ビットコインは「デジタルゴールド」たりえるのかビットコインを始めとした仮想通貨は、その値動きの激しさから「投機商品」としての意味合いを強く持ってしまっているのが現状です。しかし、ビットコインの根本となるブロックチェーンの技術は長期的な投資対象として非常に面白みのあるものですし、「ビットコイン」そのものにしても、単なる値動きの激しい金融商品のような扱いを受けるのはあまりにも勿体ない特徴を備えています。その特徴の一部を捉え、PayPalの創設者ピーター氏は、「ビットコインは『デジタルゴールド』だ。」という旨の発言を行っております。この記事では、そのデジタルゴールド発言の意図を、「リアル」のゴールド、(実際の金)とビットコインを比較しながら読み解いていきます。結論を先取りしますと、ビットコインは仮想「通貨」、暗号「通貨」というような呼ばれ方をしますが、実は特徴をよく考察してみると、「金」により近い特徴を持ち合わせていることがわかると思います。

金(Gold)はどんな特徴を持つのか

まずはデジタルゴールドの考察に入る前に、そもそもの金(Gold)について改めて考察していきます。

①「財」「富」の象徴であり、保存手段でもある

日本において「お金」(money)の文字に「金」が使われていることに象徴されるように、金はその荘厳な見た目と、詳しくは後述しますが、長期間保存できる性質、形状を容易に変化させられる性質から古今東西、「財」や「富」の象徴として扱われてきました。例えば日本で言えば、志賀島で「漢委奴國王」と記された金印が発見されたことを小学校の歴史の授業で習ったことは多くの方の記憶に残っているのではないでしょうか?また、中世以降、貨幣経済となっていく中で、金属貨幣の中で最も価値を持ったのが「金貨」です。次いで「銀貨」という風に、現在のオリンピックのメダルの色と似たような順位付けがされているのも面白いですね。現在まで国内外を問わず、「金塊」が蓄財の手段として有効に機能しています。

②そのままの形で価値を保つことが出来る

人類が初期に利用していた「金属」としては「青銅」や「鉄」をイメージされる方が多いのではないかと思いますが、実際に最も古くから利用されていた金属は金といわれています。理由としては、鋳造が精製の必要なく、そのままの形で自然界に存在出来ることが挙げられます。そのままの形で長期間変化せず、その形を維持することが出来る性質は、「財産」として保有しておくのにも適した性質です。単に、見た目が綺麗で荘厳、というだけでなく、こういった特徴も、①の形で用いられた要因です。また、形が非常に柔らかく、加工にも適しています。金塊として保存したり、装飾品として用いたり、その柔軟性も富を様々な形で保存する手段として用いるにあたり一役買っているでしょう。一方で、その柔らかすぎる性質から農具や武器のような実用的な手段としては用いられにくい金属でもありました。

③地球上に存在量が決まっている

金は「造る」ことが出来ないことも、新たに自然に生成されることもなく、地球上に存在する量が決まっています。地球上に存在する金は約21万トンといわれています。実は採掘の難易度は比較的低く、現在、そのうち、約14万~15万トンが採掘済みです。量にしてみると、地球上に存在する金の量は、オリンピックに用いられる競技用プール約4.5個分。そのうち、既に採掘済である金が、約3.5個分となります。アメリカ西海岸で、「ゴールドラッシュ」が起きたことを世界史で学んだ方もいらっしゃるかもしれません。また、現在日本と金の採掘は中々イメージが結びつかないと思いますが、重さで例えるとイメージが付きにくいかもしれませんが、かつてマルコ・ポーロが東方見聞録の中で日本を「黄金の国ジパング」と記しているように、かつては豊富な金が算出されていました。

④金融制度の歴史を支えている

最新の制度ではありませんが、戦後から1970年代まで続いたブレトン・ウッズ体制は、古くはローマ帝国時代から用いられたという「金本位制」をモデルとし、採用されていた体制です。アメリカが保有している「金」と「米ドル」の固定レートを定めることにより、ドルの価値を保証し、国際経済の基軸として、ドルを用いました。お金というのは簡単に言うと、国の信用のもとに成り立っていますが、その国の信用を支えているのがその国が保有している金でした。

⑤金融商品である

金は有史以来、富の象徴として、また、保存手段として用いられてきましたが、現在でも金融商品の一つとして活用されています。有限であり変化することがない性質は金融の仕組みがこれほどまでに発展した現代でも、重宝されています。加えて、金融商品としての特徴としては「有事の金」などと言われています。株や新興国の外貨、国債などのハイリスク商品は、有事の際にはリスクオフとして避けられる傾向にあります。その市場から引き揚げられた資金の避難先として、「安全資産」とカテゴライズされているのが「金」や「日本円」です。そのような立ち位置で、根強い投資対象として機能しています。

ビットコインを金の特徴に当てはめてみる

①富、財の象徴かは不明だが、保存手段としては非常に優秀

世界のあらゆる取引所で、極論1円からでも買うことが出来、さらにデータであり、可視化できないビットコインは現状、「富や財の象徴」とは言い難いですが、ウォレットや取引所などのビットコインアドレスさえ持っていれば容易に保有できます。かつ、データなので場所を取ることもない性質は、ビットコインは富の保存手段としては非常に優秀です。

②そもそも「形」がないため劣化のリスクは存在しない

ビットコインは実態のないデータなので、劣化や時間の経過により失われるといったリスクとは無縁の存在です。そういった特長も金と似たようなものであり、デジタルゴールドと呼ばれる所以の一つでしょう。勿論、ビットコインは形がないと言っても盗まれるといったリスクはつきものです。(現物の金とは違いハッキングなどの手段になってきますが)。

③地球上に存在量が決まっている

ビットコインの発行上限枚数は2100万枚と、開発された当初から決められています。金の総存在量、「約21万トン」が似ているのが偶然なのか意図されたものなのかは分かりませんが、ビットコインの「存在量が決まっている」「そのうち、一部(過半数以上ですが)既に世の中に出回っており、一部が今後も採掘(マイニング)される」「採掘されるにつれて、新たな採掘の難易度が上がっていく」といった特長は見事に一致しています。

④今後の金融を支える根幹になりうるか

いうまでもなく、地球の誕生とともに存在した金とせいぜい10年の歴史のビットコインではこれまでの歴史に対する貢献度としては全く異なりますが、ビットコインが今後の金融において重要な役割を持つようになる可能性は十分に考えられると考察しています。

⑤立派な金融商品である

現在、ビットコインは世界で最も注目されている投資商品、金融商品です。現状は値動きが激しすぎて、「投機商品」としての意味合いも強いですが、実はここまで大きくは注目されていなかった2016年、ビットコインのチャートの動きは金に近い形をとっていました。即ち、株などのリスク商品が大きく値動きするシーン(米大統領選挙)などの際に資金の避難が起き、「有事の金」「有事の円」のラインナップに「有事のビットコイン」が加わるか、など、私事ではありますが、ビットコイン投資仲間の間では話していました。現在はビットコインの値動きが激しいですが、一定の場所で価格が安定した際、再び同様の役割を持つ可能性は十分にあるのではないでしょうか?

ビットコインは次世代の「金」たりうるか

ビットコインの性質から「通貨機能も持ったデジタルゴールド」といった形で定着する可能性仮想「通貨」という言い方をすると、どうしても比較対象として法定通貨が出てきがちですが、「送金」「決済」といった機能を除くと、実はビットコインは金に近い性質をいくつも持っていることが分かります。現状の値動きの激しさは到底「有事のビットコイン」にはなりえませんが、今後ビットコインの価値が安定した時、その希少性や保存に優れた性質から「通貨機能も持ったデジタルゴールド」といった形でその中に定着する可能性もあります。目先の値動きを追いかけるのもよいのですが、長期的な目線でビットコインを何かと比較してみても、また別の視点が見えてきます。