仮想通貨市場は底値を切り上げながら徐々に回復の兆しを見せています。各取引所の新たな動きや新しい取引所が開設されたこと、などが要因と考えられます。海外の主要取引所が日本進出を発表するなど取引所関連のニュースが目立っています。SBIの仮想通貨取引所「SBIバーチャル・カレンシーズ」も始動しました。主なニュースの概要を知ることで、今後の動向を考察できるのではないでしょうか。

米最大手仮想通貨取引所「コインベース」が日本進出

アメリカの大手仮想通貨取引所コインベースが日本進出の意向を明らかにしました。金融庁への登録申請はまだですが、年内には申請を行う方針です。三菱UFJフィナンシャル・グループは、コインベースに約10億円の出資をしています。国内大手銀行と連携することで新たな仮想通貨投資家を呼び込むことになりそうです。

取り扱い通貨は主要通貨(ビットコイン・イーサリアム)を予定しています。三菱UFJ銀行の独自仮想通貨「MUFGコイン」の実証実験とともに仮想通貨・ブロックチェーンの社会進出を後押しするでしょう。この2者の連携は、三菱UFJの仮想通貨へのコミットメントを表しています。独自コインへの普及以外にも前向きな姿勢を示していることは、仮想通貨業界への強烈な後押しとなります。

また、コインベースはビットライセンスを取得しています。ビットライセンスとはニューヨーク州の仮想通貨交換事業ライセンスです。コインベース自体が、セキュリティに強いという特徴を持っています。さらに、現時点で米最大手の取引所であり、顧客数は2000万人と言われています。すでに顧客管理はノウハウとして確立しています。

しかし、申請から開設までは長い時間を要するでしょう。コインチェック事件以降、金融庁の規制は強く、厳格な態度を示しています。そのため、登録審査待ちは100社以上と言われています。コインベースが取引所として稼働するまでには、まだ時間がかかります。長期的なビジョンを持っての参入と考えられます。

HitBTCはサービス停止を発表も前向きな姿勢

コインベースの日本進出とSBIバーチャル・カレンシーズが取引所を新規開設ロンドンに拠点を置く仮想通貨取引所HitBTCは日本居住者向けサービス停止を発表しました。これは、日本の資金決済法に準拠するためで、一時的な措置ということです。HitBTCは日本からの撤退は考えておらず、前向きな姿勢で準備を進めています。

HitBTCは日本での仮想通貨交換業を行うためにライセンスの取得を目指しています。日本の大手法律事務所と連携して、日本法人の立ち上げ準備を開始したことも明らかにしました。あわせて、日本での雇用も進めており、企業買収の機会も探っているそうです

ですが、従来のHitBTCのサービスを日本で提供することはなさそうです。HitBTCの特徴は、草コインと呼ばれる時価総額の低い通貨の取り扱い量です。日本での営業を目指すにはこの点は不利に働きます。また、マネーロンダリングへの対策を、金融庁は強く要求しています。

既存の取引所(交換業者登録済)に対しても新たな要請を行うとされています。HitBTCの取引サービスも、海外のそれとは違う形で提供されることになりそうです。

現在では、日本居住者へサービス使用は停止予定です。サービス停止の発表は6月2日に行われており、その2週間後に停止されます。日本居住者は今ある資産は他に移動する必要があります。

日本の強い規制に対する各取引所の対応

日本の強い規制に順応しようとする取引所もあれば、日本から撤退する取引所もあります。世界最大手の取引所バイナンスはすでに日本市場から撤退しています。海外取引所のHuobiは現時点での日本での事業を行う意向がないことを明らかにしています。

コインベースやHitBTCは、「強い規制の下で大きな市場を開拓する」という方針をとっています。反対にバイナンスはマルタへ、Huobiは南米ブラジルに事務所を設立しています。日本からも海外進出の動きがあり、各取引所の動きはさまざまです。

この背景には、仮想通貨に対する規制の強さが国・地域によって統一されていないことがあげられます。また、それぞれの取引所の規模や資本の大きさにも由来します。取引所としてのサービスに加えて新たなサービス・プロジェクトを立ち上げる企業もあり、相性のよい場所をそれぞれが選んでいると言えます。

また、仮想通貨やブロックチェーン関連の事業を呼び込むことで経済発展を目論む国もあります。例えば、ブラジルは仮想通貨によって金融インフラ自体を整備するという狙いを持っています。反対にインドネシアでは、仮想通貨を商品として取り扱うことを決定するなど、発展国でも対応はさまざまです。

国内ではGMOがマイニング事業に大きな資本を投下しています。しかしマイニング自体は海外の電気代が安い国で行われており、実態は国境をまたいだ活動となっています。そのGMOは6月6日に自社開発のマイニングマシンを販売開始しました。初回出荷は10月末を目処としており、価格は約22万円です。

SBIバーチャル・カレンシーズは7月から本格始動

SBIの仮想通貨取引所「SBIバーチャル・カレンシーズ」も6月に入り、ついにオープンしました。本格指導は7月からということですが、現状の運営には疑念の声もあがっています。取り扱い通貨はリップルのみで販売所形式のみの運用ということです。期待値が高かっただけに、落胆の声も少なくありません。

しかし、リップルの価格は、比較的上昇傾向にあります。76〜77円辺りで反発を受けていますがSBIの今後の活動を予見して期待を呼んでいます。SBIにはすでに顧客が充分に存在するため、そこからの資金流入が見込めるとみられています。

SBIバーチャル・カレンシーズでは、リップルを購入する以外の選択肢がありません。SBIの顧客で仮想通貨取引に興味があれば、SBIを通して仮想通貨取引(リップルを購入する)を開始する、という見立てです。

日本金融庁の態度が鍵を握る

先進国である日本がブロックチェーン誘致国家になることは難しいのかもしれません。消費者保護の観点が強いことからICOに対しても前向きではありません。韓国ではICO合法化の動きもありますが、日本の規制はさらに強まっていくようです。

日本は規制を強くすることで仮想通貨・ブロックチェーンの発展に寄与しているともいます。日本国内で、新たに仮想通貨交換業を始めることは難しい反面、「金融庁認可」が、ジャパンプレミアムになっているともいえます。実際に、仮想通貨交換業者BitTradeはシンガポールの企業に買収されました。

今後は、社会への導入は発展途上国でおこない、日本は取引所の「品質保証を提供」するという形になるのるかもしれません。これは経済的なチャンスを逃がすことになります。しかし、日本だけでなく中国も仮想通貨事業の国外流出が問題視されており、ニューヨーク州でも同一の現象があります。

すでにインフラが整った先進国と新しい技術であるブロックチェーンは「切り替え」という面で相性が悪いといえます。あまりにも既存システムの設計が強固であり、既存の権力が大きすぎるからです。こうしたことから、日本では銀行を中心に普及が広まると予想されます。

仮想通貨市場は長く続いた下落相場から、徐々に復活の兆しを見せています。ただ、価格の上昇率に比べると注目すべきニュースは多いです。今まさに、土台が整えられている段階と言えます。常にニュースを追いかけていれば仮想通貨はこれから始まるということが容易に理解できるでしょう。

実際、ビットコインのノード数は増え続けています。市場全体の急激な価格上昇はまだ来ないと思われますが、確実に舞台が整いつつあることは確かです。日本の仮想通貨交換業者に対する方向性がはっきりと示されれば、市場の盛り上がりは一気に加速するでしょう。日本の仮想通貨市場は海外からも注目されており、参入したい企業は多く存在します。

大手のコインベースが、日本参入に踏み出したの象徴的な出来事だといえます。