「Request Network(リクエスト・ネットワーク/単位:REQ)」は2017年8月にICOしたコインです。仮想通貨、法定通貨を問わず、全ての通貨の「即時決済」を可能にするプラットフォームの構築が目的で、海外送金の手段として普及した「Paypal(ペイパル)」の仮想通貨版を目指しています。現在は日本の仮想通貨取引所では未上場で、日本円での購入はできません。
Request Network(リクエスト・ネットワーク)は商取引での「即時決済」が可能
商品を引き渡したりサービスを提供したりしたら「請求書を発行する→相手に代金支払い(決済)を行ってもらう→支払いが行われたことを確認して領収証を発行する」という一連の流れは、万国共通の商取引の基本中の基本です。商取引の当事者は両方とも、請求書や支払いの記録や領収書をもとに、帳簿を記録して決算書を作成したり、家計簿を記録したりします。それも会計の基本中の基本です。
Request Network(リクエスト・ネットワーク)は主に企業や公的機関や団体を対象に、商取引の「請求と支払い」をもっと便利にするための仮想通貨です。ホワイトペーパーでは「いつでもどこでも支払いを可能に」とうたっています。と言っても単位がREQのトークンを決済に使うわけではなく、Request Networkが開発する「端末」を使います。そうすれば仮想通貨でも法定通貨でも、スピーディーでストレスのない「ワンクリック認証」により、その時点でのリアルタイムな交換レートで支払い(即時決済)が行われます。端末では、イーサリアムベースの分散型ブロックチェーンによって支払い(決済)の処理がなされます。
具体的には、元帳をもとに請求書をつくって送付する「請求書の発行」、従来の銀行決済、クレジットカード決済、PayPal決済などにとって代わる「オンライン決済」、会計や監査のシステムのデータソースになる「会計・監査」といった機能があります。
Request Network(リクエスト・ネットワーク)の特長
Request Network(リクエスト・ネットワーク)の特長をまとめると、次のようになります。
●銀行、クレジットカード会社のような決済代行を行う第三者を介さず、銀行口座番号や実名など個人情報を伝えなくていいので、それが漏洩するリスクがなくなり安全に支払いができる。漏洩防止のセキュリティコストがかからない分、決済手数料を下げられる。
●請求や支払いはリアルタイムに必ず台帳に記録され、ブロックチェーン技術によって改ざんはされない。会計データに信ぴょう性があるので会計監査がスピーディーに行える
●グローバルに、仮想通貨でも法定通貨でも機能し、世界中で使うことができる
●貿易法、税法などあらゆる法律に合わせて機能をカスタマイズさせることができる
●将来的にはIoTにも対応できるように設計されている
支払い(決済)に伴って、さまざまな拡張機能が提供されます。たとえば決済情報を全てブロックチェーンに記録して会計監査に提出できる「Smart Audit」などがありますが、その手数料の支払いにRequest NetworkのREQトークンが使われます。
なお、仮想通貨独自の技術を利用しているRequest Networkの最大のメリットは、請求や支払いの「透明性の確保」です。請求内容が金額などの決済情報は改ざんされないブロックチェーン上で管理されるので、データの信ぴょう性が高く、それを会計帳簿と突き合わせることで売上や経費の架空計上のようなごまかしを防げます。企業決算を監査するプロで、もしもごまかしを見逃したら自らの信用にかかわる公認会計士や監査法人にとっては、Request Networkを利用したデータなら真偽を疑うことなくスムーズに、スピーディーに監査が行えます。ただし、取引先もグルになって粉飾決算をやっていたらもうお手上げではありますが。
透明性の確保というメリットは、企業だけでなく政府、地方自治体、NGO団体などの予算執行の透明化にも寄与します。ガラス張りの情報公開ができ、議会や市民などからの監査請求があれば資金の使い途を直ちに明らかにできます。カネの流れがウヤムヤにされたり、記録が「所在不明」「廃棄」で疑惑を呼んだりするようなことは、少なくともシステム運用上では、なくなります。
Request Network(リクエスト・ネットワーク)は自分でアプリをつくりカスタマイズできる
Request Network(リクエスト・ネットワーク)は、REQトークンによる通貨間決済を目指しています。「仮想通貨でも法定通貨でも、決済の通貨を問わない」は、ある意味すごいことです。というのは国際取引の決済で第三国のマイナーな法定通貨を使うのは難しく、米ドルやユーロを使うように要請されるからです。マイナー通貨は両替がしにくく、できても手数料コストが高いので嫌がられます。ましてや仮想通貨となると、たとえビットコインでも難色を示されることが多いでしょう。値動きが激しく、一夜明ければ価値がドンと下落する恐れがあるからです。そこへ「ベラルーシ・ルーブル」でも「モナコイン(MONA)」でも何でも決済OKだというのは、まさに「決済革命」です。
Request Networkには「ユーザー自らアプリをつくってカスタマイズできる」という機能がついています。マイクロソフトの表計算ソフト「EXCEL」を自社の会計業務に的確に対応できるようにカスタマイズしたり、その「マクロ」で自社専用の請求書フォームや支払処理フォームをつくっている企業はそれこそ無数にあると思いますが、Request Networkの支払いと請求のプラットフォームでも、それと同じことができます。
すでにカスタマイズ作業ができる開発プラットフォームが提供されていて、たとえば前受金や中間金や割賦販売など請求や支払いに独特の商慣習があったり、消費税との二重課税など独特の課税方法がある業界の企業なら、それに合わせるために自社専用のアプリをつくることができます。なお、開発プラットフォームでつくられた汎用のアプリも「Request Payment」などがリリースされていて、誰でもダウンロードして利用できます。
「ウィキペディア」がRequest Network(リクエスト・ネットワーク)を導入した理由
Request Network(リクエスト・ネットワーク)はイーサリアムベースのERC20トークンで、ウォレットにはMyEtherWalletを利用できます。発行量の上限は9億9,999万REQ(約10億REQ)です。国内の仮想通貨取引所には上場していませんが、海外の大手取引所では「バイナンス(Binance)」の他、2018年4月には「コインエクスチェンジ(CoinExchange)」にも上場を果たしました。今後のロードマップは、2018年第3四半期(7~9月)にエスクロー、税金、前払い、後払いなどの拡張機能を実装し、第4四半期(10~12月)以降にREQトークンによる通貨間決済が導入される予定になっています。
Request Networkの交換レートは2017年10月21日には1REQ=0.05ドル(約6円)だったのが、2018年1月6日には1REQ=1.06ドル(約113円)まで上昇しましたが、4月になると0.15ドル(約16円)まで下がりました。現在は1REQ=30円前後で推移しています。
Request Networkが目指しているのは、ネット上の送金、決済方法として欧米で広く普及している分散型決済システム「PayPal(ペイパル)」の仮想通貨版として、世界的にひろく普及することです。対抗する武器は、個人情報を直接扱わずセキュリティコストがかからない分を反映させた、割安の手数料です。
PayPal決済でも銀行決済でもクレジットカード決済でも、支払う側は口座番号や実名など自分の個人情報を伝えなければなりませんが、Request Networkは個人情報を誰にも伝えずに取引ができます。匿名決済には「麻薬や武器の取引に使われる」「資産隠しや脱税に使われる」など批判も根強いのですが、たとえば話題になった「タイガーマスク運動」の〃伊達直人さん〃のように、身元を明かさずに寄付をしたい場合には向いています。
2018年4月にはインターネットの百科事典「Wikipedia」を運営するアメリカのウィキメディア財団と提携し、Request Networkを通じて仮想通貨で財団に寄付ができる機能が導入されました。寄付をするプロセスで銀行やクレジットカード会社など第三者による仲介が必要ではなくなり、寄付者がリアルタイムで寄付の流れを追跡できるようになってプロセスの透明性が確保できると、ウィキメディア財団では言っています。
Request Networkが提供するプラットフォームは「請求と支払い(決済)」という、世界のどこでもそれこそ無数に行われている商行為に関わっていますから、巨大な実需が存在します。従来型の決済と比べてセキュリティコストがかからず手数料を下げられるので、それを好感されて大きく成長できる可能性があります。
世界のどこに行っても、コストダウンは企業にとっても公的機関にとっても個人にとっても大きな課題です。Request Networkについてはさらに、分散型ネットワークによる個人情報の保護、透明性の確保、決済通貨を問わないなどのメリットも評価されればさらに有望ですが、競合相手のコインの出現も予想されます。手数料引き下げ競争になる前にシェアをどれだけ確保できるかがカギです。