コインチェックに提示された業務改善命令の中身
コインチェックは1月26日に580億円相当のネムを流出させてしまいましたが、その結果3月8日に金融庁から運営面と犯罪防止や顧客保護の対策を行うように業務改善命令を受けていました。
具体的に経営面では経営戦略や経営体制の抜本的な見直しを命じられ、取締役会による各種の体制整備を言い渡されました。そして犯罪防止対策としてまず取り扱っている仮想通貨が抱えているリスクを洗い出し、マネーロンダリングやテロ資金に流用されないようにする対策を命じられました。
一方顧客保護の対策として、停止中の取引や新規の顧客によるアカウント開設に先立って顧客保護の対策を抜本的に見直し、実効性の高い対策を実施して毎月金融庁に報告するように命じられました。
これを受けてコインチェックは3月22日に業務改善計画書を提出して業務の再開に向けていましたが、業務改善命令に含まれている経営体制の抜本的な見直しは現有の経営体制を新しい経営体制に変えるということになるため、新しい支援先を模索するなど苦慮していましたが、その結果3月22日に提出した業務改善計画書の経営体制の抜本的な見直しの項目は空欄になっていました。
マネックス証券のコインチェック買収提案と立ちはだかる障害
一方マネックス証券の創業者であり現在の社長である松本大氏は急成長する仮想通貨の市場に大変な関心を抱いていました。そしてブロックチェーンやフィンテックなどの新しい技術を活用して第二の創業を行うために、仮想通貨のプラットホームを構築して仮想通貨の売買を行うサービスを2017年度中に開始する考えを抱いていて、マネックスクリプトバンクを12月に設立して仮想通貨交換業者の登録を目指していました。
ただ実際に仮想通貨交換業者に登録されるには時間がかかることもあってか、問題が発生したとはいっても仮想通貨の取引所として運営されていたコインチェックを買収することは早期に仮想通貨の売買業務が行える利点もあるため、コインチェックを買収することになりました。今回のマネックス証券によるコインチェックの買収は、銀行法がネックとなってすんなりと進まない問題点がありました。
具体的にはマネックス証券の筆頭株主が25.49%を所有しているのが静岡銀行なのですが、銀行法では銀行にかかる規制がグループ会社の業務範囲にも影響を及ぼすことになっているため、静岡銀行が筆頭株主として出資している出資先の業務も銀行法の規制対象となると判断される危険性があり、銀行法の規制対象となると仮想通貨交換業者として運営することが難しくなってしまうのです。
マネックス証券がコインチェック買収を認められた理由とIPOを目指した今後の戦略について
この銀行法の規制は銀行が仮想通貨の交換業務を行えるかどうかという問題を提示していることになりますが、その一方みずほ銀行や多くの地方銀行が円と等価で交換することが出来るJコインという仮想通貨を発行する計画を立てていますし、三菱UFJファイナンシャルグループは独自の仮想通貨であるMUFGコインの発行に向けて取引所の開設を行う意向を示しています。
静岡銀行が25.49%出資しているマネックス証券の仮想通貨交換業の運営をこれらの例に合わせて解釈するか、或いは改正銀行法が認めている銀行業の高度化と利用者の利便性を向上する業務と認められることによってマネックス証券によるコインチェックの買収は成功するわけですが、実際金融庁との話し合いを繰り返して行ってきた結果個別の案件として仮想通貨交換業を行うことが容認されました。
このことによってコインチェックの現在の役員は退任して、マネックスグループから勝屋敏彦氏がコインチェックの代表取締役に就任しましたが、このコインチェックの買収を受けて松本大氏は、2ヶ月を目処に仮想通貨交換業として登録されることを目指していて、コインチェックという名前は今後も継続して使用していくことを名言しています。
そしてその一方今後資本や内部管理体制を強化してIPOを目指していくことも明言しています。