日本時間で11月14日に、ビットコインキャッシュがハードフォークを実行しました。これによりビットコインの投資家たちは大きく市場心理を揺さぶられてビットコインキャッシュに移る投資家が増えて市場はざわついています。このハードフォークをきっかけに相場が上がると見る投資家が多くいますが、何故ハードフォーク後にビットコインキャッシュの相場が上がるのでしょうか。また、世間で騒がれているビットコインキャッシュクラシックは誕生するのでしょうか。
ハードフォークが行われた時のマイナーの動き
今回のハードフォークには、マイニングによって利益を出す投資家「マイナー」の動きが大きく関わっています。もともとビットコインキャッシュはビットコインよりもマイニングの10分間におけるキャパシティが多く、ビットコインが1MBという量に対してビットコインキャッシュは1MB以上のキャパを抱えることができました。それゆえマイナーの人気を得ていて、最近ではビットコインのマイニング作業量(ハッシュパワー)を上回るほどになっていたのです。
ただしそのパフォーマンスは高いものでなく、1ブロックのマイニングに1時間かかる事もありました。それがハードフォークを目前にすると多くのマイナーがビットコインキャッシュのマイニングに集中し、作業が分散されることによって1ブロック10分程度でマイニングできるほどにパフォーマンス向上したのです。仮想通貨評価サイトfork.lolの情報では、11月12日13:17時点でBTCが4.94、BCHが5.51というBTC優位のハッシュパワー量となっており、11月1日時点ではBTCが10.38、BCHが0.42だったことから、作業処理速度の速さがいかに向上したか見て分かります。そして多くのマイナーたちによるスムーズな取引が行われる中で、その相場は30万円まで高騰したのです。
Segwit2xとは異なる特殊なハードフォーク
ちょうど同時期にSegwit2xのハードフォークでネガティブニュースが流れていました。Segeit2xの目指すハードフォークは投資家目線のものであり、多量の通貨をスムーズに送金できるよう、そのキャパシティは2MBを目指し、ビットコインからの分裂を図っていたのです。
それに対しビットコインキャッシュはハードフォークを行うものの分裂は実行されず、内部プログラムの改善のみにとどまりました。投資家にとって嬉しい改善点は、これまで不透明だったキャパシティの量が明確になり8MBと大容量になったことです。これによりスムーズな送金が行えるようになったので、複数の取引所を経由するスワップ差による利益を出す事もできるでしょう。
予測される取引量増加。アップデートで実装された対策とは
以前よりビットコインキャッシュの欠点として、「ターボブロック問題」と呼ばれている
取引量増加時の送金問題がありました。加えて、ビットコインキャッシュ支援団体Bitprim.orgの代表フワン・ガラバグリア氏は『ビットコインキャッシュDAA((採掘難易度調整アルゴリズム))は本来の目的は果たしていますが、その副作用はビットコインキャッシュを傷つけています。』という発言を出しており、送金における問題が深刻な状況でした。
この問題に対して行われたのがDAAの調整であり、今回のハードフォークの一番の目的です。通常であればネットワークの問題が発生するとソフトフォークにより基本プログラムの修正で対処されることもあるのですが、ビットコインキャッシュ開発陣は「複数の案を開発・コーディング・使用している」とのことであり物理改善を望んでいる様子です。今後もこのプログラムのアップデートを繰り返して次世代の仮想通貨に対応する予定ではありますが、生憎のところ投資家の期待しているビットコインキャッシュクラシックの登場はありませんでした。
DAAの調整が行われると一体何が変わるのか
この見出しでは、仮想通貨における技術に関して踏み込んだ内容を解説しています。トレードを行う際の基礎知識をしてお読みいただくと、今後の相場を読みやすくなるでしょう。
ビットコインキャッシュはこれまで、マイニングユーザーを集めるための策としてEDA(Emergency Difficulty Adjustment)を採用していました。これはビットコインキャッシュの取引の整合性を証明するマイナーの数と実際に認証しなければならない取引数のバランスを整える仮想通貨の仕組みであり、プログラムにおける具体的手順(コンピューターアルゴリズム)です。
もう少し具体的に言うと、マイニングとは前のブロックのハッシュ値と当該ブロックの文字列、そしてナンス値をハッシュ関数に入力した出力結果が「ある条件」を満たすようなナンス値を求める計算作業のことです。ハッシュ関数は逆向きには解けないという性格をもつので、さまざまなナンス値を実際に代入して「ある条件」を満たすか実際に試行することになります。このため、マイニングの作業の難しさは、この「ある条件」の厳しさに依存します。
EDAとは12時間に6ブロックしか生成されないほどにマイニングのスピードが低下したときには「ある条件」の厳しさを緩和し、最大20%までマイニングの難易度を下げることを約束するものです。これにより難易度が下がると、マイナーは1つのブロックのマイニングに必要な処理能力・計算量が低下するために維持費となる電気料金も安く抑えることができます。マイニングにあたって最大の経費と言われる電気料金を削減できることで手数料収入の利益率増加が見込めるため、必然的にマイナーたちは緩和が行われたタイミングにこぞってマイニングを行うこととなります。そのような事態を招くと実際に取引を行った際に送金の遅延が発生しやすくなってしまう為に、NDAというアルゴリズムが制定されました。
NDA(Normal Difficulty Agreement)とは、2016ブロックごとに採掘力(ハッシュレート)を求め、前の2016ブロックに比べて劇的に採掘力ハッシュレートが上昇すれば「ある条件」を厳しくするというものです。これによりマイニングの難易度は急激に上昇し、マイナーたちは、どのタイミングでマイニングを行うと最高の収益を出せるか頭を悩ませることとなったのです。
今回のハードフォークではこれらを包括するDDA(Difficulty Adjustment Algorithms)の調整を行い、その調整内容としてEDAのマイニング難易度を急激に変更するという機能は排他されました。この機能の変化により、マイナーたちはマイニングのタイミングを図ることなくいつでも気軽にマイニングができるようになったため、マイニングの容易化とも言われています。
新型ビットコインキャッシュの出現の可能性
この仮想通貨のプログラムシステムを知ったうえで見えてくることは、ビットコインキャッシュクラシックやビットコインキャッシュプラスと噂されているハードフォーク分裂する仮想通貨の出現の可能性は現状では低いということです。
過去にビットコインが分裂してビットコインキャッシュと袂を分けた際には、取引量急増の為に1MBの送金ネットワークでは耐えきれず混雑改善を目的としていて、ソフトフォークでは対応できなかった為に2つの仮想通貨に分散したのです。今回ビットコインキャッシュが抱えている問題とはネットワークの混雑頻度の偏りによるものであり、常にネットワークに負担がある訳ではありません。ましてやハードフォークにより8MBというとても多いキャパシティを得た新型ビットコインキャッシュにおいて、回線混雑の可能性は極めて低いでしょう。それゆえに新しい仮想通貨へ分裂するメリットは無いのです。