仮想通貨を最も安全に長期保管する方法はハードウェアウォレットの利用

LedgerNanoSレジャーナノSハードウォレットの使い方1月26日に「コインチェック事件(総額5億2300万XEMの盗難事件)」が起こったことで、一般の人たちがビットコインやNEMをはじめとする仮想通貨に対して抱いた不安は「仮想通貨は盗まれてゼロになる可能性がある・盗まれた仮想通貨の被害は自己責任にされて戻ってこない恐れもある」ということでした。コインチェックがたまたま日本最大手の仮想通貨交換事業者で莫大な現預金を貯め込んでいたため、被害者は約460億円分の仮想通貨NEM補償を受けることができました。補償時点の仮想通貨NEMのレートよりもかなり高い単価(1XEM=88.549円)で計算されて日本円で戻ってきたので、現在の仮想通貨NEM暴落(約25円前後)を考えれば得をした部分もあると言えるでしょう。しかし、仮想通貨取引所に資金力(現預金)がなければ、大量の仮想通貨が仮想通貨取引所から盗まれると、1円も補償されずに仮想通貨取引所が経営破綻してしまうリスクもあるわけです。

ビットコイン(仮想通貨)を保管する場所は、「仮想通貨取引所内のウォレット」と「自己管理のウォレット」に大きく分けられます。仮想通貨取引所内のウォレットは、購入したビットコインをそのまま保管できるので非常に簡単で便利なのですが、自分で管理できない「仮想通貨取引所のセキュリティー」に仮想通貨資産を委ねるしかありません。自己管理する仮想通貨のウォレットの代表的なものは、パソコン(デスクトップ)やモバイルにダウンロードして使う「ウォレットアプリ(ウェブウォレット)」ですが、オンラインでつながっている時間もあるため、セキュリティーが抜群に高いとまでは言えません。現時点で最もセキュリティーの高い仮想通貨の保管方法とされているのは、オフラインで仮想通貨を保管できる「ハードウェアウォレット」か「ペーパーウォレット」なのです。インターネットに接続されていないこれらの仮想通貨のウォレットは、まとめて「コールドウォレット」と呼ばれることもあります。

ハードウェアウォレットのLedgerNanoS(レジャーナノS)の中身・注意点と初期設定

物理的端末のある仮想通貨用のハードウェアウォレットのうち、日本で最も多く使われているのが「LedgerNanoS」です。LedgerNanoSの注意すべき点としてLedgerNanoSは基本的にLedgerNanoSのマニュアル(説明書)もLedgerNanoS本体に表示される文章も「英語」であるため、英語が全く分からない人にとってLedgerNanoSはかなり使いにくいという事です。残念ながら、現時点ではの説明書と本体表示がすべて日本語のハードウェアウォレットはまだ開発・販売されていないので、現実的な選択肢はLedgerNanoSとTREZORしかない状態なのです。LedgerNanoSの梱包を開封すると、LedgerNanoSの中身には「LedgerNanoS本体+LedgerNanoS用のPC接続のUSBケーブル+LedgerNanoSの復元パスワードの記入用紙+LedgerNanoSのマニュアル2枚+LedgerNanoSのストラップ」が入っています。

LedgerNanoSとPCをUSBケーブルでつなぐと「Welcome→Press both buttons to begin(両方のボタンを押すと設定開始)」と表示された後、ズラズラとLedgerNanoS本体の使い方の説明が英文で表示されていきます。「To begin configuration, press both buttons.→With LedgerNanoS side buttons are used to interact and control the user interface……」と長めの英文が続くので英語が苦手な人は面食らうと思いますが、LedgerNanoSの使い方の内容自体は難しいものではありません。LedgerNanoSの基本操作について簡単に要約すると、「2つあるサイドボタンで本体を操作します+左右どちらかのボタンを押すと数値が変わります+左右のボタンを同時に押すと次の項目に移行します」という説明になっているのです。

LedgerNanoS(レジャーナノS)の初期設定についての説明

仮想通貨のセキュアな保管方法として利用が広がるハードウェアウォレット「LedgerNanoS」「Configure as new device?(新しいデバイスとして設定しますか?)」の画面でLedgerNanoSの2つのサイドボタンを同時に押すと、LedgerNanoSの「PINコードの設定画面」に移ります。LedgerNanoSのPINコードはいわゆる数字のパスワードのことで、LedgerNanoSでは「4桁の数字」を自分で設定します。0~9の数字を選べますが、LedgerNanoSの右ボタンを押すと数字が増えて、LedgerNanoSの左ボタンを押すと数字が減ります。1つ数字を選んだら、LedgerNanoSの左右のボタンを同時に押すことでその数字を決定することができます。LedgerNanoSは一般的なパスワード設定と同じで、LedgerNanoS設定後に「Confirm your PIN code.(あなたのPINコードを確認して下さい)」とLedgerNanoSに表示されるので、もう一度同じ4桁のLedgerNanoSのPINコードを入力してLedgerNanoSの左右のボタンを同時に押せばLedgerNanoSの「PINコード設定の完了」です。

次にもしもの時にLedgerNanoSの中身を完全復元できる「24個の復元パスワード(パスフレーズとも呼ばれる英単語)」を、LedgerNanoS付属のLedgerNanoS復元パスワードの記入用紙にメモしていきましょう。LedgerNanoS本体を紛失しても、この24個のLedgerNanoS復元パスワードが分かっていれば、新しいLedgerNanoSを買って仮想通貨残高を復元することが可能です。LedgerNanoSに「Write down your recovery phrase.」と表示されてから、24個の復元パスワードが(左右のボタンを押すごとに)1つずつ表示されます。

この復元パスワードの英単語(facultyなど色々な英単語が出ます)は「表示される順番」が非常に重要であり、英単語が間違っていても順番が間違っていても、端末内容(仮想通貨残高)の復元が不可能になりますから、何度も確認しながら絶対に復元パスワードを間違わないように気をつけて下さい。24個の英単語をメモし終わると、「Confirm your recovery phrase.」と表示されて復元パスワードの確認画面に移ります。無作為に表示される二つの英単語を確認すると、「Your device is new ready.(あなたのデバイスの新しい準備ができました)」の英文が出て初期設定は完了したことになります。

実際にビットコインをLedgerNanoS(レジャーナノS)に保管・送金してみる

初期設定が完了したらLedgerのウェブサイト(https://www.ledgerwallet.com/apps)にアクセスして、「Ledger Wallet Bitcoin & Altcoins」のアプリケーションをパソコンにダウンロードします。このウォレットアプリ以外にも、仮想通貨イーサリアムや仮想通貨リップル向けの専用仮想通貨アプリがありますが、アルトコインの保管・送受信に使う場合は「Ledgerマネージャー」のアプリも別途ダウンロードしておく必要があります。アプリにはデフォルトで「Chromeに追加」のボタンがあるので、ブラウザはChromeを使用すると分かりやすいでしょう。

Chromeに追加した「Ledger Wallet Bitcoin」を立ち上げて、上段バーにある「受信」をまずクリックすると「ビットコインの受け取り」の画面が表示されます。その画面に「Bitcoinアドレス+QRコード」が表示されていますので、そのアドレスを送金先に指定することで、仮想通貨取引所や他のウォレットアプリからLedgerNanoSにビットコインを送金することができます。反対に、LedgerNanoSから仮想通貨取引所や他のウォレットアプリにビットコインを送金する時は、「送信」のボタンを押して「送信先のアドレス(仮想通貨取引所ウォレットなどで表示できる)」を指定すれば送金することができます。ビットコインは、「LedgerNanoSの送受信方法」がもっともシンプルで使いやすくなっています。

一方、アルトコインの場合はLedgerNanoSから仮想通貨取引所ウォレットや他のウォレットアプリに仮想通貨を送金する場合、「本体の右ボタンを押す完了作業(本体の画面にはAmount XRP 100などの送金量が表示されています)」を行う必要があることが多いので注意して下さい。リップル(XRP)をLedgerNanoSから送金する場合には、「送信先のアドレス+タグ」の二つの情報が必要になってきますので、取引所ウォレット(ウォレットアプリ)に表示される送信先のアドレスとタグの英数字の文字列を写し間違えないように注意しましょう。

LedgerNanoS(レジャーナノS)の対応仮想通貨と問題点・脆弱性

現時点でLedgerNanoSは、「24種類もの仮想通貨の送受信」に対応しています。代表的な仮想通貨には、ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)、リップル(XRP)、ビットコインキャッシュ(BCH)、イーサリアムクラシック(ETC)、DASH(DASH)などがあります。さらに日本の取引所ではほとんど売買されていないUbiq、Neo、Ark、Stealthcoinなどのマイナーなアルトコインも保管・送受信することができます。LedgerNanoSはセキュリティーの高いハードウェアウォレットですが、注意点としては面倒でもできるだけ、Amazonの適当な出品者ではなく「公式代理店かLedger社」から買った方が良いという事があります。人によっては数百万~数千万円以上に相当する高額仮想通貨を保管する事になるため、悪意ある出品者が事前にマルウェアのウイルス(24個の復元パスワードを盗み取るウイルス)を仕掛けていたとの報告例もあるからです。

Ledger本社が報告した脆弱性としては、ウォレットアプリのマルウェア感染によってビットコインなどの受信アドレスが書き換えられ、自分のLedgerNanoSではない別のハードウェアウォレットに送金されてしまうリスクがあるとされます。しかし、これはあくまで理論上のウイルス感染の可能性についての指摘で、今までマルウェア感染によって実際にビットコインなどの仮想通貨が別の人(クラッカーの犯人)の受信アドレスに向けて送金されてしまったという被害報告例は1件もないので、それほど心配する必要はないでしょう。

LedgerNanoSの問題点としては、アルトコインの種類によっては送受信の操作方法がビットコインとは若干違うので迷う恐れがあること、24種類の仮想通貨に対応はしているが一度にすべての仮想通貨を保管することはできないこと(DL可能なアプリの容量に制限があるため)があります。また本体を紛失・破損した場合には、24個のパスフレーズで内容を復元可能ですが、このパスフレーズのメモを間違えていると永遠に保有仮想通貨を喪失してしまうリスクはあります。いくつかの問題点やリスクはありますが、ビットコインやリップル、イーサリアムなど仮想通貨の安全な長期保管方法の有力な選択肢として、ハードウェアウォレットのLedgerNanoS使用を検討する価値は十分にあるでしょう。