4月6日、仮想通貨業界に激震が走りました。伝説とまで言われる著名投資家のジョージ・ソロス氏のファミリーオフィス(富裕層家族の個人資産運用を行う事務所)が仮想通貨取引に乗り出すというニュースがBloombergから報じられたからです。ソロス氏のファミリーオフィスの総資産は260億ドル(約2兆7,000億円)とまで言われており、このニュースを受けて、ここ最近6,000ドル台で低迷していたビットコインの価格は、一時的とはいえ7,000ドルまで回復しました。
さらにビッグニュースは続きます。あの金融資産家ロックフェラー家やロスチャイルド財閥もビットコインなどの仮想通貨投資に参入するというニュースです。これらの著名投資家達や巨大ファンドは、これまで仮想通貨投資には懐疑的な姿勢を示してきました。ここに来て、なぜ参入することにしたのでしょうか。今回は、仮想通貨投資への参加を表明した著名投資家を見ていくことで、投資の面から見た仮想通貨の将来性を紐解いていきます。
伝説と言われた投資家、ジョージ・ソロスとは?
この度、仮想通貨投資を表明したジョージ・ソロスは、御年87歳のハンガリー人投資家です。前述した通り、個人資産は約260億円と言われており、Bloombergが発表する億万長者ランキングには常に名を連ねる人物です。1969年に、同じく著名投資家のジム・ロジャーズと共に、クォンタム・ファンドという名のヘッジファンドを設立しています。
ソロス氏を有名にしたのは、1992年のイギリス政府の為替介入を逆手にとった、大規模なポンドの空売りです。これにより15億ドルの利益を得て、「イングランド銀行を潰した男」という異名を取りました。
ソロス氏も前述の通り、仮想通貨投資に関しては当初から懐疑的な姿勢でした。今年の1月にスイスのダボスで行われた世界経済フォーラムでは、「ビットコインは通貨ではない」といった旨の発言をし、「脱税や独裁者が海外に蓄えを作るために使われている」とすら発言しています。価格の先行きに関しては何も言及してはいなかったものの、その後仮想通貨市場は今日迄で約40%近く下落しました。
そのジョージ・ソロスがついに仮想通貨市場に参入するというのです。ソロス氏は、2017年に米国大手のアウトレット通販サイト「オーバーストック・ドットコム」の大株主(3位)になったことを発表しました。
このオーバーストック・ドットコムですが、2018年中にビットコインを決済手段として用いる最初のオンライン小売業者になることを表明しています。ソロス氏が仮想通貨に関して考えを改めたことの裏付けです。
ロックフェラー財閥が所有するベンチャーキャピタルが仮想通貨市場に参入
ロックフェラー財閥と言えば、言わずと知れた世界的な大財閥です。ソロス氏が仮想通貨への投資を始めたというニュースに続き、ロックフェラーの仮想通貨投資参入も市場を大いに賑わせました。
ロックフェラー財閥はVenRock社というベンチャーキャピタルを保有しており、そのVenRock社が仮想通貨投資機関のCoinFund社と提携するという話が出ました。VenRock社はかつてスタートアップ期だったアップルやインテルにも投資をしてきた老舗のベンチャーキャピタルで、企業の将来性を見抜く力には定評があります。
提携先のCoinFund社は、ICO(仮想通貨の新規公開)をサポートする事業や、チャットアプリ制作のKikなどの支援で注目を集めている新進気鋭の企業です。両社の目的は、ブロックチェーン関連のビジネスを立ち上げる起業家の支援です。
ブロックチェーン技術への参入は「短期的な利益の追求ではない」と両社は述べており、VenRock社も長期的な目線での強気の提携であるということがわかります。
ロスチャイルド財閥はすでにビットコインに注目していた?
ロスチャイルド家は多数の銀行の経営にも絡んでおり、そもそも非中央集権的なビットコインに対して快く思っていないという噂もあります。そんなロスチャイルド系銀行のプライベートバンキング部門が昨年の11月に、ビットコインについての分析を発表しています。
そこでは、ロスチャイルドが定義する「信頼できる通貨」の基準について明記されています。まず、価値を保管できるという点、次に評価尺度になるかどうか、最後に、取引の手段になるかどうか、です。
この基準にビットコインを当てはめると、現状相場の変動が不安定であり、評価尺度になるかどうかが怪しいため、ロスチャイルド財閥はビットコインを通貨として考えてよいのか懐疑的な姿勢でいました。しかし、ビットコインの背景にあるブロックチェーンのテクノロジーに関しては、素晴らしいものである可能性がある、とも言及しています。
ロスチャイルド財閥の仮想通貨投資に関しては、明確なニュースがまだ公表されていませんが、ロックフェラー財閥も動き出した今、その動向には注目があつまります。
米著名投資家のビル・ミラーは投資ファンドの約50%をビットコインに投資
ソロス氏と同じように米国で有名な投資家ビル・ミラーは、早くからビットコインへの投資を始めていました。特筆すべきはビル・ミラーの過去の運用成績で、2005年までの15年間、米国株式の指数であるS&P500を上回ったことで有名です。世界で最もパフォーマンスを挙げる投資家の一人です。
そんなミラー氏は、ミラー・バリュー・ファンドというファンドを運営しており、現在同ファンドの資産の50%である約11億ドルはビットコインであることを公表しています。ミラー氏は2014年の時点から個人資産の約1%をビットコインに投資していると公言しており、経済界のトップとしては異例の姿勢を維持していました。
また、昨今のいわゆる仮想通貨バブルに関しても意見を述べており、市場にとってこのバブルは、新しいテクノロジー構想が受け入れ可能なものであるかを測るために、実質的に必要なものであると語っています。今後の成長の為に必要な痛みである、ということです。
しかしながら、ファンドの50%がビットコインというのは、通常のファンドではおよそ考えられないようなかなり強気なポートフォリオです。ミラー氏はこのポートフォリオに関して、配分を変える可能性があることを示唆してはいますが、他の著名投資家と比べてポジティブな姿勢は、これまでと同様崩していません。
仮想通貨市場に億万長者が参入することはメリットなのか?
ソロス氏の様な、これまで仮想通貨投資に無関心だった投資家が参入するということは、市場にとっては一見ポジティブなイメージを与えます。事実、利益を産む公算があるから参入に踏み切ったのだと言えましょう。
しかし、我々が勘違いしてはならないのは、仮想通貨投資に参入するということは、必ずしも「買い」のポジションをとるということではない、という点です。特にソロス氏はもともと大量のポンドの空売りで名を馳せた、「売り」の達人です。
大規模な空売りを今後仕掛ける可能性も充分に考えられます。この様な大口の投資家が動く時は、相場に大きな変動が生れることもあるので、その動向には要注目です。
ソロス氏、ロックフェラー、ロスチャイルドなど経済界の巨人がようやく動き出した仮想通貨市場。これまでビットコインに対して懐疑的な姿勢をとっていた著名投資家たちも、その態度を軟化させています。仮想通貨市場は第2フェーズの幕開けを迎えているのかも知れません。