ビットコイン市場に変化が出ています。ハードフォークの話題が出てから価格上昇を続けていたビットコインの相場が上げ止まり、その価値を急落させるという大荒れを見せました。一時は80万円を超えていたその価値はわずか2日の間に20万円減の60万円台に下落し、投資家たちにただならぬ恐怖を与えています。その後70万円まで回復したのですが、すぐに下落する様子は市場の不安心理が影響しているのでしょう。
Segwit2x分裂の中断が原因
この市場の動きには、11月11日のSegwit2xがハードフォークを一時中断するというニュースが影響しています。10月末まで順調に開発を進めていたSegeit2x支援企業のCEOマイク・ベルシェ氏が突然、11月11日に「今はまだ時期でない」と時期未定のハードフォーク中断を発表しました。このネガティブニュースを受けるまで、Segwit2xを支持する投資家とビットコインを支持する投資家が共通してビットコインに投資していたために相場は高騰していたのです。その状況でSegwit2xが無くなると本家ビットコインも足を引っ張られて、ビットコイン分裂によるBitcoin2x分配を期待していた投資家を筆頭に数々の投資家がこの日を境にビットコインを手放す事を決意することとなりました。結果として、これまで上がり続けていたビットコイン相場は下落に転向したのです。
ビットコイン世代バトル、技術者が勝ち、投資家が負けた
Segweit2xがビットコインに与えた影響はそれだけではありません。Segweit2xが持つ目的には、ビットコインを使用した投資・取引におけるネットワーク負担を、通貨を分裂させることで減らしてスムーズにしようという投資家目線の考えがありました。それに対して本家ビットコイン支援団体は、ブロックチェーンなどその技術力の高さとネットワークの強固さを主張しているのです。つまり、マイク・ベルシェ氏がハードフォークの中断声明で『ビットコインの成長を妨げないようにする』と発言したことは、ビットコインは投資対象となるよりも技術力を磨くことを選んだという意味になります。ビットコインにおける最大の魅力は、その流通量の多さと価値の高さです。確かにブロックチェーンの技術があってこその流通なのですが、商業の市場で自立した立場を持ったビットコインに技術のアピールは届きません。これまでよりもビットコインまたはbitcoin2xの商用利用が容易になることがほぼ確定していた状態で話が潰えてしまったため、反発が起きて「ビットコインは技術的」となってしまったのです。
ビットコイン市場から期待が集まるアルトコインに資金が流出
ビットコインの投資家が減ったところで、仮想通貨市場全体で見ると大きな変化はありません。なぜなら投資先に迷った投資家たちは、ビットコインではない他の仮想通貨アルトコインに再び投資するからです。実際、ビットコインの相場が下がると反比例して有名銘柄全体の相場が上がっています。その中でも今回上昇率が顕著だったのがエイダコインとビットコインキャッシュです。特にビットコインキャッシュの伸び幅は大きく、最高額は300%アップの30万円超となり、その後急落したものの150%アップの15万円程度で落ち着いています。この相場急騰に伴い世間から注目されるようになったビットコインキャッシュは、その性質がビットコインと非常に酷似しているためにビットコインの世代交代とまで騒がれています。
ビットコインキャッシュはビットコインよりもキャパシティであるブロックサイズが大きく、取引にかかるコストと時間が圧縮されるためにSegwit2xが予測する未来に最も近い位置にあります。最近のビットコインは送金時間の間隔が長くなり、手数料も高くなってしまったために、この機能を持つビットコインキャッシュは本家ビットコインの穴埋めをできるのです。それでいて処理能力は、拡張次第では現在の主流の支払いシステム(VISA等)と肩を並べられるほどにまで向上させることができるということもテストによって実証されているようです。加えてビットコインキャッシュは、ネットワークへの攻撃対策もすでに済んでおり、その一方で、他のビットコインではまだ同様の対応がなされていないため、ビットコインキャッシュが優れていると言えます。
ではなぜ今までビットコインキャッシュが注目されてこなかったのでしょうか。その答えはビットコインキャッシュの公開日にあります。2017年8月1日、Segwit2x同様にビットコインのハードフォークにより分裂し、誕生しました。まだ公開されて3ヶ月しか経っていない為、市場の認知度が低かったことが原因なのです。
また、公開当初は今回の騒動と同様に大きな対立が行われていた為に、まだビットコインキャッシュの支持は少なかったのです。多くのサイトでその有用性について説明はされていたものの、結局は「本家ビットコインがあるから」という理由と目立った話題性が無かった為に上昇トレンドに乗れず、投資対象になるのかどうか多くの投資家は迷い、手を出せずにいました。
ビットコインキャッシュに投資する人々
ビットコインキャッシュ高騰の背景には、中国最大のマイニンググループの代表ジアン・ウー氏の発言内容が強く絡んでいます。彼のグループ員であるレッド・リー氏はツイッターでこのようにツイートしています。
【原文】
Jihan Wu just posted a weibo, saying tomorrow will be a brand-new day, quoting Satoshi’s post regarding block size limit.
【日本語訳】
ジアン・ウー氏はウェイボー(中国最大のSNS)に「明日は新しい日となるだろう」satoshi(ビットコイン)のブロックサイズは限界に達した。
このレッド・リー氏のツイート後にビットコインキャッシュの相場が高騰したのです。
そしてこの発言に合わせるかのように「ビットコインの教祖」と呼ばれるロジャー・バー氏は将来を見据えて自身のグループで所有する1,000BTCをビットコインキャッシュに交換しました。彼は米カリフォルニア州ロサンゼルス郊外のサンタモニカでのビットコイン関連の会合で「ビットコインキャッシュをもっと買うためにこの1,000ビットコインを使いたい」と発言しています。彼らの強気な姿勢に市場は感化されて、ビットコインキャッシュが活気に満ちているのです。
ビットコインキャッシュとビットコイン本家の動きを予測する
ビットコインキャッシュの初アプローチは非常に短命でした。最高相場の30万円を迎えた直後に利確者が続出し、30分程度でその価値を半値ほどに落としました。この現象は相場が高騰する前によく見受けられる現象であり、一時的高騰した通貨を下落する前に利確しようという魂胆があります。そのためビットコインキャッシュの相場は当初に比べて確実に上がっており、10万円程度だった相場は15万円程度になっています。あいにく現状では再び高騰するための材料が無い為に相場は伸び悩んでいますが、今後期待できる通貨として話題を呼んでいます。現状では相場が安いうちに購入し、今後に期待してホールドしておくことがベストでしょう。
迷走の真っただ中にあるビットコインですが、市場の不安感から相場は乱れてはいるものの、一気にその価値を半値に下げるような材料は無いのでいくぶんは安心できるでしょう。
現在は取引できる場所が多くありその価値も他の通貨に比べて高い水準にあるので、相場下落の兆しがあれば市場がブレーキをかけるでしょう。
しかし今後、ビットコインキャッシュの相場が本家ビットコインに近づきその立場を確固たるものにした際には、ビットコイン「キャッシュ」の文字が外れてビットコインの世代交代が行われるかもしれません。今後の動向に注意が必要です。