「ContractNET(コントラクトネット/単位:CNET)」は、2018年3月24日にICOトークンセールが終了した香港発のコインです。ICOの目的はIoT(モノのインターネット)について、安全性、信頼性に優れた開発プラットフォームを構築、提供することです。世界のIoT技術者が集まるマーケットプレイスも開設する予定です。
ContractNET(コントラクトネット)はIoT技術の普及のためにある
ContractNET(略称:CNET)は、ICOトークンセールが2018年3月10~24日に5つのラウンドに分けて実施されました。5月には中国の仮想通貨取引所「CoinBene」への上場が決まり、順調に軌道に乗っています。
ContractNETは、IoT(Internet of Things/モノのインターネット)の開発のためにある仮想通貨です。テレビも家電も自動車も生産ラインも、あらゆる「モノ」がインターネットでつながるIoTは、自動車の自動運転、ロボット、建物のセキュリティ、工場の工程管理、小売業の在庫管理、配送、健康管理など、ビジネスや社会のありとあらゆるシーンで利用される可能性があります。2030年の全世界の市場規模は2016年の約2倍の404.4兆円に成長すると予測され、有望な巨大市場です(JEITA電子情報技術産業協会のCPS/IoT世界市場調査)。
インターネットを通じてモノの状態をリアルタイムで確認し、その遠隔操作も行えるのがIoTですが、データの保存、共有、分析を、仮想通貨のブロックチェーン技術、スマートコントラクト技術を使ってより安全に、より確実に行えるようにすることを目指したプロジェクトが、ContractNETです。
スマートコントラクトとは契約の自動化技術
スマートコントラクトといえばイーサリアム(ETH)の代名詞のような契約の自動化技術のことですが、それをContractNET独自の技術でIoTに実装させるために、非中央集権的で改ざんされないブロックチェーンを利用しています。たとえばクルマのワイパーの機構にIoTを組み込むと、走行する地域で雨が降り出すとその情報をネット経由でキャッチし、ドライバーが何もしなくても自動的にワイパーが動き出すようになりますが、IoTにスマートコントラクトを実装すれば、雨が降っていないのに勝手にワイパーが動き出すような誤動作が起きる可能性(リスク)を、限りなくゼロに近づけることができます。
ワイパーで人は死にませんが、自動車にはたとえばエアバッグのような人命にかかわるような機構や部品がいろいろあり、そのIoTが誤動作を起こさないことはきわめて重要です。もし高速道路をふつうに走行している時に運転席のエアバッグが突然作動したら、ドライバーは何も見えなくなり、前後の自動車を巻き込んで死亡事故を起こしかねません。しかし、IoTがブロックチェーンとスマートコントラクトで管理されると、誤動作を起こさないような安全性や信頼性が高まります。十分な安全性や信頼性を確保するために自前でIoTの技術者を雇って開発を進める必要もなくなり、コストも下げられます。
ブロックチェーン、スマートコントラクト、IoTの三者を結びつけるContractNET(コントラクトネット)
仮想通貨の基本技術によって「IoTに高い安全性、信頼性を付与する技術パッケージ」をつくって、ひろく提供し、IoT社会の発展に貢献しようとしているのがContractNETです。企業がその技術パッケージを、世界のIoT技術者が集まるマーケットプレイスで購入する時には、ContractNETコインが使われます。そのマーケットプレイスも、ContractNETはつくろうとしています。
たとえば企業に属さないフリーランスの技術者がいて、IoTを利用するモノやサービスを設計し、それにContractNETがマーケットプレイスを通じて提供する技術を搭載すれば、それによって安全性や信頼性の「お墨付き」を得たのと同じことになります。企業は安心して、フリーランス技術者が設計した技術を採用することができます。その分、開発コストは安くなり、フリーランスの技術者は報酬が得られ、その報酬はContractNETのコインで支払われます。また、フリーランスの技術者が技術を企業に売却せずに自ら起業したら、起業資金をContractNETのコインで調達したり、技術の使用料をContractNETのコインで得ることもできます。
ブロックチェーンとスマートコントラクトとIoTの三者を結びつけるのがContractNETですが、IoTが普及して、その開発にContractNETのプラットフォームが利用されれば利用されるほど、ContractNETのコインも使われ、その需要が伸びて価値が高まっていきます。
ContractNET(コントラクトネット)は富士通が共同開発のパートナーになっている
ContractNET(コントラクトネット)は香港籍ですが、そのCEOはシンガポールでHerios Media Design(HMD)という広告会社を経営しています。ContractNETの最大発行量は2,300万CNETで、ビットコイン(BTC)の2,100万BTCに近い数字ですが、そのうち1,060万CNETはすでにBurn(バーン/焼却)済みで、保有者に価値を還元しています。億単位が目立つ最近のICOに比べるとBurn分などを除いた残りの1,194万CNETはかなり少ない数字で、流通量が少ない分、需要があれば何かニュースをきっかけに交換レートがポンと上がりやすくなると言えます。
2月にプライベートセールが実施され、3月10~24日には計5ラウンド、1CNET=0.00012BTC(第1ラウンド)のレートでビットコインとイーサリアムを対応通貨とするICOトークンセールが実施されました。調達資金の使い途はPR・マーケティング費に30%、ブロックチェーン開発費に20%、リザーブファンドに20%、プロフェッショナルサービスに15%、人件費に10%、設備費に5%となっています。
ICOトークンセールの段階で、すでにプロジェクトのコアになる部分のブロックチェーンなどの開発は完了していて、今後は補助ツールやウォレットなどの開発が主になります。スケジュールとしては2018年第2四半期(4~6月)にブラウザウォレット、第3四半期(7~9月)にモバイルウォレットを開発し、第4四半期(10~12月)に支払いに使える商用ツールを開発。2019年に入るとスケーラビリティの拡大、マイニングツールの開発、クライアントの軽量化を行う、となっています。
日本の富士通の現地法人、シンガポール富士通が、CNETのCEOが経営する広告会社HMDのクライアントというつながりで共同開発のパートナー企業になったのも、心強い要素です。富士通はIoTのシステム開発に相当な投資を行っている企業で、セキュリティ面の優秀性でContractNETの技術を買っているのだとしたら、今後有望です。
IoTでは仮想通貨界の大物がライバルになる
ContractNETは2018年4月、「BTC-Alpha」が取り扱う通貨に加えられ、これが事実上の初上場になりました。BTC-Alphaではビットコインで購入できます。さらに5月には中国の仮想通貨取引所「CoinBene」に上場すると決まりました。CoinBeneは取引高ランキングでは20位台の中堅取引所ですが、90位台のBTC-Alphaに比べると取引高で20倍ぐらいの差があり、大手取引所上場への足がかりとして重要な出来事です。CoinBeneへの上場決定のニュースで、1CNET=60円前後だった交換レートは一気に70%ほど上昇しました。現在も1CNET=100円前後の水準を維持しています。
その他、Huobi、Kucoin、Liquiのような大手の仮想通貨取引所にも上場申請を行っていると公式にアナウンスしているので、上場先はこの先、さらに増えると予想されます。メジャーな取引所に上場することは、メジャーなコインになるための必要条件です。
ContractNETは、IoT開発のためのプロジェクトです。IoTの急所は本人認証などセキュリティの部分だと言われています。IoTが怖いのは、ほんの小さなモノからでも「アリの穴」にもぐり込むようにネット内部に侵入されると、最悪の場合、中央のホストコンピュータまで侵入を許してしまう恐れがあることです。もちろん途中に「関所」が設けられていますが、それでもローカルな部分で悪さをされると、復旧するまでIoTが使えなくなり、自動車が動かなくなる、家電が使えなくなる、工場が操業できなくなるなど、多かれ少なかれ損害を被ります。そんなハッキングのリスクに対する安全性、信頼性が確立されない限り、IoT普及のスタートダッシュは望めません。
ContractNETはその問題をクリアして、IoTの普及に火をつける可能性があります。あまり多くのメモリー容量を必要としないという特長もあります。しかし、IoT開発支援という同じ目的を持っているコインには「イーサリアムクラシック(ETC)」や「アイオタ(IOTA)」のような仮想通貨界の〃大物〃がいて、どちらもContractNETにとっては手強いライバルになります。
プラットフォームの開発競争では少し出遅れていますが、その挽回は十分可能です。それでもデファクトスタンダード争いはますます熾烈になると思われますから、IoTは巨大市場に成長すると言われながらも、それなりの覚悟は必要です。