Bitcoinを筆頭にさまざまな仮想通貨はマイニングされることによって、通貨として支えられているブロックチェーン技術のブロックを生成しています。マイニングはさまざまな企業や個人が総当り的にブロックハッシュの計算を行っており、nonceを見つけることでマイニング報酬を得ています。そんなマイニング業界の中でも絶対に外せないのがビットメイン社です。ビットメインは世界最大級のマイニング企業であり、仮想通貨の動向に関して強い発言権があるほど仮想通貨の未来を牽引している企業でしょう。
世界最大級ビットメイン(Bitmain)の実態
ビットメイン(Bitmain)は中国に本社を置き、世界にも多くのオフィスを置いているマイニング企業です。子会社であるAntPoolとBTC.comはビットコインブロックチェーンのキャッシュ約40%を保有し、ほぼ半数のBitcoinがこの企業によってマイニングされています。したがって、ビットメインは仮想通貨関連に対して多くの注目を浴びているマイニング企業です。
ビットコインブロックチェーンのハッシュレート
https://blockchain.info/ja/pools
2017年に起きたBitcoin とBitcoin cashのハードフォーク時にはビットメイン社のCEO Jihan Wooとビットコインコアディベロッパーたちとの様々な論争があり、結果としてハードフォークが起きてしまいました。
さらに、ビットメイン社は2017年の創業4年目に営業利益が約3200億円〜4300億円をあげたことで話題になり、創業27年目の米GPU開発会社のNvidiaを超えました。このマイニング企業の勢いは止まることなく、次なるマイニングツールの開発として従来マイニングに使用しているASICの代替えとする人工知能を取り入れた新たなチップを開発することを最近発表し、話題になっています。ではビットメイン の事業内容を見ていきましょう。
ビットメイン(Bitmain)の主な事業
ビットメイン(Bitmain)では主に3つのマイニング関連事業をしています。マイニング機器Antminerの開発販売、マイニングプールの運営、クラウドマイニングのサービス提供を行っており、それぞれ解説していきます。
マイニング機器Antminerの開発・販売事業についてです。創業初期からマイニング機器の開発・販売事業を行なっていて、CEOのパートナーであるマックフリー氏がマイニング機器のデザイン設計をしました。そこで誕生したのがBitcoin専用マイニング機器のAntminerです。AntminerはBitcoinのアルゴリズムSHA256関数の計算に対応させているこASICプロセッサ(パソコンでいうCPU)を内蔵し、素早い計算パワー・消費電力が低い・他社と比べて壊れにくいことから多くのマイナーから指示を受けています。今ではAntminerシリーズとしてEthereumやMonero専用のAntminerも提供しています。3つのマイニング関連事業の中では最も多くの収益を上げているビットメインでは主軸の事業になっています。
マイニングプールについてです。マイニングは総当たり的に計算を行ってnonceを見つけるものだと書きました。その特性上、少ない個数でマイニングしている個人よりも企業のような集団でマイニングしている方がどうしても強くなってしまうことから、個人個人が集まって集団としてマイニングするのがマイニングプールの始まりです。ビットメインはマイニングプールの管理手数料を収益としています。
クラウドマイニングについてです。クラウドマイニングは自分のマイニング機器は持っていないのだけど、マイニングへ投資をしたいと考えている方向けのサービスです。マイニングには多くの電力を消費するため、電気代を賄うための資金を募っている企業へ投資することで、そのマイニング益の手数料をもらっている仕組みです。
上記の事業を踏まえ、ビットメインはマイニングをしている企業というよりもマイニング専用機器を販売しているメーカーと捉える方が正しいでしょう。仮想通貨業界を牽引しているこのマイニング企業ですが、いくつかの問題が懸念されています。それはASICboost問題と51%問題です。
ビットメイン(Bitmain)のASICboost問題
ASICはもともと専用アルゴリズムを効率良く計算するための組み込みソフトです。ASICboostはASICを改良させたバージョンと考えていください。ASICboostはティモ・ハンケとセルジオ・デミアン・レナーにより考案されたとされる技術で、Bitcoinのプルーフオブワークで用いられるハッシュアルゴリズム、SHA256の計算を20~30%高速化することができます。
これだけで捉えた場合、素晴らしい技術革新です。しかし、ビットメインはこのASICboostを特許技術として取得しました。つまり、自社の製品だけが効率良くマイニングできるように技術を内部のみに留めました。これに対して、Bitcoin支持者たちはビットメインだけが有利を得る構造を容認できません。
この論争はbitcoin のハードフォークが起きるまで話題になりました。CEO Jihan WooはASICboost反対派に対して、Twitterで「ASICboost技術のマイニングテストはしたが、本物のBitcoinではマイニングしていない。」と述べています。しかし、ASICboostには使用履歴を追跡できる公開型と使用履歴が追跡できない非公開型の2つのタイプがあるので、結局ASICboost技術を本物のBitcoinでマイニングしていなかったとしても信用できない構造ができました。
Bitcoinコア開発者はASICboostの対策案としてSegwitの導入が浮上すると、再びビットメイン社 CEO Jihan Woo含むマイナーたちから反対の声が上がりました。これはBitcoinが分裂してしまうほど大きな話題となり、Bitcoinのハードフォークの結果Bitcoin cashが誕生します。Bitcoinがsegwitを導入をすることによりASICboostによる対策をして、無断で効率良くマイニングできない構造を作ったのがハードフォーク後のBitcoinです。これによってBitcoinのASICboost問題は解決しましたが、ビットメインはさらにほかの仮想通貨向けにマイニング機器を開発しているため、ほかの仮想通貨開発者たちは今後のこのマイニング企業の動向に注意を払っています。
ビットメイン(Bitmain)の51%問題
51%問題とはビットコインネットワーク(ハッシュレート)が悪意あるマイナーによって、二重支払いや不正な取引を行ってしまうのではないかという問題です。現在、ビットメインはビットコインキャッシュレートの約40%を占めているため、もうすぐ51%に届くかもしれません。しかし、この企業が悪意のあるマイナーということは誰にもわからないことなので、実際にキャッシュレートが51%以上になって問題が発覚してみない限りわかりません。
もし51%問題が悪意のあるマイナーによってネットワークが操作された場合に考えられる被害は取引の二重払いや取引の承認の操作、ブロック報酬を独占することなどが可能です。ただ、ブロックチェーンの特性から過去の取引データの改ざんや、他人の仮想通貨を盗むことはできません。しかし、現在民間企業などで決算手段の採用が広がっている仮想通貨の取引を特定の企業が管理しているという面では不安な印象が広がっています。ビットメインのビットコインキャッシュレートが51%に近づけば再び論争が繰り広げられるでしょう。
51%問題が起こってしまう原因として、BitcoinのブロックチェーンアルゴリズムであるPoWが関わっています。PoWではトランザクションの確認作業を膨大な計算がかかる問題にすることで、簡単にトランザクションを改ざんできない仕組みを作りました。一般的な計算機による計算だと問題は起こらない仕組みでしたが、計算力が高いマイナーつまり、マイニング機器を開発しているビットメインにとっては有利に働いています。
マイニングは仮想通貨を通貨として保証するために必要不可欠な存在です。ビットメイン社はAntmanerであるマイニング機器を開発することで、仮想通貨業界を牽引してきました。様々な話題が取り上げられながら、仮想通貨開発者たちとマイナー集団たちとの発言は注目されています。今後はさらなる成長のため、マイニングに人工知能を搭載する計画が発表されています。また、解決されていない問題もあり、仮想通貨の成長に必ず関わってくる存在になるでしょう。