仮想通貨売買をしている初心者の方も、1ヶ月を過ぎれば基本的な部分は慣れてくるでしょう。そして、仮想通貨投資だけでなく、仮想通貨を決済手段や送金などにも利用する方もいます。しかし、ビットコインのブロックチェーンの送金速度は他の仮想通貨よりも遅延していると、指摘されており初心者の方も仮想通貨の送金について課題が生じていると感じる場面があるでしょう。
ビットコインには、現在スケーラビリティ問題や少額決済の課題が残されています。これらは、全てブロックチェーンの、取引承認・記録作業とブロック容量などシステム面での問題により引き起こされています。仮想通貨投資家にも関わるビットコインの課題ですが、最近ライトニング・ネットワークという新たなシステムが考案されています。送金速度の向上や、手数料コストの低下などメリットがあるとされている、ライトニング・ネットワークの仕組みや特徴について紹介していきます。
ビットコインの課題
仮想通貨の基軸通貨として機能しているビットコインですが、様々な課題が残されています。仮想通貨投資家であれば聞いたことのある課題として、仮想通貨のスケーラビリティ問題があるでしょう。仮想通貨のスケーラビリティ問題とは、将来的にビットコイン取引量が増加し続けていくといずれ取引処理に限界がくるという話です。
ブロックチェーンには容量が定められており、年々増え続ける取引量に対していずれ限界を迎えるといわれています。2018年時点では、仮想通貨ビットコインのブロックチェーンは稼働していますが、元々データ容量が小さいので以前から指摘されていました。具体的には、ビットコインのブロックチェーンは1ブロック1MBで設定されており、決済や送金時の遅延を引き起こすとされています。また現時点でも、仮想通貨ビットコインの送金速度は、他の仮想通貨に比べて遅延気味なのでリップルなどの仮想通貨を使って送金している方もいます。
他にも現在のシステムでは、仮想通貨ビットコインに課題が生じている部分があります。それは、少額決済に向いていないという点です。ビットコインの最小売買単位は、0, 00000001BTCもしくは1satoshiという単位です。少額決済自体はできるのですが、トランザクション(取引承認)時に手数料が掛かり、その手数料が10円~20円と決済額よりも大きくなってしまいます。従って、手数料コストがネックとなり少額決済は、あまり普及していない状況でした。また、仮想通貨ビットコインのトランザクション時間は、1秒辺り約7取引とスピーディな取引に不向きなこともネックとなっています。
クレジットカードなどと比較して、少額決済の環境は整っているだけに、手数料や取引承認時間のコストが掛かることが課題となっています。ちなみにですが、少額決済に向いている商品・コンテンツというのは、動画などのデジタルコンテンツなどの1秒何円といった単位の支払いに適しています。
ライトニング・ネットワークの仕組み
前述のように、仮想通貨ビットコインのブロックチェーンには、課題があることが理解できたでしょう。そして、ライトニング・ネットワークとはこれらの課題を解決できるとして、仮想通貨投資家や通貨の開発チーム、企業などが注目しています。では、まずライトニング・ネットワークの仕組みについて紹介していきます。
ライトニング・ネットワークは、仮想通貨ビットコインで使用していたブロックチェーン以外でも仮想通貨の取引・決済・送金などが可能になる新しいネットワークの名称です。ライトニング・ネットワークの仕組みを簡単に説明する前に従来のブロックチェーンを説明します。例えば1~4の取引者がいるとします。1から順番に取引したとして、その取引記録は、ブロックチェーンに全て記録されます。従って、1回ごとに取引処理されるので容量過多による送金速度の遅延や、手数料コストの上昇に繋がっていました。
しかし、ライトニング・ネットワークでは、1~4の取引記録をブロックに記録させるのではなく、1~4の取引の結果だけを、マイナーに承認させてブロックに記録させます。従ってライトニング・ネットワークは、毎回の取引内容を処理する必要がなくなるだけでなく、送金速度の上昇や手数料コストの削減に繋がります。
このようなライトニング・ネットワークの仕組みを実現するためには、いくつかの新しいシステムが導入されています。まず、ライトニング・ネットワークのペイメントチェネルです。これは、スケーラビリティ問題を解決するために考えられた方法で、取引の最初と最後つまり結果のみをブロックチェーンに確定させます。そして、ライトニング・ネットワークの取引処理はブロックチェーンの外で実行・管理されるので、容量の削減や手数料が下がる効果に繋がっています。
ライトニング・ネットワークを分かりやすく説明すると、A・B・C・Dというユーザーがいるとします。そして、AとD間で取引を行った場合、ライトニング・ネットワークの取引処理は2者間で行われるのではなく、BとCでライトニング・ネットワークの取引処理が行われAとDにはその結果だけが残ります。これによって、負荷が減るだけでなく、高頻度の決済にも対応できます。また、BとCが取引処理を持ち逃げできないように、ライトニング・ネットワーク上にHTLCというシステムも組み込むことで指定された者以外が取引処理できないようになります。このように、ライトニング・ネットワークは従来とは全く違うシステムで構築されています。
ライトニング・ネットワークのメリット
ライトニング・ネットワークによって得られるメリットは、まず直接接続していないユーザー間の安全な送金手段が確立されます。前述のライトニング・ネットワークのペイメントチャネルのように、ライトニング・ネットワーク上で第三者を介することで取引処理の負荷を減らし、高頻度の取引に対応しようとしています。
次に、ライトニング・ネットワークはスケーラビリティ問題の解決により、ビットコインの容量限界の課題も解消できます。スケーラビリティ問題は、ブロックチェーンの容量の小ささと利用者増加によって、将来的にブロックチェーンの処理機能に限界がくるという話です。ライトニング・ネットワークを活用すれば、取引をしているユーザー間は、取引処理を記録しないのでトランザクションの数を減らすことができます。結果的には、長期的なブロックチェーンの利用が可能となるので、スケーラビリティ問題が解消されます。また、ライトニング・ネットワークによって送金速度も迅速になるので、ビットコインによる送金の遅延が気になっていた方にはライトニング・ネットワークはメリットといえます。
次にライトニング・ネットワークは、少額決済による課題解決に繋がる点があります。ビットコインのブロックチェーンは、少額決済を行うとトランザクションの手数料が決済金額を上回る問題がありました。しかし、ライトニング・ネットワークを導入すれば、スケーラビリティ問題が解決し、トランザクション数も減少するので手数料コストが下がります。ですので、ライトニング・ネットワークによって少額決済が実用的になります。
ライトニング・ネットワークのデメリット
続いて、ライトニング・ネットワーク導入に生じるデメリットを紹介します。1つ目は、ライトニング・ネットワークのペイメントチャネルを利用した際に、最短の取引仲介ネットワークが築けるかという問題があります。このシステムは、前述でも紹介したように取引処理に仲介者を立てる事によって、トランザクション数を減少させます。しかし、その仲介者が多数存在すればライトニング・ネットワークのシステム側は、間違って長いネットワークを経由してトランザクションしてしまうという懸念がされています。
次に、仮想通貨の根幹に関わる問題でもある、中央集権化という問題があります。ライトニング・ネットワークのペイメントチェネルを実用化させた場合、仲介を中心としたネットワーク形成に偏るという予測が出されています。従って、本来非中央集権であった仮想通貨のブロックチェーンが、中央集権化してしまう懸念事項が残されています。
ライトニング・ネットワークの現状
一部ではライトニング・ネットワークを取り入れた取引所などが開設されています。まだ、課題も多いシステムですが、ライトニング・ネットワークは改良の余地もありビットコインのスケーラビリティ問題の解決も期待されています。