仮想通貨の発行総額上位の10種類
世の中に、仮想通貨はいったい何種類あるのでしょう?さまざまな仮想通貨とその値動きを紹介しているサイト「コインキャップ(CoinCap)」では、10月13日時点で全世界878種類が収録されています。それ以外に、オンラインショップなどが発行する、まるでお店の金券、クーポン券のような「トークン」と呼ばれる小規模な通貨や、大学の構内だけで通用する、小さな町の中だけで通用するような通貨もあり、そんな小規模でローカルなものも含めれば、全世界で最低でも1000種類は超えるでしょう。とはいえ、仮想通貨の世界で名が通った大手は片手で数えられるほどしかありません。「コインキャップ」の発行総額ランキング上位10種は、次のようになっています。
1位 ビットコイン(単位:BTC)
2位 イーサリアム(単位:ETH)
3位 リップル(単位:XRP)
4位 ビットコインキャッシュ(単位:BCH)
5位 ライトコイン(単位:LTC)
6位 ダッシュ(単位:DASH)
7位 ネム(単位:XEM)
8位 ネオ(単位:NEO)
9位 モネロ(単位:XMR)
10位 IOTA(単位:MIOTA)
このうち、8位のNEOと10位のIOTA以外の8種は、日本語版がある取引所で、預金口座からの入金、仮想通貨への交換や、それを貯めて支払いに使う「サイフ」の役割を果たすアプリとして知られている「コインチェック(coincheck)」で取り扱っています。日本で設立されたので同じく日本語版がある取引所の「ビットフライヤー(bitFlyer)」で取り扱っているものは、ビットコイン、イーサリアム、ビットコインキャッシュの3種です。
1位のビットコインは世界で最初にできた仮想通貨で、その名前は日本でもすっかりおなじみです。今や世界の大手金融機関も注目している「ブロックチェーン」という技術を最初に応用して開発。最初に買い物に使われたのは7年前の2010年でした。2位のイーサリアムや、グーグルも出資している3位のリップルは、ビットコインに次ぐ2番手グループの大手の仮想通貨です。日本での知名度や実績は、最大手のビットコインには及ばないものの、それなりにあります。リップルには、米ドルとユーロなど通貨と通貨の間で橋渡しの役割を果たす「ブリッジ通貨」という大きな特徴があり、そのため日本の三大メガバンクなど世界の金融機関がリップルと提携しています。
「アルトコイン」もビットコインに近づきつつある
「仮想通貨の王者」で一時は仮想通貨の代名詞的存在だったビットコインに対し、イーサリアムなど2位以下は「もう一つの(オルタナティブな)」という意味で「アルトコイン」と呼ばれていましたが、今ではビットコインとの間の差はかなり縮まってきました。4位のビットコインキャッシュは、今年8月1日に1位のビットコインから分かれて誕生したばかりの通貨です。本拠地は中国で、8月1日に「1BTC=1BCH」の交換レートで分離・独立しました。分岐した後、円や米ドルとの交換レートはビットコインと異なる動きをしています。
そんな分岐のことを「ハードフォーク」と言いますが、同じように今後、「1対1」の交換レートでビットコインからの分離・独立が予定されている通貨には、10月25日予定の「ビットコインゴールド」、11月19日予定の「ビットコインSegWit2X」があります。
8月のビットコインキャッシュの分離・独立時には、新聞でも「ビットコインが分裂した」と大きく報じられましたが、内紛が起きて分裂が起きたわけではなく、ビットコインの利用者にはそれによる不都合は起きていません。言ってみれば、そば屋さんや和菓子屋さんの「のれん分け」のようなものなので、「分岐」と言ったほうが適切でしょう。その証拠に、ビットコインから分かれてもビットコインキャッシュはビットコインの「のれん(ブランド)」をつけて営業しています。もしビットコインとケンカ別れしていたら、そのブランドは使わせてもらえないでしょう。なお、2位のイーサリアムでも昨年6月、イーサリアムクラシック(単位:ETC)が分岐しています。そこでもイーサリアムのブランドを使っています。
この国に強い、これが専門など多彩な特徴
5位のライトコイン以下の仮想通貨は、3位までと比べると発行額も小さく、日本での知名度はまだまだ足りません。それでも7位のネムは日本人が経営に関わり、タイのバンコクに本社がある12位のオミセゴーのCEO(最高経営責任者)は日本人が務めています。10位のIOTAは、IT業界の注目分野であるIoT(モノのインターネット)と深く結びついているという特徴があります。「この国、地域に強い」という特徴がある通貨としては、8位のネオは仮想通貨の利用が爆発的に伸びている中国生まれの中国企業で、「中国のイーサリアム」とも呼ばれています。9位のモネロは韓国に強い通貨です。オミセゴー(単位:OMG)はタイなど東南アジア諸国に強みを持っています。通貨が米ドル、ユーロ、円、英ポンドのような、発行額の多い「メジャー通貨」ではない国は、仮想通貨や電子マネーのような、お札やコインを使わないキャッシュレスのしくみが浸透しやすく、スウェーデンのキャッシュレス社会はよく紹介されています。中国などは「にせ札の横行」という別の理由もあってキャッシュレス化が進みました。経済活動が活発で人口が多いアジア諸国でも、仮想通貨は今後有望です。
「交換レート固定」が特徴の仮想通貨もあります。アメリカのデザー(単位:USDT)の交換レートは「1USDT=1米ドル」で固定です。日本の三菱UFJフィナンシャルグループが試験運用中の「MUFGコイン」も「1MUFGコイン=1円」という固定レート制です。「仮想通貨は便利だと思うが、交換レートが激しく変動するのは困る」という人には、交換レートが固定の仮想通貨を使うという選択肢があります。「ある分野専門」という仮想通貨もあります。ドジーコイン(単位:DOGE)は、もっぱらチップとして寄付や募金に使われる通貨です。来年の平昌冬季五輪出場を目指すジャマイカのボブスレーチームが遠征費を集めるのに活躍しました。日本の「モナーコイン(単位:MONA)」は、「2ちゃんねる」のサイトから誕生しました。主に「2ちゃんねらー」の間でモノやサービスの取引に使われています。「モナー」の語源は「おまえモナー」という2ちゃんねる用語です。
日本も「仮想通貨大国」になれる可能性あり
仮想通貨というと、ランキング上位の通貨はみなITの本場アメリカ生まれで、利用が爆発的に伸びている国として中国が脚光を浴び、中国政府当局が仮想通貨の取引に規制をかけてニュースになっていますが、実は日本も、捨てたものではありません。そもそも仮想通貨と、その基本技術「ブロックチェーン」の概念を最初に発表した「サトシ・ナカモト(中本哲史)」氏は、正体不明ですが日本人だといわれています。コインキャップの最新データによると、世界の仮想通貨の取引額の約58%を日本が占めています。2014年1月に日本で設立され、リクルート、三菱UFJ、電通、SBIなど大手企業グループが揃って出資している取引所「ビットフライヤー」の取引量は現状、世界でトップです。
円はメジャー通貨で、治安が良く、にせ札事件もごく少ない日本は、スウェーデンや中国とは逆で、支払いでお札やコインを出すケースが非常に多い「現金社会」です。それでも世界有数の金融大国で、政府も大手金融機関も、金融とITを結びつけた「フィンテック」を強力に推進しています。仮想通貨は、そのフィンテックの一分野です。ですからうまくいけば、日本が世界の主導権を握れる可能性はあります。そうなるかどうかは今後、日本で仮想通貨払いのお店がどれだけ増えるか、一般の人の間で仮想通貨がどこまで理解され、誤解が解けるか、そして仮想通貨による支払いがどれだけ普及するかに、かかっているでしょう。