新しいICOの「SPINDLE(スピンドル/単位:SPD)」は現在、トークンクラウドセール中です。ICOの目的は、投資や資産の管理を行うプラットフォームを構築し、世界中の仮想通貨ヘッジファンドと個人投資家をマッチングさせる役割を果たすことです。ロックミュージシャン・俳優のGACKT(ガクト)さんが参加を表明して話題になりました。

仮想通貨SPINDLE(スピンドル)は「GACKTコイン」と呼ばれている

仮想通貨SPINDLE(スピンドル)プロジェクトSPINDLE(スピンドル)は日本発の仮想通貨で、BLACKSTAR&COという会社が運営しています。その名前を知らない人でも、2017年12月のニュース「GACKT(ガクト)さんが仮想通貨ビジネスに進出する」を覚えている人は少なくないでしょう。そのICOプロジェクトの名がSPINDLEです。沖縄県出身のロックミュージシャン・俳優で、2007年に大河ドラマ『風林火山』の上杉謙信役で話題になったGACKTさんの方が知名度があるので、SPINDLEは「GACKTコイン」と呼ばれたりしています。ただし、SPINDLEのプロジェクトには芸能人ではなく一人の実業家として、芸名ではなく本名の大城ガクト名義で参加しています。

そのGACKTこと大城ガクト氏はSPINDLEについて、次のように簡略に、わかりやすく説明しています。

「仮想通貨ユーザーと仮想通貨ヘッジファンドを結ぶ『仮想通貨の出会い系サービス』」

出会い系サービスは英語で言えば「マッチングサービス」です。私生活では男女の出会いを連想するかもしれませんが、たとえば中小企業の新製品の納入先として大企業を紹介して成約したら報酬を得るなど、ビジネスの世界ではマッチングはごくふつうに行われています。人材紹介会社も企業と人材をマッチングさせるビジネスです。SPINDLEの場合は、仮想通貨のユーザー(個人投資家)と仮想通貨ヘッジファンドを出会わせて、マッチングさせます。もちろん投資家は、お気に召さなければそのヘッジファンドを選ばなくてもかまいません。

仮想通貨ヘッジファンドは株式や債券の「投資信託」と同じようなものです。投資家から資金を集めて仮想通貨に投資し、運用します。その結果、ヘッジファンドは得た利益から自らの報酬分を差し引いて、残りを「分配金」として投資家に分配します。投資家にとっては、投資・運用を「プロ」に任せることによって投資のリスクが抑えられるというメリットがあります。

ヘッジファンドと個人投資家を仲介する役割を果たしているSPINDLE(スピンドル)

しかし、株式や債券の投資信託は証券会社や銀行や郵便局など仲介業者(ブローカー)が取り扱って投資家に公募販売できますが、仮想通貨ヘッジファンドは仮想通貨の歴史がまだ浅いこともあり、公募販売が金融庁から許可されていません。金融庁のサイトには、改正資金決済法に基づいて仮想通貨を運用対象とする大規模な公募ヘッジファンドの組成も将来ありえるようなニュアンスが書かれていますが、許可されるまでは、公募でない「私募ファンド」として中間のブローカーを通さず投資家に直接販売する形がとられます。

「私募」とは、早い話が縁故募集、コネ募集のことですが、「紹介者」がいれば応募できたりします。たとえば会社が社員を表向きは募集していなくても、社長の知りあいに紹介を頼むと採用されることがあり、それがビジネスになったのが人材紹介会社です。紹介者や人材紹介会社が「仲人」(あるいは世話焼きのおばさん)に置き換わったら、それは男女の出会いのマッチングで、それをビジネス化したのが出会い系サービスです。縁故採用の紹介者や人材紹介会社、男女の仲人などと同様に、「私募」の仮想通貨ヘッジファンドと個人投資家を仲介する役割を果たそうとしているのがSPINDLEのプロジェクトです。

SPINDLE(スピンドル)では、そのマッチングサービスを「ZETA」と呼んでいます。個人投資家はトークンのSPINDLEを保有すればはじめて、ZETAを利用して仮想通貨ヘッジファンドを紹介してもらう権利が得られます。個人投資家がZETAを介さずに直接、仮想通貨ヘッジファンドと接触しようと思っても、それはなかなか難しいでしょう。

SPINDLE(スピンドル)はICOファンド、デビットカードにも進出予定

仮想通貨のユーザーとそのヘッジファンドを結ぶ仮想通貨SPINDLESPINDLEの技術的な基盤は、イーサリアム(ETH)ベースのブロックチェーン(ERC20)とスマートコントラクトで、イーサリアム上の「分散合意アルゴリズム」に依存しています。暗号化するため改ざんができず、透明性、公平性を備えた投資判断、運用、資産管理のプラットフォーム、誰でも対等な立場で投資者にも運用者にもなりうるプラットフォームを構築しようとしています。

スマートコントラクトの技術によって、運用者(仮想通貨ヘッジファンド)の運用計画書、運用履歴、運用成績などの文書はブロックチェーンに即座に記録され、個人投資家は自由に閲覧できます。そこに文書の改ざんや投資判断への第三者の介入が行われる余地がなく、運用者と投資家の立場は対等です。証券会社や銀行の窓口担当者が個人投資家との情報格差を悪用して、販売奨励金が多く出る金融商品ばかり勧めて手数料稼ぎに走るようなことはできません。

ICO後にはSPINDLEサービスアプリケーション・ウォレットが公開されます。スマホ上のアプリで、これが個人投資家と仮想通貨ヘッジファンドをマッチングさせる役割を果たします。対象のファンドはSPINDLE評議会が約5~10本を選定します。2018年秋以降は投資対象がICOトークン、ICOステージ専門のICOファンド、不動産などの現物資産を裏付けとするトークンなどへも拡大していく予定です。2018年の冬以降、ウォレット機能を実装してデビットカード決済も行えるようになるという構想もあります。

SPINDLEの発行量の上限は100億SPD。2018年1月から日本国内でプライベートトークンセールが実施され、4月29日からICOトークンクラウドセールが始まりました。交換通貨はイーサリアムです。ウォレットとしてMyEtherWalletを用意しておけば間違いなく購入できます。ただし、セールは基本的にアメリカ、日本、中国の在住者は参加できないようになっています。

5月にはSPDのトークンが発行され、購入者のウォレットに付与されます。サービスアプリケーションもβ版が公開されます。仮想通貨取引所への上場は「2018年5月頃」を予定しているようですが、上場先など詳細についてはわかりません。

著名人がらみで流言飛語の類が多いので注意

SPINDLEはGACKTさんが「広告塔」のような役割を果たしていることもあり、著名人がからむ仮想通貨の例にもれず、流言飛語の類が多いので注意が必要です。GACKTさんのファンを食い物にしようという意図なのか、彼の画像を使ったニセモノのトークン購入代行サイトまで出現しました。

GACKTさんは単なる「客寄せパンダ」ではなく、実業家の大城ガクト氏はプロジェクトメンバーに参画しています。一部メンバーの過去の行政処分についても承知しているそうです。「プロジェクトは立ち消え」「中止になった」は全くウソで、プライベートプレセールが実施され、2018年4月にトークンセールも始まりました。仮想通貨は取引所に上場するまで売買や譲渡はできないのがふつうで、SPINDLEだけ「売買も譲渡もできない」というわけではありません。

むしろ、SPINDLEは国内外で知名度があるGACKTさんのおかげで注目され、大言壮語するわけでなくプロジェクトの実現可能性も社会的な意義もあるので、上場後への期待を残しています。ただ、人気がありすぎて、5月1日に150SPDのエアドロップのお土産付きで千葉市の幕張メッセで開催予定だったICOカンファレンス「BLOCK ONE powered by SPINDLE」は中止、開催延期になりました。定員の4倍以上の応募があったため、運営事務局は混乱や大事故を招く危険があると判断。来場者の安全を考慮してやむなく延期したそうです。

金融調査会社Autonomous Nextの調べによると、世界の仮想通貨ヘッジファンドは2017年10月18日から2018年2月15日までの4カ月間で110本から226本へほぼ倍増しました。世界的にみて仮想通貨への関心、投資意欲は確実に高まっています。

日本では仮想通貨への投資は「英語が読めないとダメ」「技術が理解できないとダメ」「保有コインの残高をウォレットで日々管理できないとダメ」などと言われ敷居が高いように思われていますが、個別のコインではなく仮想通貨ヘッジファンドへの投資なら敷居は低くなります。SPINDLEが行おうとしている「ファンドの選別」が加われば、情報が洪水のようにあふれ返る中、変なファンドにひっかかって投資家が泣かされるリスクも減るでしょう。初心者でも安心して投資できる基盤が築かれれば、仮想通貨投資の底辺がひろがって、値動きも落ち着いてきます。

仮想通貨ヘッジファンドと個人投資家とのマッチングの需要は、伸びこそすれ、大きく減るようなことはないと思われます。大手企業の参入・競合をうまくかわせば、さらに成長する可能性も秘めています。