新しいICOの「PATRON(パトロン/単位:PAT)」のICOの目的は、流行の発信などで影響力のある「インフルエンサー」をサポートして、企業からの依頼の仲立ちなどが行えるプラットフォームをつくることです。

PATRON(パトロン)はインフルエンサーと企業の仲をとりもつ役割

仮想通貨PATRON(パトロン)の将来性PATRON(パトロン)とは昔、ヨーロッパなら王侯貴族、日本なら大名や豪商で、お金を出して画家や音楽家を保護した人のことですが、新しくICOするPATRONがお金を出して保護する対象は「インフルエンサー (influencer)」です。他人に影響を及ぼす人、その存在や行動が世間に与える影響力が大きい人、流行現象を起こす人という意味です。かつて安室奈美恵さんが人気絶頂だった時、髪型やファッションをまねる女の子「アムラー」が街にあふれましたが、安室さんは当時のインフルエンサーだったと言えます。

安室さんの頃はテレビが流行を発信しましたが、今のインフルエンサーはテレビではなく、個人がネットを通じて個人のスマホに向けて直接発信します。文字の「ブログ」や「ツイッター」、写真の「インスタグラム」、動画の「ユーチューブ」などです。そんなSNSの世界ユーザー数は2010年から2020年までの10年間で3倍になると予測されています。

今日も「ブロガー」や「ユーチューバー」で影響力のあるインフルエンサーが生まれては、消えていきます。流行の花の命は短いですから鮮度が重要で、インフルエンサーも、それをビジネスに利用したい企業も、稼げるだけ稼がないとアッという間に時代に取り残されてしまいます。流行が1年ももてば大したもので、年末恒例の「ヒット商品番付」や「新語・流行語大賞」に名前が残ります。

ですから、流行の芽を持つインフルエンサーを目ざとく、どこより早く発見し、宣伝や販売促進などで必要としそうな企業に出会わせて、お互いの条件をマッチングさせ、良好なイメージを演出したり修正をかけたりして企業のビジネスに最適化させ、失言などでイメージダウンを起こさないようインフルエンサーのリスクを管理し、メディアにどんどん露出させてムダなく効率的にお金を稼がせ、絶妙なタイミングで退却させて、利益が最大化され結果として大きな数字を残せるしくみ(プラットフォーム)が求められます。使い捨てにされるイメージがありますが、流行に関わるビジネスとはそういうものです。インフルエンサーもそれは承知のはずです。

「シェアリングエコノミー」と言いますが、そんなインフルエンサーと企業との間をとりもち、ビジネスもリスクも利益も「シェアできる」プラットフォームを仮想通貨のテクノロジーを活用しながら築くのがPATRONの目的です。ICOによってビジネスの立ち上げに必要な資金を調達しようとしています。

インフルエンサーは職業として成り立つか

技術面で言えば、PATRON(パトロン)はイーサリアムのブロックチェーンがベースの「ERC20トークン」です。ブロックチェーン上にDApps(分散型アプリケーション)が構築され、ネット上で交わされる契約は、スマートコントラクトで効率的に、安全に管理されます。

分散型ブロックチェーンで行われるのが「インフルエンサーのSNS配信枠のトークン化」です。これは早い話がSNSによる情報発信の「先物買い」で、フォロワーの間で「次に何をするか要注目」のインフルエンサーがまだ発信していない情報の価値を仮想通貨PATRONに置き換え、何PATになるか「数値化」して、それを取引の対象にします。

たとえば、PATRONに登録したある女性モデルはインスタグラムの100万人以上のフォロワーの間で、次にどんなファッションの写真を投稿するか期待されています。その次回の投稿の配信枠をたとえば「100万PAT」というように数値化し、PATRONのプラットフォーム上のマーケットプレイスで100万PATで売り出します。それを買うのは、自社ブランドの洋服の売上げを伸ばすために、その女性モデルが服を着た写真をインスタグラムに投稿してほしいファッション企業です。取引が成立すると女性モデルはブランドの「公式アンバサダー」になり、売上収入はPATRONを通じて彼女に分配されます。

つまり、女性モデルはインフルエンサーであることで、インスタグラムへの投稿が仮想通貨のPATRONを介して金銭的な価値(価格)に置き換わり、それを売れば収入が得られるというわけです。企業がその女性モデルと直接スポンサー契約するより、一定の時期にフォロワーだけを直撃するので宣伝の訴求効果は高くなり、契約に伴うリスクも避けられるといいます。女性モデルも、所属事務所を介さず企業と直接コンタクトして契約できるので、より多くの収入が得られます。

企業とインフルエンサーの間に「Win-Win」の関係を築く仮想通貨PTRON(パトロン)

SNSで大きな影響力を持つインフルエンサーと企業の間に「Win-Win」の関係を築くPATRON日本では、インフルエンサーのマネジメントに広告会社や吉本興業などが参入していますが、そんな中間業者(代理店)経由で企業がインフルエンサーに発注すると平均40%の紹介手数料がかかります。しかし、企業が仮想通貨PATRONを購入して利用すればそんな「中間マージン」がカットされます。企業にとってはより安いコストでニーズに合致するインフルエンサーに出会って起用しやすくなり、登録したインフルエンサーにとっては収入を得るチャンスも、収入金額も増えます。そうやって企業、インフルエンサー双方にとって「Win-Win」の状況が生まれると、PATRONでは説明しています。

それ以外に、企業がインフルエンサーをM&Aでまるごと囲い込んでしまう買収、ユーチューブとインスタグラムとブログというようなSNS多チャンネルの「配信権(PATRON Live)」販売でも、インフルエンサーが出るイベントのチケット販売でも、PATRONが使われることを想定しています。

インフルエンサーに対する支援として、情報の共有、SNSの共有、M&Aの仲介、インフルエンサーに特化した資金集めのクラウドファンディング、ICOのサポートなどが挙げられています。個人のインフルエンサーが職業としてやっていけるようにお手伝いする「ワンストップショッピング」です。

中・高生に「将来なりたい職業」を聞いたアンケートで「ユーチューバー」が男子中学生で3位に入り大人たちを嘆かせました。ユーチューバーではHIKAKIN(ヒカキン)さんのような人が出ましたが、まさに影響力大のインフルエンサーです。ユーチューバーに限らずフリーランスのインフルエンサーがそれだけで食べていける、職業として立派に成り立つようにサポートするのは、PATRONが担おうとしている役割です。

PATRON(パトロン)は大手取引所「HitBTC」上場すでに決定済み

PATRON(パトロン)が注目を集める理由の一つに、発行元のPATRONチームにITや仮想通貨などの業界の有名人が集まったことが挙げられます。英国人でEasy net、RealnamesなどのIT企業を設立した起業家Keith Teare氏をコアに、IOTA創業チームのDavid A. Cohen氏、仮想通貨メディアCointelegraphの共同設立者Toni Lane Cassely氏、イーサリアム中国の共同創業者Sam Lee氏、テレビの起業家オーディション番組「マネーの虎」に出演した実業家の南原竜樹氏がいます。発行元の代表者は情報商材ビジネスで成功した「ネオヒルズ族」久積篤史氏です。顔ぶれが大きなアピールポイントになっているようで、すでに1000人を超える数のインフルエンサーがPATRONに登録済みです。

ICOスケジュールは2018年4月26日までです。発行数上限の4億PATのうち運営者への配布分は1億6,000万PATで、2億4,000万PATが売り出されます。購入に利用できる仮想通貨はイーサリアム(ETH)、ビットコイン(BTC)、ライトコイン(LTC)、イーサリアムクラシック(ETC)、ビットコインキャッシュ(BCH)の5種類で、公式サイトで購入できますが日本語版はありません。トークンの受け取りにはMyEtherWalletやMetaMaskなどERC20規格に対応したウォレットが必要です。

PATRONは2018年4月に、300種類以上の仮想通貨を取り扱う英国の仮想通貨取引所「HitBTC」上場が決定済みです。すぐに取引所上場を迎えるのは、「投資資金が長く拘束されない」「投資の回収が早い」という意味で、投資家には大きなメリットです。6月にはプラットフォームが完成して、7月から全世界で事業が本格稼働する予定です。

インフルエンサー・マーケティングの世界市場は100億ドルといわれ、「インスタグラム」だけで2019年までに20億ドルに達する予測もあります。同種の仮想通貨indaHash(IDH)は上場後、交換レートが約6倍になりました。PATRONも、登録インフルエンサーが実績を築いて有名人を輩出し、企業の評価が高まれば自動的にその価値が高まって、交換レートも上がっていくでしょう。

ただし、昔の「パトロン」もそうでしたが、人が人を支援したり、面倒をみて育てると、「カネも出すが口も出すはイヤだ」「もうひとり立ちしたい」と、支援される側に不満が生まれて関係がおかしくなることがあります。インフルエンサーも人間ですから、そうならないとは言えません。PATRONの懸念すべきリスクは、そこにあります。