2018年4月6日(金)、大手ネット証券会社マネックスが、コインチェックを買収することを発表して注目を浴びました。なぜ今コインチェックを買収するのか、その背景とマネックスの狙い、そして今回のニュースが仮想通貨市場へと与える影響を考察していきます。
コインチェック、経営不振へ陥った背景
マネックスはコインチェックを買収することを発表しましたが、コインチェックの経営が低迷に陥るまでの背景を見ていきます。
既にご存知の方も多いかと思いますが、事の発端は今年の1月にまで遡ります。1月26日(金)、コインチェック社が運営している仮想通貨取引所「Coincheck」よりXEMの不正流出が発覚しました。その額なんと5億2300万XEM、当時のレートに換算すると日本円で約580億円に及びます。原因としては、軟弱なセキュリティ対策に付け込んだハッカーによる盗難です。過去にも今回のような仮想通貨の盗難事件はいくつかありました。
しかし今まで過去最大と言われていたMt.GOX事件でさえ142億円の被害額です。今回の騒動がいかに歴史的大事件かということがわかりますね。この騒動をきっかけにNEM財団の天才JKホワイトハッカー(17歳)が現れたり、連日メディアで報道されたりとかなりの注目を集めました。結果的に盗まれたXEMの40%がマネーロンダリング(資金洗浄)されており、現在も犯人の追跡は続いています。
コインチェックは金融庁から業務改善命令を受け、一時入出金を中止するなど、営業は続いていましたが実質機能的には停止していました。NEMが不正送金された利用者に関しては、日本円(当時のレート1XEM=88円)で返金すると発表され、実際に3月12日(月)に実施されました。利用者からは安心の声も聞こえてきましたが、一気に580億円もの保障をしたコインチェックに対し、倒産するのでは?と心配する声もあがっていました。
マネックス、36億でコインチェック買収を発表
莫大な額のXEMがハッカーによって盗まれ、倒産の危機に陥っていたコインチェックに救いの手を差し伸べたのが大手証券会社・マネックスグループです。
一度は顧客の信頼を失ったコインチェック、さらに今は仮想通貨市場全体に厳しい風が吹いています。なぜこの状況でマネックスはコインチェック買収へと踏み切ったのでしょうか。
その経緯と目的、そしてマネックスの今後の動きを記していきます。
買収の経緯
マネックスがコインチェック買収をWeb上で発表した同日、両者のトップが出席した共同記者会見が開かれました。そこで買収の背景に関して、両社代表は以下のように説明しています。
1月末、仮想通貨XEM流出事件があった後に、マネックス側からコインチェックに対して「何かできることはないか?」とサポートの提案をしていました。そこで具体的なアクションがあったわけではなく、3月中頃になって今度はコインチェック社の方から話がしたい、とコンタクトを取りました。
コインチェックの和田社長は、流出事件があった頃から責任を感じており、社長を降りるという選択肢も考えていました。マネックス以外にも複数社合併先の候補もありましたが、マネックス社の豊富な経験と意思決定のスピード感に魅力を感じてマネックス社を選んだといいます。
マネックス社の買収の目的
最近ではマイナスなニュースが続き、逆風吹き荒れる仮想通貨市場を、なぜマネックスは買収を決意したのでしょうか?その目的を見ていきましょう。同記者会見にて、マネックス社の松本社長は買収の理由を「仮想通貨市場はもっと伸びる」と語っています。
松本社長はもともと3年前からコインチェックを利用しており、さらに自身でも仮想通貨を保有しています。仮想通貨の未来を信じていると力強く話していました。金よりも持ち運びが自由であり、決済手段や資産貯蔵としても利用ができるため今後仮想通貨市場・ビジネスはもっとメジャーになっていくと予想をしています。
また、数ある仮想通貨取引業者の中からコインチェックを選んだ理由としては、コインチェック社の知名度・ブランドバリュー・技術・顧客基盤などが魅力的だったからです。
マネックスが今まで築き上げてきた金融機関としての経験と、コインチェックが持つ仮想通貨業界における先駆者としての技術を組み合わせ『新しい時代の総合金融機関』を作っていくと語っています。
買収されたコインチェック、今後の動向
コインチェックはマネックスの完全子会社となることが確定しました。今後どのように動いていくのか、そしてそのスケジュールをまとめておきます。
まず、コインチェックという社名やブランド名はそのまま継続されます。理由としては、やはりブランド力・知名度の強さがあるからです。和田社長は取締役という立場を退任し、執行役員として技術面や開発の統括をしていきます。
なぜ和田社長を執行役員として残した?という記者からの質問に、松本社長は監督機能と経営体制の強化は責務であるため、と答えています。新体制として、まずはサービスの全面再開を目指しています。
そのためには管理体制の整備、リスク管理、金融庁への申請など、やるべきことがたくさんあります。一部通貨の入出金再開など徐々にサービスの再開をしていき、2か月程度をめどに、全面再開を目指しているといいます。
コインチェックの買収が仮想通貨市場へ及ぼす影響
今年の1月末からすでに3か月が経過、未だXEM盗難のハッカーは捕まっていませんが、ひとまずコインチェック事件は終息を迎えたと言ってもいいでしょう。今回の報道が、今後仮想通貨市場へどのような影響を及ぼすか見ていきましょう。
仮想通貨投資家にとって、コインチェック買収は好材料と捉えられています。理由としては、長い間信頼を失っていたコインチェックが資本力・経験がある大手証券会社の傘下に加わったため信頼力が増すためです。
また、マネックスグループはアメリカに拠点を置くトレードステーションの親会社でもあるため日本のみならず海外からの信頼も厚いです。
海外のファンドでありBK Capital Management CEOのBrian Kelly氏はアメリカのニュース専門放送局・CNBCに対し“日本の上場企業の元で仮想通貨取引所が管理されるということは、仮想通貨の信用を大きく引き上げることになる”とコメントしています。実際に、ここ最近価格の下げ調子が続いていたビットコインがコインチェック買収によって反発を記録しています。
今回はマネックスによるコインチェック買収の背景、目的、そして仮想通貨市場へ及ぼす影響を見てきました。かなり世間を賑わせてきたコインチェックの事件も一旦終息を迎えました。今後コインチェックがサービスの全面再開をするまで決して楽な道のりではないかと思いますが、大手資本マネックスの後ろ盾があるため管理態勢はより強固になっていくでしょう。
ユーザーが安心して取引ができる運営を目指して頂きたいです。マネックスの松本社長が会見で『仮想通貨の市場は今後ますますメジャーになっていく』と話していたように、仮想通貨はまだまだ始まったばかりです。
国内の大手企業もこぞって仮想通貨市場への参加を表明していますし、今後技術が発展されていくにつれ仮想通貨が我々の生活にも浸透していくことが予想できます。新体制となったコインチェックが、日本だけでなく世界の仮想通貨市場を牽引してくれるような大きな存在になることを期待しましょう。また、今回の報道は仮想通貨市場にとってもプラスと働く可能性が大きいです。
コインチェックのXEM流出事件は日本語のみでなく英語、スペイン語、ロシア語、ポルトガル語、海外メディアでも一斉に報道されました。不信感から一転、信頼を取り戻す事案になるでしょう。今後の新体制のコインチェック、そして仮想通貨市場の動向も要チェックです。