漸く、長い氷河期を抜けてきた感のある仮想通貨業界ですが、市場が低迷しているときも、回復しつつあるときも、常に数えきれないほどの仮想通貨が生まれてきています。中には、何も中身のない、資金集めだけが目的の詐欺のような仮想通貨も沢山ありますが、ビットコインや、時価総額上位に位置するイーサリアム(ETH)やリップル(XRP)のような優良アルトコインの陰で、より優れた通貨を開発しよう、ブロックチェーンの技術で世界を変えていこう、といったモチベーションで志ある開発者たちによって、日々、新たなコインが開発、改良されています。

仮想通貨の開発、と言えば主には海外が中心であり、日本は後れをとっているような印象もありますが(ビットコインの構想を考えたのは「ナカモトサトシ」氏といわれていますが、実際には日本人であるかどうかすら疑わしいです。)そんな中、日本発のアルトコインとして、知名度、時価総額ともに最も有力なのは、国内の複数の取引所にも上場しているモナーコイン(MONA)ですが、それに続く、日本発のアルトコインとして名前が挙がるのがBitZeny(ZNY)です。BitZeny(ビットゼニー)がどのようなコインか、なぜ注目されつつあるのか。仮想通貨の根本的な部分にも触れながら、改めて解説していこうと思います。

BitZeny(ビットゼニー)とはどんな仮想通貨なのか

仮想通貨BitZeny(ビットゼニー)の将来性BitZeny(ビットゼニー)は2014年に、ビットコインをベースに日本で開発された仮想通貨です。仮想通貨界隈で名前が上がるようになったのは、国産コインモナーコインが注目されるようになった2017年以降ですが、その歴史は意外と浅くはありません。BitZenyの「ゼニー」は、かつて日本で使われていたお金、銭(ぜに)から取られているあたりが、いかにも日本らしい通貨です。総発行量は2億5000万枚。先駆者のモナーコインと比較し、2倍弱の枚数が発行されます。2014年に開発がストップし、開発者が行方不明になっていた、という懸念が挙げられましたが、2017年12月、開発者が復帰。開発者不在の間にも、多くのコミュニティ参加者に支えられ、守られてきたことも、仮想通貨の在り方として非常に象徴的なものです。

また、BitZenyには「ぜにぃ姫」と呼ばれる可愛らしいマスコットがいます。一見、微笑ましいお遊びの域を出ないようにも見えますが、実は仮想通貨においては重要なポイントが隠されているかもしれません。なお、国産のコインではあるものの、2018年5月現在、国内の取引所では売買することが出来ず、保有したければCryptoBridgeなどの海外の取引所を開設する必要があります。以前は、マスコットぜにぃ姫を活用した「なげ銭Bot」により、クリエイターやスポーツ選手など、応援したい個人を少額から手軽に支援できる「投げ銭サービス」が展開されていましたが、管理やセキュリティの問題から、サービスが終了しています。

BitZeny(ビットゼニー)の特徴

●仮想通貨として基本的な機能を一通り備えている
BitZeny(ビットゼニー)は、ビットコインをベースに開発された仮想通貨であり、決済や送金などの、通貨の一通りの機能を兼ね備えています。一方で、元祖であるビットコインを基とし、開発も止まっていた通貨であり、正直なところ、現時点では、イーサリアムやネム、それをベースとして開発された通貨の方が技術的には勝っているポイントが多いです。スタンダードに問題はない物の、技術的な「唯一無二」がないことは今後の課題となるかもしれません。

●一般のPCからも「マイニング」が可能である
特徴の大きな一つとして、一般的なPC1台でマイニング(採掘)に参加できる、という点が挙げられます。マイニングは多くの仮想通貨にとって必要不可欠な要素ですが、代表格たるビットコインのマイニングには今やスーパーコンピュータを大量に並べた「マイニング工場」が必須であり、電気の消耗や環境破壊が問題として挙げられるほどの処理速度が必要な工程になっています。そのコストを負うだけの魅力がある事業である、ということの裏返しでもあるわけですが、参入できるのは巨大な資本を持つ者だけです。

BitZenyのマイニングは家庭用PC1台のスペックから参入が可能です。もちろん、BitZenyの単価の低さも相まって、マイニングから得られる報酬はビットコインのそれに比べるとごくごく僅かなものでありますが、仮想通貨の根幹の一つである「マイニング」に一般のユーザーが気軽に参加できることは、仮想通貨全体の考え方の浸透にも一役買うものですし、また、BitZenyが愛される一要素にもなります。

BitZeny(ビットゼニー)の値動き

BitZeny(ビットゼニー)は開発されてから長期間、1円どころか0.1円にも満たない価格で長期間低迷していましたが、仮想通貨元年といわれる2017年に1円を突破。その後、仮想通貨全体が暴騰し、とりわけ、国産第一号であるモナーコインの暴騰を受けてか、堀江貴文氏に取り上げられたことを受けてか、大暴騰。まだ仮想通貨市場全体がバブルのような熱気を帯びていた12月後半には50円に届くかという勢いを見せました。その後、20円台まで下落した後、40円弱までの回復を見せますが、コインチェック騒動から始まる、数か月間の「氷河期」の中で、BitZenyの勢いも大失速。3月以降は基本的には5円未満という低水準での値動きとなっています。

BitZeny(ビットゼニー)の将来性

モナコインに次ぐ日本発注目のアルトコインBitZeny先述の通り、BitZeny(ビットゼニー)には少なくともこの記事を執筆している段階で、仮想通貨として一通りの機能を備えてはいるものの、技術的に特筆した強みを持った通貨ではありません。にも関わらず、堀江氏からも言及され、注目を浴びている大きな強みがあります。すなわち、「コミュニティの勢い」です。「人気」、と言い換えた方がイメージはしやすいかもしれません。これは、国産第一号たるモナーコインでも共通して挙げられる特徴でもあります。モナーコインは2ちゃんねる(現5ちゃんねる)のアスキーアート(絵文字)から生まれたキャラクター「モナー」をモチーフに開発されたコインです。

モナーコインは致命的な欠陥のない技術的にもある程度優れた通貨でもあるのですが、それ以上に「日本発」「オタク文化発」のコインであり、愛着を持っている人が多い、というのが何よりの強みとして挙げられます。中には、私財を投じて秋葉原のスクリーンでコインの宣伝を行う人が出てくるほどです。こういった、コアなファンは多少の価格の上下動ではコインを売ったりはしませんし、技術的な発展にせよ、拡散にせよ、打算以外の感情で動いてくれるファンの数というのは市場の需要と供給だけで価格が決まる仮想通貨においては重要なポイントになります。

BitZenyは約3年間開発がストップしていたにも関わらず、その間ファンによってコミュニティが維持、拡大されてきました。このコミュニティの強さの秘密が、気軽にマイニングに参加できることに起因するのか、昔の貨幣、もしくはゲームの通貨として出てくる「銭」「ゼニー」と、仮想通貨のイメージの親和性が高かったからなのか、はたまた、ぜにぃ姫が可愛かったからなのか、定かではありません。しかし、この「コミュニティの強さ」という要素が今後の仮想通貨業界において最重要ファクタの一つになってくることは間違いないでしょう。通貨を持っていれば資産が何十倍にもなった2017年と違い、今後は本当に価値のある通貨だけが生き残っていく時代です。勿論、BitZenyが現在の人気を維持できる保証はありませんが、一つのケーススタディとしても注目すべき通貨です。