「インフルエンサー」という単語は乃木坂46がレコード大賞を受賞したことで、一気に市民権を得た単語かもしれませんが、一般的にはTwitterやinstagramなどのSNS、さらにはYoutubeなどの動画発信といった場において、多くのファンを獲得しており、「発信力」を持った個人の事を指します。有名なところで言うと、起業家の堀江貴文さんや、お笑い芸人であり、絵本をwebで無料公開したことでも話題になった、キングコングの西野さん、さらに、少し界隈に詳しい人であれば、ブロガーのイケダハヤトさんも「インフルエンサー」と呼ばれる属性に該当します。

「これからは『個』の時代だ」などと言われますが、そんな時代の中で「発信力」は最重要な要素といっても過言ではなく、企業が個人の発信力に頼るといったインフルエンサーマーケティングも最早稀ではありません。そんなインフルエンサーを育成、支援することを目的に開発された、日本発の仮想通貨PARTRON(パトロン)。話題を集め、つい最近上場しましたが、残念ながら「ICO」の案件としては、失敗したと言わざるを得ない現状です。そんなPATRONの特徴や、将来性について、流行りの「ICO」にも言及しながら解説していきます。

仮想通貨PATRON(パトロン)の概要と特徴

日本発!インフルサー支援のための仮想通貨PATRPN仮想通貨PATRON(パトロン)の目的はインフルエンサーを共有するプラットフォームを構築することです。ひとえに「インフルエンサー」といっても、どのようなジャンルで影響力があるのか、どういった層のファンが多いのか、といった部分はそれぞれ。インフルエンサーマーケティングを行ってみたい広告主の企業にとって、誰に案件を依頼すれば最も効果的なのか、といった部分の判断が非常に難しい市場になっています。となると、登場するのは広告代理店。ですが、このようなケースで彼らが絡んでくると高額の中間マージンが入ってくるのは想像に難くないでしょう。

PATRONによって構築されたプラットフォームでは、企業とインフルエンサーが直接つながれることにより、中間マージンをなくし、双方に金銭的なメリットを出すことが出来ます。さらに、インフルエンサー同士がPATRONのプラットフォーム上で繋がることにより、シナジー効果を発揮していくことや、インフルエンサーの育成を行うことも目的としています。そのプラットフォーム上で使われる仮想通貨がPATRONです。

イーサリアムベースで開発され、発行枚数は4億枚となっています。詳しくは後述しますが、ICOで43億円の資金調達に成功したことでも注目を浴びています。PATRONの特徴として非常に面白いのは、インフルエンサーの「影響力」を数値化してブロックチェーン上に保存する、という仕組みを取ることです。影響力という漠然とした概念に指標を与えること、更に、そこにブロックチェーンの技術を活用する、といった点に目新しさを感じることが出来ます。

「数値化」が行われることにより、インフルエンサーはその影響力に応じた正当な対価を受け取りやすい環境になります。広告主の側も、予算や目的に応じて、適切なインフルエンサーを選ぶことが出来る上、インフルエンサーの「配信枠」を購入するといった形でその影響力をシェアリングエコノミーのような形で利用したり、場合によっては長期間の専属契約を行ったりといった形で柔軟な活用を行うことが出来るようになります。

仮想通貨PATRON(パトロン)の値動き

PATRON(パトロン)は上場したばかりであり、その動きをチャートで解説する意味が薄いので話題になっている「ICO割れ」について、ICOのそもそもの仕組みも含めて解説する形をとります。

●ICOとは何か
ICOとはInitial Coin Offeringの略で、仮想通貨を使った資金調達方法です。例えば今回のPATRONのような実現したい理念を掲げ、そこに共感する人、そのプロジェクトの将来性を評価し、先行投資を行いたい人から資金を集めます。資金は仮想通貨の開発やそのプロジェクトの推進などの費用として使われ、出資者はリターンとして、出資額に応じた量の仮想通貨を初期段階で受け取ります。

プロジェクトが成功し、多くの人がその仮想通貨を欲しがるようになると、初期に受け取っていた仮想通貨の価値が何倍、何十倍と膨れ上がり、出資者は莫大なリターンを得ることが出来るという仕組みです。段階を踏んで、徐々に値上げしていくことで、初期の出資者を優遇するケースも多いです。勿論、プロジェクトが失敗すればいかに初期に沢山コインを受け取っていたとしてもそれが無価値になってしまう可能性があるので、ICO案件は慎重に選ぶ必要があります。

似たような仕組みとして会社の株式を上場させる、「IPO」がありますが、その難易度は遥かに上です。ICOは理念やビジョン、そこに至るまでのロードマップはあれど、資金が足りないという企業や個人が資金を調達する方法として適したものであると言えます。ただ、本当にビジョンがあって実行されたICOが失敗してしまうのは、単なる投資の失敗なのでまだ諦めがつきますが、ICOはその手軽さから、詐欺のような案件も絶えないものとなります。

理念だけ掲げて資金を集めて逃げてしまったり、仮想通貨は配られたけれども、上場もせず、単なる無価値なデータでしかなかったりといった案件に悩まされる人も少なくないようです。

●ICO割れとは?何を意味するか?
PATRONは非常に注目されたICOであり、無事上場を果たしました。価格円レート換算で時期により15円~55円程度でした。結果としてICO後の価格は大暴落。現在の価格は最終販売価格の1/10を割っています。ICOの段階でPATRONを購入した人は含み損を抱えている状態、もしくは損切をしたというケースがほとんどなのではないでしょうか。このように上場後、ICOで販売された金額よりも低い水準に価格が落ち着いてしまっている状態を「ICO割れ」と呼びます。

重要なのはICOの価格は運営者、(もしくはそれに近い立ち位置)との直接取引、上場後の価格は市場の「需要と供給」によって定められているという違いを理解することです。ICO割れ、というのは少なくともその段階において、運営がICOで「まだ安い」と判断して販売した価格と比較して、市場がより低い価値をつけている、という状態です。

そもそも、ICOは将来性や発案者のビジョンを高く評価し、そこに先行投資を行う、という本来のあるべき姿が実現されている一方で、上場した直後に売りぬくことで短期的な利益を得る目的を持った投機的な資金も、どうしても少なからず入ってきます。上場直後に暴騰、その後、暴落、というのはICO案件においてはごく一般的な動きではあるのですが、ICO割れのままの水準になってしまっているのは、「ICO割れした価格」ですら買いたい人が少ないことを意味しています。

仮想通貨PATRON(パトロン)の将来性

日本発!インフルサー支援のための仮想通貨PATRPNPATRONは残念ながらICOとしては失敗したと言わざるを得ない案件です。しかし、勿論今後プロジェクトが成功し、市場がそれを評価するようになれば、現在大暴落している価格が急上昇し、ICOでコインを買って「ガチホ」していた出資者が莫大なリターンを受けられる可能性もあります。

インフルエンサーマーケティングは比較的新しい手法であり、まだ世間一般に浸透しきっていません。また、個人の影響力が数値化、マネタライズ出来る、といった発想も、まだ受け入れられる人が多い発想ではないかもしれません。しかし、SNS人口は2010年からの10年間にかけて約3倍になるともいわれ、今後さらなる成長を見せる市場です。

SNS市場の成長とともに、インフルエンサーの重要性や、その影響力が数値化できる発想が浸透するにあたり、PATRONのプラットフォームの価値が再認識され、通貨の価値も大きく上がることも期待できます。

仮想通貨とインフルエンサー。価値観の変化に人々が対応できるか

仮想通貨自体が、決済や送金の仕組みを変えうるポテンシャルを秘めており、その実現は今後、世間に受け入れられるかどうかにかかっていると言えます。PATRONはそれに輪をかけて個の影響力という従来、数値化やマネタライズが難しかった部分に価値を持たせようとしています。その点において、今回のICO割れが表すように、世間の認知が追いついておらず、それよりも話題性だけで投機的な売りが先行してしまった側面は否ません。ただ、個の発信力が武器になる考えは今後着実に浸透する可能性が高く、それが現実となったとき、PATRONの価値も向上しているかもしれません。今後の値動きに注目です。