仮想通貨をモデルにしたICOは、オリジナルと同様にとても勢いがあり、世界中でICOのトークンの開発及び資金調達が行われています。その一方で、仮想通貨と同様に不安定である上に現状では詐欺を行うケースも数多いことがICOの特徴の一つであり、利益を一気に獲得できる可能性と隣り合わせな現状はまさにハイリスクハイリターンです。
とはいえ、詐欺に遭う人を増やすことはどこの国であっても避けなければならないことなので、現在はICOに関する規制がどんどんできてきており、今後ICOがどのようなことになっていくかについても注目が集まります。本稿では、ICOの規制が増える背景と日本国内と国外におけるICOの規制状況について説明していきます。
資金の持ち逃げが詐欺手法になっているICO
ICOはプロジェクトを開始する前から投資家にトークンの開発資金等を募ることになります。そして、実際にトークンセールが開始された後価値が上昇していけば、プロジェクトとしては成功です。これに加えて、ICOは仮想通貨取引所に上場することができます。オリジナルの仮想通貨として扱われてすでにトークンを持っている人はかなりの利益を得ることができますから、仮想通貨取引所に既にある銘柄よりも、ICOに投資した方が伸びしろという意味では上かも知れません。
しかし、少しの情報でチャートが乱高下するオリジナルの仮想通貨と比較しても、ICOは不安定なものであるといえます。何より仮想通貨取引所に上場するまではプロジェクトを運営している側でしか価値を持ちませんので、その点については大いに不安です。
また、ICOは詐欺が横行しているという点も危険です。投資をして利益が出なかったというだけならともかく、お金を騙し取られてしまうということは絶対に避けなければなりません。
前述のようにICOはプロジェクト前に資金を募るので、その時に集まった資金を持ち逃げするという詐欺がしやすいことが問題です。日本でも過去に怪しいとされたICOがトークンセール前に延期になったりと、他人事ではないということも考えておきましょう。
ICOの規制を強化する動きがある日本
現在日本では明確にICOを規制する法律自体は存在しません。しかし、2018年に入ってICOに関しては規制を強化するべきなのかという話題が金融庁の会合で出てきました。
議論の中には外国で開催しているICOに参加することを禁止するといったものや、海外の仮想通取引所の利用禁止まで囁かれるなど、問題は仮想通貨市場全体に及びました。現在海外のICOに参加したり仮想通貨取引所を利用している日本の投資家も多いので、この点については無視できない人が多いと考えられます。
一方で、ICOが仮想通貨市場の勢いを強めている要因の一つになっていることもまた事実であり、その点についても議論ではしっかりと話されています。仮想通貨やICOへの投資が日本国内で盛り上がっている以上、日本経済全体を盛り上げる要因にもなり得ますので、その点についても金融庁は考慮して規制について議論していくことが予想されます。
投資を行う立場としては、実際に規制が行われるのかという情報をしっかりと確認しておく必要があります。例えば、ICOの参加を考えている矢先に参加禁止の法整備がなされると投資はできませんから、現状で規制が敷かれていないかをチェックするなど、柔軟な対応が求められているのです。
欧米での仮想通貨の規制事情
日本では上記のようにICOに対する強い規制が敷かれるかもしれないという状況ですが、世界の仮想通貨市場ではICOに対してどのような見方になっているのでしょうか。ここからは、海外のICOへの規制について説明していきます。
日本と同様に仮想通貨市場が大きくなっているアメリカでは、ICOを有価証券と同様の扱いをしており、認可を得てプロジェクトを開始することが必須になっています。この背景には仮想通貨の投資型ファンドがハッキングによる流出事件を起こしてしまったということがあり、似たようなシステムで運用していくICOに関してもある程度厳しく見なければならないということです。
イギリスでは特に法規制を敷いていないものの、金融監督官庁が直々にICOの参加に対して注意喚起をしています。実際に法規制がなされるかどうかもまだまだ状況を見てということになっています。
つまり、イギリスのICOに対する見方は日本と同じようなものであり、今後イギリスの動きを日本が参考にする可能性がありますし、逆もまた然りです。その他の欧米の各国も、既存の法律にICOを当てはめて規制を行ったり、注意喚起にとどめて規制に関しては手探りといった状態になっています。イギリスに限らずICOに対して強い警戒はしていても実際の法規制に関しては議論の最中という日本と似ている状況であり、今後欧米諸国でICOの規制が強まる可能性も否定できません。
ICOを完全に禁止している中国と韓国
中国と韓国は日本や欧米とは違って、国内でのICOプロジェクトを完全に禁止するという法規制をしています。そのため、この2国からのICOというのは現在存在しません。中国では明確にICOが詐欺的なものばかりという認識をして、ICOを全面的に禁止することにしています。禁止を発表したのが2017年の9月であり、世界各国で仮想通貨やICOに関する警戒心が強まっていたころの発表でした。
韓国では、中国と足並みを揃えるように中国の法規制から数週間後にICOの全面禁止を発表しました。ただ韓国の企業が海外でICOプロジェクトを行うこと自体は問題なく、実際に韓国の企業が韓国国外でICOのプロジェクトを開始しています。
この2国に共通する点は、「いずれICOの規制を緩和する可能性がある」ということです。韓国ではブロックチェーン技術を積極的に利用することを目指す動きがあるため、ブロックチェーンを利用するICOに関しても規制を無くそうという動きが出てきています。中国はあくまで条件付きという前置きがあるもののICOの全面禁止を緩和する可能性について高官が言及しており、今後中国韓国でも投資家から注目を集めるICOのプロジェクトが出てくる可能性が残っているといえるでしょう。
国内外のICOの規制にしっかりと対応できるように
仮想通貨のチャートは世界で足並みを揃える形になっており、ICOに関しても個別の盛り上がりに関しては世界共通であるといえます。そのため、ICOに参加するなら日本はもちろんのこと海外諸国のICOの規制状況についてしっかりとチェックしていく必要があるでしょう。
規制が敷かれると投資に対して自由が利かなくなるということがありますから、歓迎しないこともありますが、ICOの場合は詐欺が横行している事情ゆえに心強い面もあります。そのため、安心できる市場で投資を行うことができる点については歓迎し、規制が敷かれた中で利益を出していくということを考えるといったことになるでしょう。
もちろん、規制が敷かれたからといって大丈夫であると安心せずに詐欺の可能性があるICOについてはしっかりと見極めていく必要があります。判断の一番の材料になるのはICOの企画書であるホワイトペーパーになるので、しっかりと読んでおかなければなりません。
海外のICOに参加することを検討している場合は、公開されているホワイトペーパーの言語の習得も必要です。現状公開されているICOのホワイトペーパーは英語や中国語が多いので、ICOに参加する以上はしっかりと勉強しておきましょう。