「Loopring(ループリング/単位:LRC)」は2017年8月にICOした仮想通貨です。ユーザーのリスクが最小限に抑えられ、取引コストも安くなり、安全でローコストな利用環境を持った新しいタイプの仮想通貨取引所「分散型取引所」が利用できるようになる仮想通貨です。日本の仮想通貨取引所は未上場で、日本円での購入はできません。

Loopring(ループリング)で仮想通貨取引のニュータイプ「分散型取引所」が利用可能

仮想通貨Loopring(ループリング)の需要と将来性Loopring(ループリング)は2017年8月に公開されました。その最大の特徴は、「イーサリアム・ファミリー」とも呼ばれる「ERC20トークン」を保有していれば、資産をウォレットから取引所へ移動させなくても仮想通貨取引が可能になる「分散型取引所」が利用できるようになることです。

ご存知のように、現在の仮想通貨の二つの大きな〃潮流〃は、ビットコイン(BTC)に始まる「ブロックチェーン」と、イーサリアム(ETH)に始まる「スマートコントラクト」です。イーサリアムでもブロックチェーンは利用できるので、イーサリアムベースの「ERC20トークン」は現状、かなりの数が流通し、とりわけ新規ICOの大部分はERC20トークンと言っても過言ではありません。時価総額第1位のビットコインとそこから分岐(ハードフォーク)した仮想通貨のグループと、仮想通貨界の二大勢力を形成していると言ってもいいでしょう。

Loopringは、そのERC20トークンで「分散型取引所」を利用できるようにするための仮想通貨です。その分散型取引所とは、いったいどんな取引所なのでしょうか?

Loopring(ループリング)で利用できる「分散型」仮想通貨取引所とは

日本でもよく知られる仮想通貨取引所といえば、国内では資金流出事件が起きた「コインチェック(coincheck)」「ビットフライヤー(bitFlyer)」「ザイフ(Zaif)」など、海外では「Binance」「Huobi」「Bitfinex」などがよく知られていますが、これらは全てタイプとしては「中央集権型取引所」です。そこは「他の仮想通貨と交換するなど取引をしたければ、こちらまで持ってきてください」というところで、投資家は手持ちの仮想通貨をウォレットから出し、あるいは円やドルなどの法定通貨を銀行口座から振り込んで、取引所の口座に移す必要があります。しかし「分散型取引所」はそうではなく、「こちらまで持ってこなくても、手持ちの仮想通貨をあなたのウォレットに入れたままで、他の仮想通貨に交換するなどの取引ができます」という取引所です。

「中央集権型取引所」に似ているのは中古車の売却です。所有者はふつう中古車センターや買取店まで運転していき、査定を受けて商談が成立したらその場でカギや保険など必要書類を引き渡し、売却代金を受け取ります。

「分散型取引所」に似ているのはマンションの売却です。動産の中古車と違って不動産は動かせませんから、保有して住み続けたまま売りに出し、買い手が見つかって商談が成立したら、必要な手続を行った後でマンションから引っ越して、空家を引き渡します。

仮想通貨の分散型取引所は、たとえて言えば中古車をネットオークションに出すようなものと考えればいいでしょう。中古車の写真や、年式や走行距離などのデータをネットで公開して買い手を募りますが、商談が成立して売却代金を受け取り車体や必要書類を引き渡すまでの間は、その中古車を保有して乗り続けることができます。手持ちの仮想通貨がウォレットに入っている状態とは、ネットオークションに出品した中古車が自宅の車庫に入った状態に相当するとみていいでしょう。

分散型取引所が「安全」と言われる理由

安全な「分散型」仮想通貨取引所が利用できるようになる仮想通貨Loopringでは、仮想通貨取引のニュータイプの「分散型取引所」には、従来型の中央集権型取引所と比べて、どんなメリットがあるのでしょうか?

最大のメリットは、コインチェック事件やそれ以前に起きたマウントゴックス事件で問題になった「取引所が資産を預かるリスク」の回避です。コインチェックは取引所とは別にウォレットのサービスを無料で提供していました。ウォレットは「仮想通貨の財布」ですから、本来は投資家が自分でウォレットのアプリをダウンロードして仮想通貨を入れて、それを自分で管理し、取引のたびに取引所に送って、取引が終わればすぐ引き取るという作業が必要です。

ところがコインチェック事件では、投資家の多くがそれを面倒くさがり、コインチェックが管理するウォレットに自分の資産を入れたままにしていました。そのため、ハッキングの発生直後に資金の出し入れが停止されると、虎の子の仮想通貨を出せなくなってしまいました。それは自業自得の側面もありますが、たとえば自分でウォレットを管理していて、取引のために仮想通貨を出して取引所に送った数秒後にハッキングされて持ち去られた!、あるいは取引所が倒産して取引停止になった!というケースだったら、悔やんでも悔やみきれないでしょう。

そんな、倒産や営業停止、ハッキングの被害、天災や故障によるシステムダウンなど、たとえ数秒間でも仮想通貨取引所に資産を預けたら起こりうるリスクのことを、「カウンターパーティーリスク」と言います。カウンターパーティーとは英語で取引する相手のことです。取引所は「お客様の大切な資産を守るためにセキュリティに万全を期します」と言い、コールドウォレット(オフラインにして侵入を防ぐ)などいろいろな対策をとっていますが、それでもリスクがゼロ、100%安全とは言えません。銀行の「ペイオフ(1,000万円までの預金払い戻し保証)」のような公的な救済制度もありません。

分散型取引所でカウンターパーティーリスクを確実に回避

しかし、分散型取引所であれば、少なくとも取引所に資産を移した後、不測の事態で資産が消えたり、出金ができなくなるカウンターパーティーリスクは確実に回避できます。取引所が重大な事態に見舞われた時、そこに投資家の資産は全く存在しないからです。投資家の資産を守るのが目的のセキュリティ投資も不要になり、その分、コストが下げられます。ローコストは取引手数料の安さという形で投資家に還元できます。

Loopring(ループリング)は、そんなリスクの低い、安全性の高い、ローコストな分散型取引所で「ERC20トークン」が取引できるように手助けするプラットフォームです。Loopringそれ自体もイーサリアムベースのERC20トークンですが、取引対象のトークンにLoopringのシステムを組み込むことで、分散型取引所が利用できるようになります。

技術的には「オーダーリング(Order Ring)」という独自のネットワーク上で「リングマイナー(RingMiner)」が整合性の計算を行って、売り注文と買い注文を正しく突き合わせて取引を成立させます。そこでは数学の「ゲーム理論」と、ハッキングに強いスマートコントラクトが大きな役割を果たします。そして売り手のトークンと買い手のトークンを直接交換します。これが分散型取引所の基本的なしくみで、これならトークンがウォレットに入ったまま、自分が管理している状態で取引は成立することになります。資産を他人に預けるのと自分が管理するのと、どちらのほうがリスクが高いか、誰でもわかるはずです。

Loopringのプラットフォームはそんな分散型取引が利用できるだけでなく、「リングマッチ」と呼ばれる自動取引の機能も備えています。あらかじめ取引条件を細かく指示しておくと、買いでも売りでも、条件に合う相手がいたら自動的に取引が成立します。そうやって分散型取引所の弱点と言われる流動性を高めています。

分散型取引所が拡大すればLoopring(ループリング)の価値が高まる

Loopring(ループリング)は2017年8月6日に公開され、発行上限は13億9,507万LRCです。2017年9月に大手取引所「hitBTC」に上場し、続いて取引高ではメジャー級の「バイナンス(Binance)」や「コインエクスチェンジ(CoinExchange)」に上場しました。日本ではまだ上場していません。

8月30日に1LRC=0.12ドル(約13円)で始まり、当初は低調に推移しましたが、2017年末、仮想通貨全体の盛り上がりに合わせるように高騰し、2018年1月9日には当初レートの200倍の1LRC=2.4ドル(約250円)を超えました。その後は落ち着きましたが、現状は1LRC=100円を中心にプラスマイナス10円というレンジで動いています。

コインチェック事件が起きて、仮想通貨の投資家の間で安全な取引への関心、取引所のカウンターパーティーリスクへの関心が高まり、Loopringには追い風が吹いています。また、ICOから日が浅いものを中心に、組み込み対象であるERC20トークンの数が増えていることも好材料です。LoopringはQTUMと提携しNEOの開発に参加するなどアジアの仮想通貨との連携を積極的に進めていて、アジア、特に中国で分散型取引所の立ち上げにつながるのではないかとみられています。従来の中央集権型取引所にもそれなりのメリットがあり、分散型取引所にとって代わられるとは考えにくいのですが、「Loopringは分散型取引所に入れるパスポートのようなもの」とスタンダード視されるようになれば、需要は拡大し、価値も高まります。