ICO(新規仮想通貨公開)は誰でもトークンを発行できる仕組みで規制がほとんどない:ICO投資は自己責任・ハイリスク
ICO(Initial Coin Offering:新規仮想通貨公開)とは、ブロックチェーンなどの技術を応用した「トークン、コイン」を発行して資金を調達することです。ICOは第三者の中央管理機関による審査や承認(許認可)を受ける必要がなく、すぐにトークンやコイン(仮想通貨)と呼ばれる代理貨幣を「無保証の有価証券」に近いものとして発行することができます。実際にビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)などのメジャーなコインになって大金を集められるICOはごく一部ですが、「審査・許認可のないICO」は発行主体(企業・プロジェクト)にとって非常に効率的で低コストの資金調達手段になっています。
ICOによって発行されたその企業独自のトークンやコインは、「需要・人気に基づく流動性(頻繁な売買)」があれば、「実質的な有価証券(株券)」のように売買されて価値が大きく上昇することもあります。しかし、発行主体が無名でプロジェクトの魅力・周知も不十分なICOの多くは、そのトークンやコインを買いたい流動性がないために、売りたくても売れないことが多いのです。
そもそもあまりにマイナーなトークン(認知度のない草コイン)は、「メジャーな取引所(仮想通貨交換事業所)」の取扱対象にはならないので、ごく限られた人の「個人間売買(ウォレットアプリなどを使ったP2P)」でしか売れないという制約が強いのです。ICOで発行されるトークンやコインについて、欧米諸国を中心に「株など有価証券と同水準のICOの法規制」を強化しICO許認可制にシフトすべきという声も出てきていますが、現在の日本ではICOの法規制(投資家保護の仕組み)はほとんどありません。そのため、ICO投資は一般に「ハイリスク・ハイリターン」であり、その中にはICO詐欺も含まれるという認識を持っていなければならないのです。
仮想通貨・ICOに関する消費者相談件数の増加:“実態不明な投資話(儲け話)”には詐欺的な仮想通貨・ICOが含まれる
2018年のICOによる資金調達は、第一四半期(1~3月期)だけでもう「約63億ドル(約6,800億円)」にも達しているとされますが、ICOの規模拡大と合わせて「仮想通貨・ICOに関連する消費者相談」も急増しています。国民生活センターが公表したデータによると、「仮想通貨・ICOに関する消費者相談件数」は、2014年度が186件、2015年度が440件、2016年度が847件だったものが、2017年度には「2666件」と約3倍に急激なペースで増加しています。仮想通貨関連の消費者相談の内容は、大きく「実態不明な仮想通貨・ICOの投資話(儲け話)」と「仮想通貨交換業者に関する問題」に分けられます。仮想通貨交換業者に関する相談内容は、「不正アクセスによる仮想通貨消失・仮想通貨(ウォレットアプリ)の誤送金・事業者の対応に対する不満」などが多かったようです。
「実態不明な仮想通貨・ICOの投資話(儲け話)」には、仮想通貨投資詐欺やICO投資詐欺も含まれていると推測されますが、相談内容としては「仮想通貨投資・マイニング(採掘の発行収益)投資・ICO投資・仮想通貨自動売買システムの勧誘」などが挙げられています。ICOで発行されたトークンの流動性がなかったり、価格が下がったりするだけでは「ICO詐欺」とまでは言えません。しかし、ICOの中には初めから「ホワイトペーパー(プロジェクト計画書)」に虚偽の情報を書いて、お金だけ集めて何の事業にも着手せずに発行主体が逃げてしまう「明らかなICO投資詐欺の案件」も含まれているので注意が必要です。
詐欺的ICOの見分け方と仮想通貨投資の注意点1:ゼロリスクを謳う旨い儲け話の大半はICO詐欺
ICO詐欺に騙されるかもしれないから怖くてICO投資ができないと思っている人も多いと思います。自分自身でICOのホワイトペーパー(事業計画書)を読んだり、ICO発行主体やプロジェクトの信用度・将来性をリサーチしたりできないのであれば、基本的にはハイリスクな新規仮想通貨(トークン)に投資する「ICO投資」はやめておいた方が良いというのが常識的な答えになります。
無名コイン(草コイン)は明らかなICO投資詐欺でないとしても、よほど人気がでない限りは価値が低いままか、さらに価値がなくなってしまうリスクが高いのです。仮想通貨に投資したいけれど、これから伸びるICOの方がもっと儲かるのではないかと思い込んでいる個人投資家は多いのです。しかし、よほど特別な情報か人脈を握っていてさらに運がない限り、「ICOによる無名コイン(新規発行のトークン)」で大きな利益を出すことはできません。
ビットコイン投資でさえハイリスクな投機と言われるくらいなのに、それよりもリスクが高くて詐欺案件も含まれる「ICOの新規トークン(コイン)」を買うということの意味を冷静に考えることが大切です。ICO詐欺の事例で多いのは、「ノーリスク・ハイリターンを謳うICO案件」と「友人知人から絶対に儲かるから私を信じてとにかく買った方がいいと勧められたICO案件」です。投資に「ノーリスク(絶対儲かる)」はないので、ノーリスクを強調して購入を急がせてきた場合(大金の投資を勧める場合)は、ICO詐欺の可能性が高いのでやめておいた方が良いでしょう。
詐欺的ICOの見分け方と仮想通貨投資の注意点2:“知人ネットワーク・販売枠”で信用を演出するマルチビジネス系のICO詐欺には注意
仮想通貨に投資したいのであれば、自分でトークン発行主体(プロジェクト)の実態や信用度を十分にリサーチできない「ICO投資」をいきなりするのではなく、まずはビットコイン(BTC)やリップル(XRP)、イーサリアム(ETH)のような投資詐欺のリスクがない「メジャーな仮想通貨」に投資した方が安全度・期待リターン(値下がりの相場リスクはある)は高いのです。
確かに、ICOの無名コインは大当たりすれば、元本が100倍~1,000倍以上になって戻ってくる可能性はありますが、それはあくまで宝くじのような確率論・結果論の話であり、「今このICOの無名コインを買えば絶対に100倍以上になります」という宣伝文句は勧誘手法として虚偽・詐欺なのです。中には初めから騙すつもりで、実体のないICOトークンを売りつけようとする明らかなICO詐欺案件も含まれます。
ICOの詐欺的な勧誘方法として多いのは、友人知人を動員してトークン購入を煽る「マルチビジネス系の手法」であり、「ICOで発行された新規トークン(新規仮想通貨)の目的・理念・将来性」がよく分からないのに、「無価値になるかもしれない新規トークン」を売りつけようとしているのです。この場合、友人知人ネットワークの「俺(私)のことをとにかく信じて・俺(私)のことを疑うなら今後はあなたとは関わりを持たない」など、「ICOトークン自体の価値・将来性」とは何の関係もない知り合いの感情的な言葉だけで、信用させようとしている時点でICO詐欺の可能性が高いのです。
「将来有望なコインの販売枠」を持っていて、「今すぐ買わないともう買えなくなる、確実に何百倍にもなる儲け話だから買わないと絶対後悔する」などの勧誘文句も、ICO詐欺に誘導する常套手段になっているので気をつけましょう。
ICO詐欺に騙されず利益を期待するためには、自分自身で「ICOの正確な情報・発行主体の信用度」をリサーチする能力が必要
ICO(新規仮想通貨公開)のホワイトペーパーに実行するつもりのない虚偽の事業計画(プロジェクト)を記載して、お金だけを集めて持ち逃げするというのが「明らかなICO詐欺」です。一方で、ICOで発行されるトークンやコイン自体に価値上昇の可能性はあっても、「勧誘手法が詐欺的(ノーリスクを謳う)」という事例もあります。Googleが「詐欺事件に閲覧者を誘導する恐れがある」として、仮想通貨・ICOに関連するインターネット広告を自主規制すると発表しましたが、「ネット広告による極端な集客」を図っているICOの新規仮想通貨(無名コイン)案件も詐欺である恐れが強いとされています。
一時、abyss(アビス)というICOトークンが過剰なネット広告露出で、事業の実態に乏しいネズミ講の手法ではないかと批判されていました。日本で話題になったGACKTコイン(SPINDLE)も有名人を使った集客をしつつも、「上場予定がなく売却できない仮想通貨(ただファンの応援を期待する塩漬けコイン)」になっているとして叩かれました。
セントラリティやクローバーコインには新規仮想通貨(新規トークン)の技術面・流通面での期待はあるものの、「ノーリスク・ハイリターンの販売枠(限定販売)」を謳ったりマルチビジネス系のネットワークを駆使したりといった「詐欺的な勧誘方法」が目立って批判を受けています。
ビットコインやイーサリアムのような仮想通貨としての実体・価値の信用度が、ある程度まで確立しているメジャーな仮想通貨(トークン)であればまだ良いのですが、海のものとも山のものともしれないICOの新規仮想通貨に騙されずに投資するためには、「自分自身の能動的なリサーチ能力・行動力」が必要になります。「知り合いが儲かると言っているから」や「一部で話題になっていて何となく儲かりそうだから」といった安易な理由・根拠で投資すれば、ICO詐欺にひっかかるリスクは格段に高くなります。
投資の神様であるウォーレン・バフェットが語るように、「内容と仕組みが自分自身でよく分かっていない投資対象」には、安易な気分のノリで投資をしてはいけないのです。