「QASH(キャッシュ/単位:QASH)」は2017年11月にICOトークンセールを行った仮想通貨です。QUOINEが開発を進めるプラットフォーム「LIQUID」やQUOINEが運営する仮想通貨取引所「QUOINEX」「QRYPTOS」で、サービスへの支払いに使われるトークンとして発行されました。

仮想通貨QASH(キャッシュ)とは

仮想通貨QASHQASH(キャッシュ)は日本発の仮想通貨です。キャッシュと読みますが、つづりはCASHのCがQに変わります。運営会社の名前もその事業も、つづりに「Q」の字がつきます。

運営会社はシンガポールで発足し日本に拠点を移した「QUOINE(コイン)」で、そこが開発を進めるプラットフォームの名前が「LIQUID(リキッド)」です。また、仮想通貨取引所も運営し、その名前は「QUOINEX(コイネックス/金融庁登録済み)」「QRYPTOS(クリプトス)」と言います。QASHは、LIQUID、QUOINEX、QRYPTOSでサービスへの支払いや送金に使われるトークンとして発行されます。

全上場コインを売買できる「LIQUID」とは

LIQUIDとは何でしょうか? それは世界中で上場、流通するありとあらゆる仮想通貨相互の交換・取引を可能にし、その流動性を高めるプラットフォームです。仮想通貨は取引所に上場しないと交換・取引ができず、流通しないのがふつうですが、LIQUIDはそのコインが世界のどこかの取引所に上場していれば、たとえ上場先がどんなにマイナーで、ローカルでも、投資家はいちいちそこに口座開設や資金移動しなくても手に入れられるしくみを目指しています。

仮想通貨取引所では「オークション方式」といって、参加者の買い注文と売り注文を「板」の上に乗せ、突き合わせて約定(売買成立)させるやり方をとります。約定しなければ、価格を上げたり下げたりして約定させようと試みます。これはニューヨークや東京の株式市場のしくみと同じですが、もちろん本物の木の板の上ではなく、コンピュータ・システムの内部で処理されます。なお、取引所が保有するコインを別の通貨と引き換えに販売するサービスもあり、それもコインを入手できますが、正しくは「取引」ではなく「分売」で、全く別のしくみです。

オークション方式の仮想通貨取引で買い注文と売り注文を乗せて突き合わせる「板」のことを、英語でオーダーブックと言います。それは取引所ごとに別々につくられるので、同じコインで同じ時刻なのに、A取引所とB取引所で約定した交換レートが微妙にずれることも頻繁に起きます。

いま仮想通貨取引所は乱立気味で、それが流動性を低下させていますが、取引所ごとに別々に存在する板(オーダーブック)を全部統合し、世界で1枚だけの大きな板にまとめてしまおうというのがLIQUIDの構想です。その板を「ワールドブック」と言います。各取引所のオーダーブックをワールドブックによって一元管理することで、投資家は自分が口座を開設している1ヵ所の仮想通貨取引所を入口に、世界のありとあらゆる上場コインが交換可能になり、便利さが増します。

口座のある取引所が優先ですが、そこで約定できなければ、LIQUIDは取引の相手を全世界の取引所へ探しに行きます。その結果、日本発の買い注文がブラジルの取引所で約定したり、フランス発の売り注文がオーストラリアの取引所で約定したりしますから、約定がしやすくなり流動性が高まります。投資家は取引所間で仮想通貨や法定通貨を資金移動させる必要がなくなり、静かに約定を待っていればいいだけで、より効率的に、より安全に仮想通貨を取引できるようになります。

そうなれば、取引所ごとの交換レートの微妙なずれがなくなり、各コインの流動性はホワイトペーパーによると最高水準までアップし、極端な値動きも抑えられます。

LIQUIDのワールドブックは既存の取引所と取引所をつないで便宜を図るやり方で、取引所を通さずに取引する「取引所外取引」ではありません。また、街のブランド品買取の店の窓口のように、未上場のコインを1対1の「相対取引」で、相手の言い値で交換するようなやり方ともまた違います。

仮想通貨取引所大手、海外証券取引所と提携

LIQUIDが目指す全世界の仮想通貨取引の統合のための仮想通貨QASHLIQUIDには、「スマート・オーダー・ルーティン(SOR)」「マッチングエンジン」「クロスカレンシー換算エンジン」という3つの技術がとり入れられます。「スマート・オーダー・ルーティン(SOR)」は、世界中の取引所からワールドブックに集まった売り注文、買い注文の全てを、コインの種類や取引所の違いを超えて、お互いに取引が可能な状態にする技術です。
「マッチングエンジン」は、ワールドブックに集まった売り注文、買い注文を、スピーディーにマッチングさせ約定させる技術です。

「クロスカレンシー換算エンジン」は、取引所で約定したデータに基づいて交換レートの換算、表示を自動的に、瞬時に行う技術です。仮想通貨と法定通貨の違いやその種類の別を問いません。最終的には、どんな仮想通貨でも日本円で買えるようになります。

QUOINEXについては日本国内で、小さくても安全性の高い取引所という評判があります。QUOINEには高度なセキュリティ性をもつプライベートサーバーがありますが、その一部を有料で使わせてLIQUID上で仮想通貨関連サービスを提供させるコロケーションサービスも展開しようとしています。また、LIQUIDでは投資家がアルゴリズムを選んで自動取引のプログラムを簡単に作成し、それを自ら利用したり、販売できるようにもなります。そのサービスの利用料や販売代金の決済でQASHを使うと、割引特典がつきます。

QASHを発行するQUOINEはすでに香港のBitfinex、Binanceと戦略的パートナーシップを締結しています。世界の仮想通貨取引所の24時間取引量ランキングでは、Binanceは第3位、Bitfinexは第7位の大手取引所です(2018年4月28日現在)。

さらに、ジブラルタル証券取引所グループともグローバル戦略的事業提携を締結しました。ジブラルタルはアフリカ大陸と向きあうスペインの南端ですが英国の自治領で、独自の通貨を発行しながら英国ポンドもユーロも通用する場所です。そんな「通貨の交差点」で、2019年に英国が欧州連合を離脱する危機感もあってジブラルタル証券取引所はLIQUIDの世界統合構想に関心を寄せ、傘下の仮想通貨取引所はLIQUIDのプラットフォームに参加し、決済手段にQASHを使用することで合意しています。QUOINEにとってはヨーロッパへ本格進出の足がかりです。

仮想通貨QASH(キャッシュ)の将来性

QASH(キャッシュ)はLIQUID、QUOINEX、QRYPTOSで決済に使われる予定ですから、その将来性は、LIQUIDで世界の仮想通貨取引所の統合がなされるか、なされないかで大きく左右されます。もし統合がなされればQUOINEX、QRYPTOSは「プライム・ブローカレッジ」という名称になり、さまざまなLIQUID付帯サービスが展開されます。QASHはワールドワイドに利用されるコインになり、需要も価値も高まります。一方、もし統合がなされなければ自社取引所のQUOINEX、QRYPTOS限定のローカルなコインにとどまります。

現状は20を超えたところですが、大手の仮想通貨取引所、証券取引所との提携が今後どこまで進むかは、LIQUIDによる全世界の仮想通貨取引所の統合の行方、QASHの行方を占う上で、きわめて重要です。

LIQUIDのサービス開始も間近で実用段階へ

QASH(キャッシュ)は、最近のICOの定番仕様ともいえるイーサリアム(ETH)ベースのブロックチェーン、スマートコントラクトを利用できるERC20トークンですが、2019年第2四半期(4~6月)をメドにトランザクション処理速度5~10万単位/秒というさらに高速の独自のブロックチェーンに進化し、その際には現在のQASHとは別の新コインを発行して旧QASHと交換すると、ホワイトペーパーではアナウンスしています。

QASHの発行量の上限は10億QASH。ICOトークンセールは2017年11月6~9日に実施され、世界98ヵ国から申込があり4,988人が参加。初日だけで約70億円、トータルで約124億円を調達し、日本発のICOとしては最高額を更新しました。すでに仮想通貨取引所上場も果たし、国内ではQUOINEが運営する取引所のQUOINEXで日本円で購入できます。QRYPTOSでも購入可能です。

今後のスケジュールは2018年の第2四半期(4~6月)にQUOINEのメイン事業LIQUIDのサービスが正式に始まり、現在運営している取引所QUOINEX、QRYPTOSはLIQUIDに吸収・統合されます。2019年第3四半期(7~9月)には正式な銀行免許を受ける見通しで、それにより、LIQUIDは仮想通貨にとどまらず金融業務全体をカバーできる「インフラ」に進化します。それは銀行にとって代わる金融テクノロジー「フィンテック」進出を意味します。ホワイトペーパーによると最終的なゴールは、あらゆる金融サービスの対価の決済に使用される金融業界のスタンダードトークンになることです。

QASHは大手監査法人と監査契約を締結済みで、日本発のICOらしくホワイトペーパーもロードマップも精細にできていて玄人受けします。QUOINEに所属する技術スタッフには海外の金融界での開発経験が豊富な優秀な人たちが揃い、ジハン・ウー氏、出井伸之氏、孫泰蔵氏など著名人も称賛の声を寄せました。しかし、肝心のLIQUIDの「取引所の世界統合」がスムーズに実現するのかなど不確定要素もあります。

2017年11月のICO後、Binance、Bitfinex、Huobi、Cryptosなどの仮想通貨取引所に上場しましたが、当初は値動きが不安定で2018年1月には1QASH=280円まで高騰しましたが、現状は1QASH=100円前後で値動きがようやく安定してきたところです。期待と不安が交錯する感じがありますが、大手取引所との提携など今後出てくるニュースの中身次第では、再び高騰する可能性があります。