ビットコイン(BTC)とイーサリアム(ETH)の2018年の価格・時価総額の推移について

イーサリアム(通貨名イーサ:ETH)は時価総額約4~5兆円の規模で、ビットコイン(BTC)に次ぐドミナンス(市場占有率)を持つアルトコインです。今年の1月26日に発生したNEM大量流出(当時レートで約580億円相当)の「コインチェック事件」によって、最高220万円超まで高騰していたBTCは、一時70万円を切る価格にまで急落しました。

70万円台から3月上旬に110万円台まで盛り返して上昇しましたが、4月現在のBTCは再び70万円前後で推移しています。BTCの時価総額も約30兆円から約12~14兆円にまで縮小していますが、BTCにもETHにも「技術的な送金能力上昇+世界各国での資産価値の承認+BTCのETF(仮想通貨の上場投信)上場の予測+イーサリアムの日本公式イベント開催(技術者向け)」などグッドニュースも相次いでいます。

イーサリアム(Ethereum)のプラットフォームで創られた通貨イーサリアム(ETH)も、2017年末にはもしかしたら近くビットコイン(BTC)の時価総額を追い抜く「フリップニング(逆転)」を起こすのではないかと言われるほどの価格高騰を見せました。1月には17万円を超える急騰を見せたETHですが、4月現在は40,000円を割り込んで続落、ETHの価格チャートとしては、急騰前の昨年11月の水準に戻ったような形になっています。

2月以降のETHの値動きは即時の売却利益を狙うような「ロング(買い)の短期投機対象」としては残念な値動きとなっていますが、プラットフォームのイーサリアムと通貨ETHの持つ「潜在的・長期的な成長可能性+魅力的なストーリー性」は未だ失われているわけではありません。

イーサリアムの「スマートコントラクト」の持つビットコイン以上の成長可能性

イーサリアムとイーサ(ETH)についての現状把握と今後の予測イーサリアムのビットコインとの最大の違いは、ブロックチェーン(分散型取引台帳)に記録できる「取引履歴(契約内容)の拡張性・応用性」であると言われています。ブロックチェーンは銀行・企業などの中央管理者を介在させずに、「改ざん困難な取引履歴」を世界中のコンピューターでマイニング(検証作業)しながら記録し続けることができます。

ビットコインは基本的にブロックチェーンを「仮想通貨の送金記録」としてのみ使いますが、イーサリアムは様々な契約を自動執行する仕組みである「スマートコントラクト(Smart Contract)」をブロックチェーン上でDApps(分散型アプリ)として稼働させることができるのです。

プラットフォームとしてのイーサリアム上で仮想通貨イーサリアム(ETH)も運用されているわけですが、イーサリアムの最大の特徴は様々な種類の「DApps(分散型アプリケーション)」を「EVM(Ethereum Virtual Machine)」という仮想マシン上で稼働させられるということです。

仮想通貨ETH以外にも、これから色々な分散型アプリケーションによる新サービスが出てくるというのが、イーサリアムの持つビットコイン(BTC)にはない「サービス拡張性」の魅力になっています。イーサリアムの循環的なエコシステムは、「ユーザー・開発者・マイナー」によって支えられます。

ユーザーとはETHを売買したり、イーサリアムトークンを購入してプロジェクトを支援したりする人で、プログラムを書く開発者とブロックチェーンをマシンパワーで検証するマイナーが加わって、相互依存的にイーサリアムのエコシステムを支えています。

天才ハッカー・ヴィタリック・ブテリンが構想する「イーサリアムとブロックチェーンの明るい未来」

天才ハッカーのヴィタリック・ブテリン氏(24)は、19歳の時点でブロックチェーンを活用して誰でも分散型アプリケーションを構築できるプラットフォーム「Ethereum」を構想していたというから驚きです。わずか18ヶ月の開発期間で実際にイーサリアムを始動させたブテリン氏は、チューリング完全なプログラミング言語「Solidity」を開発することで、既存のプログラミング言語で作れるサービスをすべて創造できるようにしたというのも凄い所です。

ブテリン氏はブロックチェーンの持つ潜在的な可能性に心酔していますが、非常に冷静に「ブロックチェーンの解決すべき課題=拡張性・効率化・プライバシー保護」も分析し尽くしています。

ブテリン氏が構想しているイーサリアムとブロックチェーンの明るい未来は、すべての人々が「支配的・管理的な中央機関」に依存することなく、「価値を伴うあらゆる情報・数字」をセキュアに自由にやり取りできる分散型アプリケーション(DApps)を持つことにあります。非中央集権的な分散した自由な未来の世界を、ロシア生まれの若き天才ハッカーが構想しているというストーリー性もイーサリアムの魅力です。

仮想通貨イーサリアム(ETH)も明るい自由な未来を実現するための一つの手段であり、ブテリン氏は「フロンティア→ホームステッド→メトロポリス→セレニティー(PoSのマイニング・アルゴリズム完成)」の段階的アップデートによってETHの完成度を高めているのです。ブテリン氏は更にインフレ回避策として、これまで無制限だったETHの発行枚数に上限を設けるべきだとして、「EIP-960」によるETH発行上限枚数の設定を提案しています。

イーサリアムクラシック(ETC)を生んだ「The DAO事件」とETCの今後の予測

創始者ヴィタリック・ブテリンが構想するイーサリアムとブロックチェーンの明るい未来イーサリアムの大規模なハッキング事件として知られているのが、自律分散型投資ファンドDAOのスプリット(資金離脱)のエラーを突かれた2016年6月の「The DAO事件」です。

自律分散型投資ファンド DAOには、プロジェクトに反対の時に自己資金を離脱させられるスプリットの機能がついていましたが、このスプリットに何度でも繰り返し資金離脱ができるエラーがあり、クラッカーがこの脆弱性に気付いて「約3,600万ETH(当時レートで約72億円)」を盗んだのです。

The DAO事件発生後の27日間は、犯人は盗んだETHを使用できない制限があったため、イーサリアム運営は「ハッキング被害そのもの」を無かったことにするため、ハードフォークを断行しました。

一時、ビットコイン(BTC)とビットコインキャッシュ(BCH)の分裂などで頻繁に話題となったハードフォークですが、「互換性のないブロックチェーンの分岐」を意味しています。つまり、全く別の仮想通貨のブロックチェーンを生み出すことがハードフォークであり、The DAO事件の被害を無かったことにしたいイーサリアム運営は、旧ETHのブロックチェーンを切り捨てて、新ETHのブロックチェーンを分岐させたのです。

この新しく分岐したブロックチェーンが「現在のイーサ(ETH)」、The DAO事件の取引履歴も残っている旧ETHのブロックチェーンが「現在のイーサリアムクラシック(ETC)」になっています。

イーサリアムクラシック(ETC)は、ブロックチェーンを絶対に改竄しないという「非中央集権的な自律性の原理主義」を守り抜いた仮想通貨ですが、ETC価格はETH価格とチャート上で連動しやすいため、現在はETHと同じく激しい下落トレンドが続いています。1月に5,500円台まで高騰したETCも、4月時点で1,400円台まで暴落しました。

しかし、オリジナルのイーサ・ブロックチェーンを継承している原理主義的な仮想通貨として、根強くホールドしているイーサリアム支持者・投資家も多いので、イーサリアムクラシック(ETC)がETHと歩調を合わせて今後再び上昇してくる可能性も少なからずあるでしょう。

プラットフォームであるイーサリアム(DApps)が持つ「技術的・応用的な可能性」は大きい

3月29日に、東京大学(文京区本郷)で創始者ヴィタリック・ブテリン氏(24)を招いて、「Ethereum(イーサリアム)」の開発者向け日本公式イベント(約500人が参加)が開催されました。注目が集まったブテリン氏の講演では、分散型アプリケーション(DApps)の開発プラットフォームであるイーサリアムが抱える「スケーラビリティー問題(取引処理能力の上限問題)」の技術的な解決策が語られています。

仮想通貨の取引処理を超高速化するビットコイン(BTC)の「ライトニングネットワーク(LN)」に相当する技術的ソリューションが、イーサリアムの「DAppsの取引処理(仮想通貨イーサの処理ではなく分散型アプリの処理)」にもあるというわけです。現在のイーサリアムの仕様では、「15回/1秒」の取引・契約の自動処理能力しかないことが、イーサリアムのスマートコントラクトを応用したDAppsの弱点とされていました。

ブテリン氏は「Plasma+Sharding」といったイーサリアム強化の新技術によって、1秒当たりのトランザクション処理能力が飛躍的に向上するので、このスケーラビリティー問題を根本的に解決できるとしています。

日本にもイーサリアムを基盤としたDApps開発者が多くいて、複数のブロックチェーンをつなげて相互運用することでより複雑な取引・契約の自動処理(スマートコントラクト)ができるようにする「COSMOSプロジェクト」などの面白い技術案も発表されています。

このイベントでストーリー性のあるイーサリアムとイーサ(ETH)の未来の成長可能性が示唆されました。技術的な進歩だけではなく、「世界の不平等・不均衡を解決する」というプラットフォーム・イーサリアムの持つ「公共的・国際的な問題解決への貢献意識」が語られたことは、長期的視点でETHのプラス材料になるでしょう。