ビットコインをはじめとした仮想通貨の魅力は、値上がり益を取るような価格変動だけではありません。これまでのどの概念にも属さない、その技術も大きな魅力の一つです。特にブロックチェーンなどは徐々にその仕組も投資家の中で認知されつつあります。しかし、当然ながら仮想通貨の技術はブロックチェーンのみではありません。

最近注目を集めている仮想通貨の技術に、ライトニング・ネットワークというものがあります。元々存在していた技術ではありましたが、昨今このライトニング・ネットワークの実用化に向けた技術開発が進んでいます。

今回ライトニング・ネットワークがどのような技術なのかを説明し、どのようなメリットをもたらすのか、また現状の課題・問題点などを書いていきます。最新技術を理解し、仮想通貨を保有することの楽しみにつながればと思います。

ライトニング・ネットワークってどういう技術?

ビットコインの最新技術ライトニング・ネットワークライトニング・ネットワークとは、ビットコインの取引処理能力を向上させる技術です。ライトニング・ネットワークが実装されると大きく三つのメリットを受けることが出来ます。まず、取引処理能力が向上すると、純粋に一度に多くの取引処理が可能になります。現在のビットコイン取引では、約10分で1ブロックと呼ばれる単位のデータ処理しか出来ませんが、この速度と容量が大幅に改善されます。

次に、取引手数料を大幅に節約することが出来ます。現在のビットコイン取引は、取引が発生する度にブロックチェーンにその情報が更新され、手数料が発生します。ですが、ライトニング・ネットワークが導入されると、そもそもブロックチェーンを利用せずに取引を行うことが出来るようになります。これをオフチェーン処理といいます。このオフチェーン処理により、取引の度にブロックチェーンに情報を更新する必要が無くなるので、都度発生していた手数料を大幅に抑えることが出来ます。

最後に少額決済(マイクロペイメント)が可能になるという点です。マイクロペイメントはデジタルコンテンツの支払やIoT機器を用いたサービスの利用など、従来は難しかった少額の支払を可能にする事が出来る技術です。現行の法定通貨で1円以下の支払を行う際はクレジットカードなどを用いる方法がありますが、これではクレジットカードの手数料の方が高くなってしまい、割に合わないのが現状です。ライトニング・ネットワークを用いると前述の通り、オフチェーン処理により、都度発生していた手数料を大幅に抑えることが出来るので、少額決済の手数料負担も非常に少ないものにすることが出来ます。このように、従来は難しかった少額の支払を可能にすることや、ビットコイン取引の問題点だった取引処理能力を改善させることが出来るのがライトニング・ネットワークなのです。

ライトニング・ネットワークの仕組み

ライトニング・ネットワークの仕組みは、その名のとおり、ネットワークで成り立っています。例えば、AさんがCさんにビットコインを送金する際、従来であればAさんとCさんはネットワークで直接繋がっていないと送金できませんが、ライトニング・ネットワークでは、AさんとCさんの間にBさんという共通のチャネル(経路)があれば、Bさんを中継してAさんからCさんへの送金を可能とするのです。この中継者の事をノードといいます。

従来の技術だと、ブロックチェーン上にAさんはBさんを経由してCさんにビットコインの送金を行ったという、結果が残ります。つまり結果に至るまでに二度の取引の過程があったという事です。それがライトニング・ネットワークだと、過程はオフチェーンで処理し、AさんからCさんへの送金という結果のみが残るので、過程をブロックチェーンに登録しない分、手数料と時間がかからず、安くて早い取引を可能にしています。

ライトニング・ネットワークの問題点

実装に近づいているビットコインの最新技術ライトニング・ネットワークこのようにとても革新的な技術であるライトニング・ネットワークですが、問題点も依然としてあります。例えば、マイナーのマイニング手数料が減ることがあげられます。ライトニング・ネットワークの取引はブロックチェーンを用いないオフチェーンで処理されるため、マイナーの負担が減ります。一見メリットのように感じますが、マイナーにとってはマイニングのインセンティブが減り、モチベーションの低下に繋がる可能性があるのでデメリットになります。

また、前述の中継者であるノードのセキュリティ上の問題もあります。ノードはライトニング・ネットワークにより、常にネットに接続している必要があります。ネットに常時接続しているということは、ハッキングのリスクが存在するという事です。ノードを経由してビットコインを送金したい際に、ノードがハッキングを受けると、その資金がかすめ取られる可能性があるので、ノード自体もセキュリティを意識する必要があります。

このようにノードを担うハードルも高いため、ノードは特定の個人というより、取引所やウォレットなど、多くの送受金を取り扱う企業が担う可能性が高いです。ただし、ノードが集中化してしまうと、仮想通貨の根本的な理念でもある非中央集権が脅かされてしまうため、ノードの一極集中は避ける必要があります。この点をどう折り合いをつけるかが、懸念点になっています。

ライトニング・ネットワークにはSegwitという技術が必須

SegwitというのはSegregated Witnessの略で、簡単に説明すると、取引サイズを圧縮する技術のことです。これにより、ビットコインの取引処理能力が向上することに繋がるので、ライトニング・ネットワークを実現するためには、このSegwitが必要不可欠です。ビットコインのSegwitの方針は、ビットコインのコア開発者と、大規模なマイニング業者によって決定づけられます。

最初のSegwitは2017年8月に実装され、今年の1月には米国の大手仮想通貨取引所のCoinbaseがSegwit対応を開始しています。また2月にはビットコインのオープンソースであるBitcoin Coreの最新バージョンがSegwit完全対応でリリースされました。ライトニング・ネットワークの土台となるSegwitはここ最近急速に普及し始めているのです。

ライトニング・ネットワーク実装に向けた動き

ライトニング・ネットワークは上記のSegwitの整備によって、実用化の動きが活発になってきています。今年3月にはライトニング・ネットワークの技術開発を行っているライトニング・ラボという企業が、実際にビットコインのメインネット上でライトニング・ネットワークを動かすことのできる「lnd 0.4beta」というソフトウェアを開発者向けにリリースしており、試験運用されています。

また、4月にはライトニング・ネットワーク向けに作られたビットコインウォレット「エクレアウォレット」をACINQというスタートアップがローンチしています。既に次世代のライトニング・ネットワーク対応のウォレットが実際にGoogle play storeで入手することが出来るのです。

1年前は解決が困難であったものが、テクノロジーによって徐々に解決されています。前述の通り、まだまだ課題があるのも事実ではありますが、ライトニング・ネットワークが実現すれば、目先ではビットコインの送金がさらに高速かつ安価になり、ビットコインのポテンシャルを高めてくれる事でしょう。さらに少額決済が可能になれば、全く新しい決済システムが生まれることになります。これにより新たなビジネスモデルが生まれる事が予想されます。ライトニング・ネットワークに関する情報は今後も注目したいところです。