新しいICOの「Dorado(ドラード/単位:DOR)」は現在、トークン・プレセール中です。ICOの目的は、ロボット、ドローン、人工知能(AI)などのテクノロジーを利用して、商品の配達(宅配)の次世代のプラットフォームを立ち上げることです。

コストを劇的に下げる次世代物流システム

Doradoは物流革命を目的にとした仮想通貨「物流」、英語で「ロジスティックス」と言うとイメージは良いですが、要するにそれは「運送屋さん」です。モノを運んで運賃をいただくビジネスは人や馬や帆船が運んだ時代からあり、今は鉄道やトラックや貨物船や飛行機がモノを運んでいます。将来は無人の自動運転トラックやドローンも使われるようになり、荷物の上げ下ろし作業ではロボットが活躍し、人工知能(AI)などITが大きな役割を果たすようになると、誰でも想像できるでしょう。それを「スマート・ロジスティックス」と言います。Doradoはそうした次世代の物流の実現、いわゆる「物流革命」を目的に発行される仮想通貨です。

Doradoでは物流の末端の個別顧客にアクセスするという意味で「オンデマンド・デリバリー」と言っていますが、最終的なゴールは、集荷を依頼すると自動運転のトラックがやってきて、ロボットが荷物を受け取って積み込み作業を行い、トラックは配達先に直行するので倉庫は不要。運賃は仮想通貨払いや口座引き落としで法定通貨の現金不要です。配達先でも荷物を下ろして相手に手渡すのはロボットです。トラックの運行管理や顧客管理などあらゆる管理業務は人間に代わって人工知能(AI)が行うためオフィスも存在しないという近未来の「運送屋さん」です。トラックに代わってドローンが空からスピーディーに配達するオプションもあります。

そうなれば、物流業の最大の悩みとして日本でも問題になっている人手不足は解消に向かい、ロボットの作業や自動運転によって人件費がほとんどかからなくなるので運賃は現状の1~2割程度ですみ、物流コストは劇的に下がるといいます。そんなオンデマンド・デリバリーの市場規模は全世界で2,150億米ドルに達し、年率25%のペースで成長すると、モルガン・スタンレーのアナリストが試算しています。

宇宙へ最初にピザを配達する

Doradoの前身のFootout(フットアウト)は2014年にアメリカで設立された物流関連企業で、主に食品の配送、納品を行うのが本業です。顧客数は100万人を超え、売上高はおよそ5,000万米ドルです。車両や倉庫など運送業の基本的なインフラを持っていて、顧客管理やデータの処理などを行う運送業のITプラットフォームを構築し、実際のオペレーションも手がけてきた経験があります。

Doradoの経営陣はAI(人工知能)やロボットやドローンなど次世代テクノロジーを運送業にとり入れる「物流革命」を目指しています。その実現のための資金調達手段として仮想通貨のICOを行うことにしました。調達目標額は5,500万米ドルです。

技術的にはイーサリアム(ETH)の「スマートコントラクト」がベースの「ERC20準拠トークン」です。ホワイトペーパーによると、AIを活用してこんなことを構想しているようです。それは「AIchatbot(チャットボット)」というもので、ピザの宅配であれば、個々の顧客が過去にピザを注文した時間、場所、ピザの種類などをAIが分析し、たとえば「この顧客は金曜日の午後7時すぎにパーティーセットの注文が多い」などと割り出します。ピザの調理スタッフも配送スタッフもそれに対応できる準備をしておけば、注文を受けた時にピザがスムーズに配達でき、顧客満足度はアップするというわけです。Doradoではすでに数千の小売店舗、外食店舗と提携して、AIチャットボットを利用した配送を試行しているそうです。公式サイトでは「宇宙へ最初にピザを配達する」とまで言っています。

複数の収入源を持つビジネスモデルを想定

新ICOのDoradoが目指すのはAIを駆使した「スマート・ロジスティックス」もっとも、Doradoは直接配送の仕事をするわけではなく、「クーリエ」と呼んでいるトラック配送やドローンやロボットの業者とネットワークを組んで、自らはその管理とシステム提供に専念するというスタンスをとります。それは次世代タクシーといわれるUber(ウーバー)で、乗客を乗せてクルマを運転するのは個人事業主のドライバーで、Uber自体はドライバーを管理してシステムの提供に徹しているのに似ています。実際にDoradoも「オンデマンド・デリバリーのUberを目指す」と公言しています。

そのシステムでは配送料の支払い手段として仮想通貨のDoradoも使われるので、システムの規模が拡大すればDoradoの需要が伸び、その交換レートが上昇して保有者にメリットをもたらすことになります。

ビジネスを展開する国は2018年中にロシア、ポーランド、オーストラリア、カナダの4ヵ国に拡大し、2019年はEUの北欧4ヵ国とEUから離脱するイギリス、2020年はオランダ、ドイツ、トルコ、ブラジル、南アフリカ、2021年にアジアに初進出して日本、韓国、インド、タイ、インドネシアというスケジュールです。フランス、イタリア、スペイン、チェコとスイスへの進出は2022年になる予定です。

Doradoのビジネスモデルで収入源として想定しているのは、納品注文1点につき20~30%の「手数料」、2~5米ドルの「配送手数料」、検索結果ページの上位に掲載されるための「徴収手数料」、マーケティングチャネルを通じたプロモーションの「プレミアム広告サービス」、「第三者の広告サービス」の5つです。複数の収入源から得る収益がDoradoの保有者への報酬にはね返ると説明しています。

プロジェクトの競合リスクがありそうだが

DoradoのICOのトークン・プレセールは2018年2月7日に始まり、4月25日まで行われています。ボーナスの付与率は33%(2月7~21日)で始まり、30%(2月21日~3月7日)、27%(3月7~21日)、22%(3月21日~4月4日)、17%(4月4~11日)、12%(4月11~18日)、7%(4月18~25日)となっています。

プレセールを申し込める公式サイトは、日本語版はなく英語です。購入に使える通貨はイーサリアム(ETH)、ビットコイン(BTC)、ライトコイン(LTC)の3種類ですが、イーサリアムウォレット「My Ether Wallet」を事前にインストールする必要があります。

Doradoを保有するメリットとして、プレセールのボーナス以外に3ヵ月ごとの純売上高の7%の「四半期ペイアウトボーナス」、誰かにトークン購入を紹介した場合、紹介者と購入者本人への「3%分のボーナストークン」が挙げられています。なお、ICOへの信頼性を確保する目的で、発行量の約20%を占めるチームトークン(創業者や関係者の持ち分)は、3年間は売却禁止でロックされることになっています。過去の粗悪なICOでみられた経営陣による「売り逃げ」ができないようにルール化しています。

「3,000万人のアクティブユーザー、4,000万以上のオーダー、3年間で6227%の成長」という実績を持つDoradoが目指す、ロボット、ドローン、人工知能など最新のテクノロジーを駆使する物流革命は、現状ではかなりの程度、未来の先取り、可能性のかたまりです。商業利用が広く普及するまでにはまだまだ山あり、谷ありだと思われます。たとえばドローンは、日本ではその飛行が法律で厳しく規制されています。アマゾンが試行して話題になった「ドローン宅配」にしても、「雨や雪や強風の日はどうする」「途中で荷物を落として壊れたらどうする」「留守でも持ち帰らずに置いていっていいのか」「荷物を誰かに盗まれたらどうする」など、突っ込みどころが満載です。

スマート・ロジスティックスという成長市場

「スマート・ロジスティックス」は成長市場ですが、どこの国でも物流企業は大手から中小までおびただしい数があり、そのほとんどは程度の差はあれ、将来ITテクノロジーによる物流革命が起きると意識しています。アメリカではフェデラル・エクスプレスやUPS、日本では日本通運やヤマト運輸のような最大手の物流企業は以前からスマート・ロジスティックスのプラットフォームを熱心に研究していて、ロボットやドローンや人工知能や自動運転の最新の成果も、いち早く研究の対象に加えています。さらにアマゾンやアルファベット(グーグル)のようなIT業界のビッグネームも入ってきています。

Doradoはそれらに太刀打ちできるのでしょうか? 「世界的な競合企業はない」と言っていますが、弱肉強食のビジネス界に打って出るにははっきり言って競合リスクが大きく、プロジェクトの成功の可能性は限定されそうです。たとえばビジネスモデル特許が取れるような誰も思いつかない斬新なシステムを構築する見通しがあるとか、最大手かそれに次ぐぐらいの物流企業が新たにバックにつくような「サプライズ」でもあれば話は別ですが、Doradoの過剰気味の自信の裏にはそんな「隠し球」があるのでしょうか?

Doradoはスペイン語で「黄金郷」という意味です。16世紀の大航海時代にスペイン人がアンデス山脈の奥にあると信じた「El Dorado(エル・ドラード/黄金郷)」は結局まぼろしでしたが、仮想通貨のDoradoは黄金郷に行き着いて莫大な利益を得られるのか、それともまぼろしに終わるのか、今から正確に予測するのは困難です。