2018年始、コインチェックのNEM流出騒動をはじめとした多くのネガティブニュースに見舞われ、低迷していた仮想通貨業界ですが、4月の中盤以降徐々に回復を見せています。とはいえ、「バブル」状態であった2017年末の水準には遠く及ばない価格である通貨がほとんどです。仮想通貨元年といわれた2017年は詐欺のようなものを除けばある程度どの仮想通貨に投資していても資産が何十倍、何百倍という上昇を見せましたが、仮想通貨が世間一般に対して十分に注目され、過熱状態が少し冷静になった現在、同様のペースでの成長を期待するのは少し楽観的かもしれません。筆者の意見としては、仮想通貨市場は今後もまだまだ成長していくと考えています。ただし、その中でも全ての通貨が成長するわけではなく、本当に価値があるコインだけが今後も成長していき、価値のなくなるコインは淘汰されていく、というような市場になると予測されます。そんな中で、筆者が優良、将来性があると考えているアルトコインの特徴とそれに照らし合わせて5種類ほどアルトコインを挙げてみたいと思います。仮想通貨市場にいまから参入する方も、ポートフォリオの見直しを行いたい方も、ご参考程度に読んでいただければと思います。
将来も価値を持つ仮想通貨の特徴2選
仮想通貨の元祖たるビットコイン自体が、世の中の決済や送金の仕組みを根本的に変えうるものとして生み出されました。その仕組みの根幹の一つであるブロックチェーンの技術を使い、後発で様々なアルトコインが生み出されています。実際のところ仮想通貨の開発自体は技術者にとってはそれほど難易度の高いものではなく、遊びで作られたものや、詐欺目的で作られたものなど、実際には価値のないものも含めれば世の中には1500種類を超える仮想通貨が存在します。しかし、それらは単に存在しているだけでは価値を持たず、元祖であり基軸でもあるビットコインと比較して何らかの分野において優れ、何らかのビットコインにはない価値を世の中に提供できる必要があります。その部分をクリアできないアルトコインについては「ビットコインで十分」という形で淘汰されてしまいます。世の中の仕組みを変えうるアルトコインの開発の目的があり、かつそれにふさわしい技術を持っているものが、今後も価値を持っていきます。
②コミュニティが活発である
現在時価総額最大のビットコインですが、実は技術的には他の時価総額の高いアルトコインに比べ、優れているわけではありません。元祖として開発されているので、ある意味当然かつ仕方のない部分でもありますが。例えば、ビットコインから分裂した、ビットコインキャッシュは時価総額4位の有力なアルトコインですが、技術的には簡単に言うとビットコインの上位互換です。実際、分裂時、ビットコインは価値を失い、ビットコインキャッシュがそれに成り代わる、といった推測もされていました。実際にはビットコインの価値は下落せず、かつビットコインキャッシュの方もビットコインには及ばないながらも大きな価値を維持する形になりましたが、この勢力図を作り出したのは単なる技術競争ではなく、その通貨がどれだけの人に信じられているか、信じている人たちのコミュニティの活発さという要素が大きいです。技術的に優れているかどうか、という点も勿論重要なのですが、結局のところ仮想通貨は流通しなければ価値を持ちませんので、最終的に価値を決めるのはその通貨が信じられているということです。その通貨に使われている技術が実際に優れているかどうかよりも、優れていると信じられているかに重きが置かれる、と言い換えることも出来るかもしれません。上記特徴を踏まえたうえで、筆者が選ぶ注目のアルトコインを5つほど挙げてみます。ご参考程度にご活用ください。
1.イーサリアム(ETH)
現在時価総額第二位、アルトコインとしてはトップのシェアをもつイーサリアムはビットコインにはない、「スマートコントラクト」というブロックチェーン上での契約の保存と履行の機能を備えています。また、開発のプラットフォームとしても広く活用されており、新規ICOの仮想通貨が「イーサリアムベースで開発」などといわれているのをよく見かけるかもしれません。考案者である若きカリスマ、ヴィタリック・ブテリン氏の先見性の高さもさることながら、トヨタ自動車やマイクロソフトなど、世界に名だたる企業がイーサリアムに将来性を見出し、投資を行っています。有名なブロガーのイケダハヤト氏が大量に保有し、「ポジショントーク」と明記しながらもその将来性の高さを拡散していることから、日本でも情報感度の高い層に広くポジティブに認知されているアルトコインでもあります。
2.リップル(XRP)
リップルも日本でも非常に根強い人気を誇るアルトコインですが、他の時価総額の高いアルトコインにない特徴として、発行元が明確であり、中央集権的な特質を持つという点があります。これはビットコインが非中央集権化を理想として作られているのに対し、仮想通貨の本質ではないといった批判を浴びうる部分でもあるのですが、明確な発行元、運営元がある中で、「国際送金のプラットフォーム構築」という明確なビジョンを持ち、かつ、現段階で既に世界中の有力な金融機関からその価値を評価され、提携している実績もあります。また、検索エンジンを始めとする、世界最大手のインターネット企業、googleからもその将来性を評価され、投資を受けています。今後、生存競争が激しくなると思われる仮想通貨市場において、唯一無二の立ち位置を確立している点は大きな強みになります。
3.NEM(XEM)
コインチェックからの盗難騒動で、悪い意味で世間に認知されてしまったNEMですが、要因となったのはコインチェックの管理体制の方で、NEM自体に問題があったわけではありません。むしろ、mosaicの機能を活用して流出した通貨の追跡を行ったりと、最終的には(少なくとも現時点では)犯人特定には至らなかったものの、通貨の性能の高さをアピールする機会にもなりました。NEMは現時点で決済の処理能力がビットコインやイーサリアムなどの主要アルトコインと比較して遥かに優れているのみならず、今後大幅なアップデートが実装されることが既に決定しており、将来性の高いアルトコインであると言えます。加えて、多くの通貨の特徴である「マイニング」で新たに生成されるわけではなく、上限額まで既に発行済であり、ハーヴェスティングと呼ばれる手段でよりコミュニティに貢献しているメンバーが恩恵を受けることが出来る仕組みを取っています。これによりビットコインのマイニングに伴う諸問題をクリアしており、NEMのコミュニティも根強い支持者によって支えられています。
4.Dash(DASH)
「匿名性暗号通貨」と言われている通貨の代表格であるDashも、ビットコインと同様に、決済に特化したアルトコインです。ビットコインと比較し、優れた点が2点あります。1点目はビットコインに比べ、決済の処理速度が遥かに優れているという点です。ビットコインも現在決済手段として利用できる業態が少しずつ増えていますが、決済の処理に10分以上かかります。遠隔での決済・送金手段としても利用可能であることを考えると世の中の決済手段の一つとして考えると優秀かもしれませんが、その場での支払いの手段として用いるには少し不便です。Dashならば4秒で決済が完了しますので、十分あらゆるシーンで利用できます。もう一点は、ビットコインはお金の流れがブロックチェーン上に全て公開され、その気になればその記録から辿ることで、特定の個人の購買の記録や資産状況を把握できてしまうというリスクがあります。Dashは送信元の情報をブロックチェーンに記載しないことにより取引の匿名性を担保しています。半面その匿名性がコインチェック騒動の場合、流出したNEMの換金に使われたりといったリスクも見過ごせませんが、ビットコインの欠点を補える意味では将来性の高いアルトコインであると言えます。
5.モナーコイン(MONA)
日本発のアルトコインの代表格であるモナーコインは、2ちゃんねる(現5ちゃんねる)発のキャラクターであるモナーをモチーフとして開発されました。技術的にも大きな欠点のない、比較的優れたアルトコインでもあるのですが、このアルトコインの特筆すべき点は熱狂的なコミュニティ支持者が多いという点です。中には秋葉原の電光掲示板を使った広告を自費で行うほどのファンもいます。世界に誇るべき日本の文化の一つとして広く世界に認知されている「オタク文化」ですが、オタクの得意分野であるインターネットと、新しい物好きという特質がその象徴たる2ちゃんねるのキャラクターと相まって強固なコミュニティが形成されている部分が将来的に楽しみなアルトコインです。
判断軸をもって、自分のお気に入りの銘柄を
優良な注目アルトコイン、という視点で、見方の一例を示しながらそこに当てはまる筆者の注目アルトコインを挙げてみました。ただし、ここに書いてある内容は分析のほんの一部ですし、挙げたアルトコインは既に時価総額が大きなものが多く、将来的な成長率を考えるとポテンシャルの高いアルトコインはまだまだ眠っているはずです。(ついでに言うと、筆者は列挙しているアルトコインを多かれ少なかれ所有しています。仮想通貨関連の記事は全てポジショントークです。)単に挙がっているアルトコインを買うのではなく、自分なりに判断の軸を見つけ、投資先を選定していけることが、今後の仮想通貨市場で勝っていける投資家の条件になっていくでしょう。