契約から決済まで安全に自動で行なわれるスマートコントラクトの特徴
仮想通貨の中心となる技術にブロックチェーンがありますが、そのブロックチェーンで利用されているのがスマートコントラクトになります。一般的に何かを契約する場合には契約書を交わして署名を行ない、契約が成立すると契約書にサインや押印を行ないますし、場合によって保証人を立てたりします。しかし、ブロックチェーンに掲載される取引情報の中に契約を行なった情報や決済を行なった履歴を入れることで、契約書の署名から押印までの手間などを省き、ブロックチェーンで取引情報を公開することで安全性と信頼性を高めているために保証人を立てる手間も省くことが出来るため、スマートコントラクト(賢い契約)と呼ばれています。ブロックチェーンにスマートコントラクトを活用する特徴は、仮想通貨の受け渡しの記録に契約情報も載ってくるために、契約による詐欺などの被害が発生し難いことにありますし、契約を行なう手間が省けると同時に契約を交わす際にかかる費用を軽減することが出来るという特徴もあります。
仮想通貨イーサリアムが活用しているスマートコントラクトの応用例
スマートコントラクトの情報をブロックチェーンに残している仮想通貨にはイーサリアムやリスクがあり、ビットコインでは取引情報だけブロックチェーンに記録されていきますが、イーサリアムでは誰が誰に送金を行なったなどの契約を行なった記録や経緯がブロックチェーンに記録されていきますし、権利が譲渡されたときの履歴なども記録されていきます。その結果その契約内容を精査することで、その取引の正当性を証明することが出来ます。
ただこのような自動で契約や決済を行なった情報が記録されていく特徴から、スマートコントラクトは仮想通貨以外の分野でも応用が期待されています。例えば損保ジャパン日本興亜では金融派生商品である天候デリバティブの契約が発生した際に、2017年度以降から基幹となるシステムにブロックチェーンを使用して、スマートコントラクトを活用することで天候デリバティブ商品の契約や決済そして支払いの判定などを自動で行なっています。
不動産の分野でも不動産の売買に関する契約をスマートコントラクトで管理したり、賃貸借契約をスマートコントラクトで管理したりする実証実験が進んでいます。実際積水ハウスでは、賃貸住宅の入居に関わる契約などの不動産の情報を管理するシステムに、2017年度内にもスマートコントラクトを活用しての運用を、東京都や神奈川県を営業拠点にしている積和不動産で始めることを発表しています。そして2020年を目処にして積水ハウスグループ全体でスマートコントラクトを活用した不動産情報の管理システムの運用を行なっていく計画になっていますし、今後は銀行や保険そして不動産登記やマイナンバーなどと連携する計画になっています。
ブロックチェーンを活用したスマートコントラクトはIoTとの連携がカギ
このように仮想通貨以外の分野でも応用が期待でき、実際に応用が始まっているスマートコントラクトですが、その考え方は1990年代に法学者で暗号学者のNick Szabo氏が提唱していて、その応用は自動販売機にあります。自動販売機の中のシステムでは、お金を投入された事実と商品に該当するボタンを押されたという二つの契約が満たされた時に、該当する商品を出すという契約の実行がなされます。
このようにスマートコントラクトは契約の締結から実行までを自動で行なうシステムになるのですが、今後そのシステムが円滑に活用されて活用分野が広がるには、物と物をインターネットで繋げるIoTとの連携が重要なカギとなっていきます。例えばIoTとの連携としては、自動車のリース契約をスマートコントラクトで行なうことで、契約の自動化が実現出来るだけでなく、走行距離が一定基準に満たなければ翌月の保険料に割引が発生するとか、契約時にクレジットカードを登録することで、車内アプリを使ってガソリンスタンドや飲食店などを利用することが出来るようになります。一方自動車がガソリンの残量を監視していて、ガソリンが少なくなってくると給油を運転手に提言するコネクテッド給油の研究も進んでいます。このようにIoTと連携することで今後は身近なところでチケットなどの販売から、病院や役所などでの利用者の管理システムなどへの応用も期待することが可能となります。