町おこしには様々な種類があります。最も有名なものが大きなブームにもなった。ゆるキャラです。滋賀県のひこにゃんや熊本県のくまモンが有名です。他にもB級グルメ、アニメや映画を使っての町おこしなど、各地方自治体はこれでもかというくらい趣向をこらしてあの手この手で町おこしをしています。
では2016年から2017年3月31日まで日本で初めてフィンテック(ファイナンス(Finance)とテクノロジー(Technology)を合わせた造語でIT技術を使った新しい金融サービス)で町おこしの実証実験をおこなった町が、静岡県富士市です。詳しく後述しますので簡単に説明すると、NeCoban(ネコバン)というブロックチェーン技術を利用した地域ポイントシステムです。今回はNeCoban(ネコバン)というものか、他にもブロックチェーンを使用したサービスあるのかどうかを調べました。
NeCoban(ネコバン)を始めた富士市はどんな市?
市名からわかるように一年中富士山を見ることができるのが、富士市の魅力です。静岡県では浜松市、静岡市についで静岡県第3位の人口で、約24万6,000人です。つけナポリタンというご当地グルメを持ち、B1グランプリにも出場しているのでご存じの方もいらっしゃるのではないでしょうか。さらにかぐや姫伝説の地として有名なだけではなく、ゴジラシリーズの「ゴジラ対ヘドラ」や本広克行監督の映画「幕が上がる」では物語の舞台になっています。元日本代表GKの川口能活氏も富士市出身です。
NeCoban(ネコバン)とは
2016年8月22日富士市でNeCobanプロジェクトの実証実験が始められました。このプロジェクトに関わった企業は株式会社静岡銀行、マネックスグループ株式会社、富士市吉原商店街振興組合、富士つけナポリタン大志館、法人愛Bリーグ本部、株式会社Sound-F、そしてプラットフォームに、日本マイクロソフト株式会社とかなり豪華で大規模なプロジェクトだということがわかります。
NeCobanプロジェクトの日本で初めてということだったので、地元テレビ局や新聞社、そしてNHKからも取材があったのでテレビで見たことがあるという方もかなりいるのではないでしょうか。NeCobanプロジェクトのコンセプトは、商店街×まちおこし×FinTech=「NeCoban」~ブロックチェーン技術を用いた地域活性化実証実験の開始について~となっています。
ブロックチェーンとは、一言で説明してしまうと、ネット上で誰でも見ることができる台帳などといわれています。ブロックチェーンのブロックとは、例えば1分間に送金などで使用された情報のまとまりをブロックと呼んでいます。そのブロックを鎖につないでいく、というのがブロックチェーンというものです。
そしてブロックチェーンの最大の長所がブロックチェーン上の取引記録は、改ざんがほぼ不可能ということです。ほぼ不可能というのは、現在のところ非常に高度なコンピューターが必要となってくるため不可能だといわれています。したがって、誰から誰へと送金した。という事実がブロックチェーン上に記録されているので、不正や改ざんをされる心配はほぼゼロというのも過言ではありません。
NeCobanは冒頭で書いたようにブロックチェーン技術を利用した地域ポイントシステムです。株式会社Sound-Fが開発したシステムは、従来のポイント管理システムよりはるかに安価で柔軟性の高いシステムです。NeCobanの使い方はまずスマートフォンにアプリをダウンロードし、NeCobanウォレットを入手します。そして買い物の際にNeCobanを使用することで、現金との決済もできるので地域経済が活性化していくようになります。
NeCoban(ネコバン)の実証実験の理由と今後
静岡銀行のホームページ www.shizuokabank.co.jp/pdf.php/2673/280822_NR.pdf
によると、日本の各地方都市では、人口減少と少子高齢化が進んだことによって地方経済の衰退が叫ばれています。衰退の一助としてFinTechを使用することによって、地域経済にどのような効果をもたらし、またどのような問題が起こりうるのかを実験するのが、NeCoban(ネコバン)の目的です。
ブロックチェーンを使用することによって、今後の社会で幅広く活用することができるかどうか、また課題を検証します。以上のことから2点を重点的にした実証実験を行いました。
・地域の皆様がFinTechを利用して地域に根差した独自のアイデアや思いを取り組みながら協力することが、地域活性化につながるかどうか。
・ブロックチェーンの技術を活用したポイントサービスを導入することで、他の技術を利用したときよりも、どのくらい効果的か。
実験終了後は、NeCobanのサービスを「B-1グランプリ」を主宰する愛Bリーグのまちおこし団体ネットワークの協力のもと、地方自治体や国との連携も検討しながら、全国展開することを目指していく、とのことのようです。さらにNeCobanのプラットフォームを特許出願中です。
株式会社Sound-Fシニアコンサルタントである中沢勇二郎氏のインタビューによると、すでに新しい自治体でNeCobanを使ったサービスの採用が決まったと言っています。採用された要因の一つにNeCobanを導入するハードルの低さだとのことです。他のポイントサービスと違いアプリをダウンロードするだけだということが要因だったようです。そして今後は子育て支援策や観光客誘致策の一環として配布されるのではないかと考えているようです。
NeCoban(ネコバン)を使用するメリット
前述した中沢勇二郎氏のインタビューでもあるように、NeCoban(ネコバン)の導入は費用がスマートフォンだけなのでほぼかからない、ということがあります。その他NeCobanを使う客側のメリットと店のメリットをあげていきます。
客側のメリット
①NeCobanを使って買い物をすることによって割引などの特典がある。
②ビットコインなどのように、相手にNeCobanを送ったりもらったりすることができる。
③買い物をすることでNeCobanをもらうことができる。
店側のメリット
①NeCobanを使うことでその店独自のサービスを行うことができる。
②客が少なくなると予測される、雨の日などでもリアルタイムで割引情報を出すことができる。
NeCobanは非導入するにあたって高額な機械を購入する必要がないなどメリットが非常に多いのを感じました。ただお年寄り中にはスマートフォン;を使用していない、または画面が小さかったりするため、見難いこと、スマートフォン自体が使うのが苦手という方も多かったのではないか、と推測します。このような対策は次回の実証実験でどのように解決していくのかがカギになっていくでしょう。
NeCoban(ネコバン)以外のブロックチェーンを使ったサービス
ブロックチェーンを使ったサービスはまだまだ少ないといってもよいでしょう。NeCobanのように地域経済で実証実験が行われているものでさえ、多くはありません。それでもいくつかブロックチェーンを使ったサービス、または実証実験段階中のものも出始めているので、いくつか紹介していきます。
・イタンジ株式会社 ビットコインで決済できるプラットフォームを構築。
・リアルワールドゲームス ビットハンターズというゲームをすることでトークン(貨幣)を手に入れることができます。将来的にはビットコインと交換できるようにするようです。配信日は2018年度中ですが、神戸市と協力してすでに2018年3月から実証実験を開始しています。
・Mrdicalchain(メディカルチェーン)イギリスの医師によって設立されたプロジェクトで、ブロックチェーンを使った診療情報の管理や遠隔治療、健康アプリケーションの開発を目指しています。今年の7月から南西ロンドンを取り仕切るNHS団体Groves Medical Groupと実証試験が開始されます。さらにエリザベス女王病院、リーズティーチング病院、プリンセスロワイヤル病院とも今年7月から実証実験が開始される予定です。