を実現します。そのようにダイヤモンドのプロのトレーダーの取引実績がデータとして活用できるのはCEDEXの大きな強みです。

もう一つ、CEDEXのICOプロジェクトを支援し、90%出資するスポンサー「テックフィナンシャルズ(Tech FInancIals)」の存在も重要です。テックフィナンシャルズは金融システム専門のシステムエンジニアリング企業で、ロンドン・シティの金融街で実績がありロンドン証券取引所に上場しています。日本法人もあり日本でも事業を展開しています。銀行などの金融オンラインシステム、金融商品の取引プラットフォームの構築で培った技術力を、CEDEXに提供しています。

世界のトップトレーダーが利用するオンライン取引所のデータと、金融商品取引の本場ロンドンのシティで実績を築いた技術力が、「ダイヤモンドの金融商品化」を目標とするCEDEXのバックについているのです。

2019年、ダイヤモンドは金融商品になる?

CEDEXは公開日は日本時間で2018年3月18日ですが、トークンプレセールは3月16日から4月14日までの期間、実施されています。テックフィナンシャルズの日本法人の協力でCEDEXの日本語公式サイトが開設されていて、そこでプレセールの登録、購入ができます。イーサリアムウォレット「My Ether Wallet」を事前にインストールしておく必要があります。交換できる通貨もイーサリアムで、交換レートは500CED=1ETHです。

ホワイトペーパーによると、ダイヤモンドを取引するCEDEXプラットフォームは2018年第3四半期(7~9月)にも稼働を開始する予定です。2019年に入ると先物のカラ売り(信用売り)、レバレッジ取引、ローン取引、複数のダイヤモンドを担保とするETFの取引(バスケット取引)、1個のダイヤモンドを複数の投資家で共同投資など投資手法を拡大し、デリバティブ取引が盛んな金(ゴールド)と同じように「金融商品」としての体裁を整えていきます。

ダイヤモンドというと「希少価値で最も高価」というイメージがあると思いますが、実際はそれよりも高価な宝石はいくつもあります。探鉱、掘削技術の進歩で世界の各地で天然ダイヤモンドの増産が進み、ダイヤモンドは流通量の多い「並みの宝石になった」とも言われています。だからこそ今は、ダイヤモンドが金融商品としてのステータスを確立するチャンスと言えます。その意味でCEDEXはタイミングがよく、今後の成長が期待できる仮想通貨と言えるでしょう。