投資手段の一つとして最近注目されてきたビットコイン。ビットコインは仮想通貨の代表格として扱われていますが、仮想通貨とはいったい何なのでしょうか?仮想通貨は、円や米ドルと言った国家が管理し発行するお金とは異なり、実体がなく、管理者も存在しない、インターネット上にしか存在しないお金のことを指します。ビットコインは支払い方法の多様化やグローバル化に対応すべく、誕生しました。また、ビットコインは管理者がいないことやインターネット上に存在するお金であるということにより、海外への送金が瞬時に手数料が安く行えることやクレジットカードに並ぶ決済手段の1つになると注目されています。
仮想通貨と言ってもその種類は850種類以上あります。ビットコインがその中で最も注目される理由は、ビットコインは貨幣と異なり、発行量に上限が設けられているためでしょう。ビットコインは2,100万枚のコインを2140年までに今後100年かけて採掘(マイニング)という方法で発行していきます。そのためビットコインは、有限という希少性と将来性から、価格変動が大きくなってしまい、今ではその価格変動を利用して投資方法の1つとして取引が行われるようになりました。特に2017年は仮想通貨に関する法律が制定されるなど、仮想通貨にとっては大きな1年になりました。そこで、仮想通貨法の詳細について見ていきましょう。
仮想通貨法が制定された最も大きな理由は「マウントゴックス事件」がきっかけと言われています。マウントゴックス事件とは、2013年にビットコインの約7割を取り扱う世界最大の取引所となっていたマウントゴックスが、同年末にはビットコインの払い戻し遅延などを起こし、翌年にはサイバー攻撃によってビットコインを消失させ(その後の調査でマウントゴックスの社長によるビットコインの横領であったことが発覚)、払い戻しを停止し、民事再生法を申請し破綻した事件のことを言います。
仮想通貨における法整備などの周辺環境の整備が追い付いていなかったということが、この事件による被害を大きなものにしてしまったということもあり、議論を重ねる中で法整備が急ピッチで進められ、2017年に制定されるに至りました。マウントゴックス事件が最も大きな影響を与えましたが、海外でもいくつかの取引所においてハッキング被害が発生し、利用者が損害を被ったり、取引所が閉鎖されたりなど仮想通貨に対する安全性が疑問視される事件が多発しました。
仮想通貨法による変化
仮想通貨法は、マウントゴックス事件がきっかけとなっているため、「利用者保護」が主な目的になっています。仮想通貨法によって以下のような変化が生じました。
1つ目は、仮想通貨がお金ではなく資産として扱われることです。仮想通貨は、円や米ドルのような法定通貨という「貨幣」として扱われるか議論が行われていましたが、支払い手段の1つということが明確に記載されたことで「資産」という扱いになりました。そのため、税や会計上の扱いも「資産」として取り扱われることになります。
2つ目は、取引所が登録制になったということです。仮想通貨の取引を行うためには取引所という仮想通貨の取引を専門に扱う会社を介して行っていましたが、許可や申請が必要なかったため、誰でも簡単に取引所を開設することができてしまいました。その結果、ずさんな管理や経営を行っていたマウントゴックスを生み出してしまったため、取引所を登録制にすることで、しっかりと監視を行っていこうということになりました。この登録制の条件として、「監査法人や公認会計士による1年に1回の監査報告書の届け出の義務化」や財務的な要件として、「資本金が1,000万円以上であること」「純資産がマイナスでないこと」ということが加えられました。また、自社の運営資金と利用者が預ける資金を明確に分別管理することが義務付けられました。
消費税無しの雑所得へ
最後は、ビットコインが消費税なし、所得税が雑所得になったということです。これまでは、ビットコインなどの仮想通貨の購入には金などと同様に8%の消費税が加算されていました。今回の仮想通貨法において仮想通貨が支払手段と定義されたことにより、消費税が撤廃されました。しかし、ビットコインの取引によって生じた差益に関しては雑所得として扱われるようになりました。株取引の場合は、損益通算といって、取引によって差益が発生していたとしても通算して損害が生じている場合には、その差益に関しては税金が発生しないというメリットがありましたが、ビットコインの場合には、損益通算が適用されないため、たとえ通算して損害が発生していたとしても、ビットコインの取引を行うことによって生じる差益ごとに税金が発生してしまうことになります。また、株取引によって生じる差益に対する税金は申告分離課税によって一律20.315%(所得税および復興特別所得税15.315%、住民税5%)となりますが、ビットコイン取引によって生じる差益に対する税金は雑所得の総合課税(累進課税)となるため、所得が多くなればなるほど税率が高くなることになるので注意が必要です。
仮想通貨の安全性
仮想通貨法の制定によって、国が仮想通貨の存在を認め、利用者保護に動き出したことは大きな第一歩であったと思われます。国によって補償されるというまではいきませんが、取引所に対する要件が確立されたとこで、ある程度選別を行うことができるため、利用者の安全性は高まってきています。
また、取引所が登録制になったことによって、登録書がどんどん増えていくことが予想されます。そうなってくるとビットコインの取引に発生する手数料などの差別化が求められてくるでしょう。コインチェックやビット二イヤーなどは仮想通貨取引における損失(被害)補償を開始し、東京海上日動火災保険株式会社は、ビットコイン決済サービスにおける「加盟店補償サービス」を開始するなど、仮想通貨を取り巻く環境は、どんどん整備されて行っています。
これからのビットコイン投資
ビットコインは2017年に入って1BTC11万だったのが9月に55万をつけ5倍を達成したかに見えたものの30万円台まで一時下落。その後10月に入って9月の高値を更新し、ビットコインは66万と6倍を達成しようとしています。仮想通貨法の制定によって、仮想通貨を取り巻く環境が改善されつつあることから、信頼性が高まり、価格の向上にいい影響を与えていますが、それはあくまでも日本国内の話であって、世界的には仮想通貨というものの影響力の高さから規制を行っている国も存在します。
9月にビットコインが高値を付けた直後の下落には、中国国内での取引の中止が大きく影響しました。中国では、景気の後退が懸念されているため、資産をより安定したものへと移動させたいという思いが強く、仮想通貨に交換する流れが強く起こり、それに合わせるかのように価格もどんどん上昇していきました。しかし、資産を監視できなくなってしまう恐れを感じた政府が、仮想通貨への資産の流出を食い止めるために取引所での取引を中止した結果、ビットコインの価格を上昇させているのは中国マネーであると言われていただけに、今後のビットコイン価格の上昇が見込めないと感じた人たちによるビットコインの売りが集まり、一時的な下落を呼びました。
仮想通貨は、法定通貨のように国家の信頼性によって価格変動が決まるわけではなく、需要などの将来性によって決まるため、小さなニュースでも大きな変動を起こす場合があります。株やFXよりも変動が読みづらい部分はありますが、しっかりと知識と情報を身に着け、リスクを最小限に抑えながら取引をするようにしましょう。