2017年は仮想通貨が一般市民にも認知された大きな一年となりました。「億り人」と呼ばれる仮想通貨長者が続出する一方、国税庁によって確定申告での処理方法が示されるなど、節目の年となったのは確かでしょう。ただ、仮想通貨にも利益に応じて納税する必要が出てきます。莫大な収益があった一方で、税金対策に四苦八苦した人も多く見られました。ここでは仮想通貨にまつわる税金問題について確定申告を中心にまとめてみます。

仮想通貨が一気に広まった2017年分の確定申告

仮想通貨は税金対策できるのか2017年分の確定申告がはじまる前にとくに話題となったのは仮想通貨の収益をどう仕分けするかでした。結論からいうと、仮想通貨の取引による利益は雑所得に分類されることになりました。これは、2017年12月に仮想通貨の確定申告に関する計算方法を示した国税庁発表がもとになっています。

雑所得というのは、会社員なら給料、個人事業主であればメインの業務から得た事業所得、株の配当所得のように確定申告ですでに大きな分類をされているもの以外をまとめて取り扱う所得のことです。

これまで一度も確定申告をしたことがないという人は、まず確定申告やその手続きで登場する所得について知っておく必要があります。確定申告は一年間で個人が得た所得を計算して、所得税を納税するための手続き全般を指す言葉です。確定申告の計算は年度ではなく暦年、つまり1月1日から12月31日までの期間を対象にしており、翌年の2月16日から3月15日にかけて全国の税務署で申告の受付、納税の手続きが行われます。

ただ、確定申告は国民すべてが行わなければならないものではありません。サラリーマンなら会社が行う年末調整だけで済む場合も多く、確定申告自体一度もやったことがないという人は珍しくないからです。

基本的に確定申告では個人事業主が大半です。サラリーマンでは一年間に特別な所得があった人や年末調整では手続きが行えない医療費控除などの申告をする場合がほとんどです。

確定申告では一年間の所得に応じて納税するか、もしくは納め過ぎていた税金の還付を受けるかが計算されます。所得とは個人事業主なら事業所得、サラリーマンのうち申告が必要な条件に当てはまる給与所得、その他不動シャン所得や譲渡所得、年金や副業で得られる雑所得など10種類に分類されています。

ちなみに、所得は最初に手にした収入金額ではありません。個人事業主なら収入金額である売上から必要経費を差し引いて残った金額を所得といい、それに対して税金が計算されます。たとえば、売上(収入金額)が100万円で経費が30万円なら所得は70万円になります。

仮想通貨の場合は雑所得に当たるため、仮想通貨の収益から取引で掛かった経費を差し引いた金額を所得として20万円を上回る場合に確定申告が必要です。逆にいえば、他の所得の利益と合わせても20万円以下なら申告の必要はありません。

仮想通貨取引の所得税の税率と計算式

具体的にもし所得税を納めなければならないとき、どのような税率と計算式で計算されるのでしょうか。確定申告の納税額計算は所得の種類によって異なります。総合課税である雑所得は給与所得や事業所得といった他の所得金額とまとめた金額に応じて7段階の税率が定められています。

課税対象となる所得金額が195万円以下なら税率5%(控除額0円)、695万円超900万円以下なら23%(控除額636,000円)、最高税率は4,000万円超の45%(4,796,000円)です。仮想通貨の利益が800万円だったとしましょう。その場合、税率23%で控除額636,000円を式に起こすと次の通りです。

(800万円ー636,000円)×0.23=1,693,720円

つまり、仮想通貨の利益が出た翌年の2月16日から3月15日までの間に確定申告を行って、約170万円の所得税を納税する必要があります。

2018年に入って仮想通貨の「億り人」のなかに納税できず破産する人が生まれたニュースが話題となったのは、仮想通貨の高騰で収益が莫大となり税金対策ができないまま税金が納められなくなったという経緯があるのです。

仮想通貨の所得税計算での注意点

2017年分確定申告でわかった仮想通貨の所得税計算での注意点・仮想通貨を保有しているだけなら確定申告不要
もし保有している仮想通貨が高騰していても、売却せずに持ち続けたままなら具体的な収益とは見なされないので確定申告の必要はありません。仮想通貨の利益によって納税しなければならないのは、売買によって日本円に交換して所得が生まれたときのみです。

・2種類の計算方法は一度しか選べない
取引を何度か行い、1年間に生まれた仮想通貨の利益の発生回数が2回以上の場合、売買取引によって所得が発生した度に計算する必要があります。3月、6月、10月に年間3回の取引があったとすると、それぞれの時点で所得税を計算し、一年分をまとめて申告することになります。

この合算する計算式には「移動平均法」と「総平均法」の2種類があり、それぞれ特徴と持っています。移動平均法なら仮想通貨の購入ごとに取引額と残高の平均額を求めて所得計算できるため細かな数字が出しやすくなります。一方、総平均法なら一年間の総購入金額と売却合計金額をまず出して、差し引きすることで所得が計算できるのでシンプルな算出が可能です。

なお、移動平均法と総平均法、どちらの計算式でも都合に合わせて選ぶことができますが、選び直しはできないためどちらの計算式が自分の取引に向いているか、確定申告での計算がしやすいかなどを総合的に判断して選択してください。

確定申告の期限と無申告

確定申告は毎年2月16日から3月15日に全国の税務署で一斉に受付が行われます。その時期になると税務署は申告する人や相談者でごった返します。仮想通貨を含めた一年間の収益が20万円以上なら個人事業主はもちろん会社員も申告・納税しなければなりません。

なお、3月15日までに確定申告をしなければどうなるのでしょうか。申告が遅れると後から無申告加算税が、もし所得が大きく納税の義務が発生する場合は期限内に納税が行われなかったため延滞税をまとめて課される可能性があります。

「確定申告しなくてもバレないだろう」という考えは捨てて、仮想通貨の収益が出たら必ず確定申告が必要なのかどうかを確かめて、申告しなければならない場合は早めに書類作成後提出するようにしましょう。

わからないときは税務署や税理士へ相談

確定申告自体が初めての人や仮想通貨の所得の計算方法がわからない人はまず税務署で相談をしましょう。確定申告の期間中、税務署では相談体制を整えて窓口を開いています。もちろん期間外でもいつでも相談にのってもらえます。

仮想通貨と税金について詳しく把握して判断したい、しっかりと税金対策をしたい場合は税理士に相談することをおすすめします。税理士事務所の中には仮想通貨に強みを活かした業務を行っているところも登場しているので、より突っ込んだ税金相談ができるはずです。

仮想通貨の取引で収益を得たら、必ず確定申告を行ってください。わからないことは気軽に税務署に尋ねると丁寧に教えてくれるので安心です。