2018年の4月13日は縁起の悪いとされる「13日の金曜日」でしたが、仮想通貨投資家にとっては嬉しい日となったのではないでしょうか?1月に一瞬暴落した際の最安値までは割らなかった通貨が多いものの、多くの通貨が長期間、かなりの低水準で低迷していました。ビットコインも過去最高値の1/3を割る、70万円台前半で推移していましたが、4月の12日、13日にかけて80万円台後半まで急回復。これでも昨年末に比べると十分に低い水準ではありますが、上昇の方向に大きく動いたのは久々であり、低迷に不安になっていた仮想通貨ホルダーの方々にとってはここから上昇に転ずるかと希望が持てる日だったのではないかと思います。勿論、ここから急回復する可能性もあれば、一時的な上昇であり、さらに下げてしまう可能性もあります。そこで、今回急上昇した要因として考えられるものを複数纏めてみました。結論を先取りしてしまうと、今回上昇した理由(と思われるもの)のいくつかは長期的に好材料となると筆者は考察しています。
ビットコインが底打ちという大手投資ファンドのレポートが出た
最大級の仮想通貨ヘッジファンドであるパンテラ・キャピタル・マネジメント(運用資産8憶ドル超)はビットコインの今回の低迷の底が6500ドルであったと、投資家向けにレポートを配信しました。さらに、来年には史上最高値を突破する可能性が高いとも予想しています。勿論、最大級のヘッジファンドだからといって必ずしも市場を予測できるはずはなく、また、高値となればなるほど、資金が流入すればするほどファンド自体の稼ぎにもなるため、ポジショントークでもある点も否めないですが、情報やノウハウを豊富に持っているプロ集団からの「底打ち」という分析は、どこまで下がるのかわからず参入できない、と考えていた投資家にとって安心材料になったのではないかと思います。
税金関連の売りが落ち着きを見せた
日本では確定申告の期限が3月中旬、その支払いの期日は(支払い方次第ですが)多くは4月となっています。アメリカでも近い時期で、申告の期限が4月となっています。仮想通貨の税金の取り扱いも、仮想通貨そのものの取り扱いと同様、各国によってスタンスが異なりますが、日本では2017年度の利益確定より、課税対象となることが明言されています。アメリカにおいては2014年より、仮想通貨は2014年より資産として課税対象になりますが、1年以上長期保有した場合は優遇された税率になります。世界各国で仮想通貨での利益を納税する場合や、もしくは、会社員、公務員が源泉徴収となっている日本と違い、多くの国は原則自身で申告、納税を行う必要があるため、他の税金を支払うために仮想通貨を売却するといったケースも多々あることが想定されます。現在の水準で仮想通貨を売却することは多くの投資家にとって本意ではないでしょうが、市場が冷え切っていることは納税を延期できる理由にはなりませんので、泣く泣く売った方も少なくないのではないかと思います。そういったやむを得ない売りが時期的に一巡したことで、今後は上昇トレンドに転ずるのではないかという見方が出ています。
イスラム圏でビットコインが容認されたとの報道が出ている
ビットコインや仮想通貨全体の取り扱いに関しては、各国によっていまだに大きく見解が異なります。そのような中で、イスラム圏の人々を伝統的に支配している「イスラム法」においてビットコインが容認されるようになったとされています。イスラム教徒は全世界に16億人存在します。この人数の絶対的な多さだけでなく、これが高評価になるポイントが2つあります。1点目は、イスラム教徒はイスラム法に対して非常に忠実です。
例えば中国などの、「国民が政府を信用していない国家」においては規制が強化される場合、一時的には市場全体にマイナス方向に動きますが、結局のところ、国民は国家の規制が入らない抜け道を探す方向に動きます。しかし、イスラム教徒はイスラム法に背き、目につかないところで法を犯す、といったようなことが考えにくい人々です。(もちろん、中には法に背いてでも仮想通貨で稼ごう、という信徒がいても全く不思議ではありませんが、全体の比率としては少数になるかと思います。)つまり、イスラム法で仮想通貨が容認されたとなると、今まで参入したいけれどイスラム法的な扱いが分からないから参入できない、といった厳格な信徒が一定数いた場合、その資金が一気に流入することが起こりえます。
2点目として、そういったイスラム圏に属する国々の中にはサウジアラビアやカタールなどの大規模な投資ファンドを抱えている国が存在します。そういったファンドが参入しやすい環境になることによっても、仮想通貨市場全体に莫大な資金が流れ込む可能性が上がると言えるでしょう。
ヨーロッパがブロックチェーンに対して高評価を出した
2018年3月に開催されたG20ではブロックチェーンに関する評価は「ブロックチェーンの将来性は評価するが、仮想通貨の評価とは別物である」といった文脈で、一応肯定はされてはいるものの、その発言の趣旨は主には仮想通貨に対してネガティブな見解を出す際の比較対象として部分的に肯定された、という程度にとどまりました。しかし、欧州委員会(EC)は4月10日、ブロックチェーン技術が「今後ヨーロッパが主導的役割を担う分野の一つ」と発表しました。またEU諸国の政府及び民間企業が積極的に投資を行っていくべき分野であると強調し、さらに、欧州仮想通貨協定を締結することを発表しました。このようにブロックチェーン技術そのものを全体的に高く評価し、そこに投資を求める姿勢は、将来的に欧州の政府、企業からの資金が流入することが期待されるということは勿論、この発表自体が発言権の大きな国家からの規制を懸念して投資に消極的だった投資家の資金が流入してくることを促しうるため、その初動として今回の急回復があったという評価も出来ます。
ロックフェラー財団が仮想通貨業界に参入するとの意向を発表
推定資産1兆ドル超ともいわれている世界最大の資産を持つ大富豪の1つであるロックフェラー一家の財団の投資部門が、仮想通貨業界に参入するとの意向を発表しました。具体的には26億ドルを運用していると報じされている投資会社のベンロック社が仮想通貨投資グループと提携し、関連事業を行う会社への投資を行うことを発表しました。投資のスタンスとしては目先の利益をトレード的な手法で求めていくのではなく、仮想通貨、ブロックチェーンの技術の将来性を高く評価し、長期的な投資を行っていくというものであるとのことです。これにより仮想通貨に資金が流入することが期待されること自体も評価しうるのですが、一部の投資家にとってロックフェラー財団が参入の意向を示したことはそれ以上の意味を持ちます。仮想通貨は多くの投資家の注目を集めている投資ですが、ロックフェラー財団をはじめとする古典的、かつ莫大な資産を持つ財団には、仮想通貨に対して否定的、消極的なスタンスを取るものも少なくないのがこれまでの現状でした。今回のロックフェラー財団の参入は、仮想通貨やブロックチェーンに対する「投資家のトップ」からの評価スタンスが変わり始めることの発端になるかもしれません。
今回の相場急回復の背景と思われるようなトピックをいくつか纏めてみました。短期的にも長期的にも嬉しいニュースが複数出ており、市場全体が強気ムードになっていたのではないかと分析されます。とりわけ、長期目線では今後仮想通貨市場がかなり拡大していくのではないかと予測させられるようなニュースが複数出ており、今後への期待が高まりました。
しかし、一方で、価格に対する裏付けがなく、市場のニーズだけで価格が決まる仮想通貨がニュースに影響を受けやすいことをも同時に示しています。短期的な相場の動きやその要因となっているニュースに一喜一憂せず、仮想通貨市場全体が将来どうなっていくのか、ということを予測しながら投資を行っていくことが求められます。