仮想通貨を保有する方が国内外で非常に増えてきました。ところが株式やFXのように長い歴史があるわけではなく法整備が追いついていなかった現状もあります。ただ、日本は諸外国に比べて仮想通貨に対する法整備は進んでいて平成29年(2017年)4月からは改正資金決済法が施行され様々な条項を盛り込み利用者が安全に取引できるよう定められています。仮想通貨で取引をするのであれば特に国内の法律をしっかりと理解する必要があります。何も知らずにいると今まで行っていたことが通用しなくなる可能性があるのです。それから取引で生じる税制も把握しなければなりません。そこで、今回は仮想通貨法について解説していきます。
仮想通貨法と改正資金決済法
冒頭で「改正資金決済法」と名前を出しましたが、文字通り、資金決済法が改正されたことを意味します。資金決済法は「資金決済に関する法律」のことで、早くからあった資金決済法は「資金決済に関する法律(平成二十一年法律五十九号)」が正式名称です。平成22年(2010年)4月1日から施行されています。そして、平成29年(2017年)4月1日に施行されたのは「資金決済に関する法律(平成二十八年法律六十二号)」となります。以前の資金決済法に仮想通貨に関する内容を盛り込んだ形で施行しています。こちらがいわゆる「改正資金決済法」となるわけです。新聞やテレビなどメディアでは便宜上、「改正資金決済法」と用いる場合が多いです。
資金決済法が成立した背景には電子マネーやクレジットカード、インターネットバンキングなど電子決済の普及がありました。そこに、仮想通貨の普及が重なる形で内容が追加されたと考えるといいでしょう。私たちは改正資金決済法と聞く場面が多いですが、改正資金決済法を「仮想通貨法」と呼ぶ場面もあります。ですから、仮想通貨法と改正資金決済法は同じ意味だと認識してください。仮想通貨法も法律ですから遵守する必要があり、違反すれば「最大3年間の懲役」、「最大300万円の罰金」が科せられます。特に取引所などの交換業者にとって知らなかったでは済まされないのです。
仮想通貨法の内容
仮想通貨法には3つの内容が盛り込まれています。「仮想通貨の定義」、「仮想通貨交換業者の定義」、「仮想通貨交換業者の規制」の3つです。それぞれを解説していきます。
まず、仮想通貨の定義が条文に明記されました。「1号仮想通貨」と「2号仮想通貨」に分けられ、1号仮想通貨を要約すると法定通貨と交換可能なデジタル通貨です。取引所で購入した通貨のほとんどは最終的に日本円やドルなどに交換できますから、多くの方が保有している通貨は1号仮想通貨と言えます。1号仮想通貨の要件にはモノやサービスの決済に使えることや不特定の人々に売買できること、ウォレットなどに電子的な記録が可能なもの、法定通貨建ての資産などがあります。ここで一つ疑問に思うのは「電子マネー」との違いではないでしょうか。電子マネーの場合は利用店舗が限られるなど不特定の人に使えませんし、日本円が形を変えたものですから法定通貨建ての資産ではありません。仮想通貨法の対象に電子マネーは入らないと考えてください。また、2号仮想通貨に分類されるのは1号仮想通貨と交換ができるものとされています。仮にビットコインを保有していたとして、それをイーサリアムに変えられる場合は2号仮想通貨に該当します。そう考えるとあらゆる通貨同士で交換ができますので、私たちが仮想通貨と想定するのは1号仮想通貨となります。
次は仮想通貨交換業者の定義ですが、次の3つの行為を事業として行う事業者を仮想通貨交換業者としています。「仮想通貨の売買または交換」、「仮想通貨の売買または交換の媒介、取次ぎまたは代理」、「二つの事項に関して利用者の金銭または仮想通貨を管理すること」と資金決済法2条7項に記されています。単に通貨を交換や売買するだけでは一般のユーザーですから、あくまでも事業として3つの行為を行なっているかになります。事業として行うとは反復、継続をして該当行為をしているかどうかです。どれかに該当するならば交換業者として登録しなければなりません。登録を怠ったり不正な登録をした場合には先ほど申した罰則が課せられます。
最後は仮想通貨交換業者の規制ですが、「登録時における財務規制」、「情報提供義務」、「分別管理義務」、「セキュリティ対策」、「監視規制」、「マネーロンダリング対策」に分けられます。交換業者として登録するには1000万円以上の資本金と純資産がマイナスではないことが前提になっています。間違った情報でユーザーが不利益を被らないよう取り扱う通貨の種類や価格変動によるリスクの説明、問い合わせなどサポート体制がどうなっているかなど逐一開示しなければなりません。預かった資産に関しては誰から預かっているのかもしっかりと判断できるようにし、セキュリティー体制も万全にする必要があります。犯罪防止のためマネーロンダリング対策も行うなど非常に多い規制を設置しています。それらの取り組みに不備や不足があれば国(金融庁など)からの指導にも応じ改善していくことになります。
仮想通貨法が出来上がった理由
仮想通貨に関しての内容が盛り込まれた仮想通貨法はつい最近できたわけですが、なぜ、出来上がったのか、もう少し深く解説していきます。一番大きな理由は当然、ユーザーを守ることです。詐欺行為によってお金を騙し取られる事象も少なくありません。その他、コインチェックの流出事件のように顧客の資産が意図せず盗まれる危険性を事前に回避しなければなりません。そのために法整備を行い交換業者には厳しいハードルを課しているわけです。もちろんそこには、マネーロンダリングやテロ資金の温床にならないよう交換業者や社会を守る目的も含まれます。
仮想通貨法では仮想通貨をモノではなく資産として認めている反面、国が管理できない仕組みがあります。例えばビットコインの根幹であるブロックチェーンはネットワークに参加しているユーザーによって管理する仕組みで、そこには国は一切関与できません。管理ができない以上、国として法整備を行い犯罪防止や利用者保護を務めなければならず、法律ができた理由も考えられます。今後も市場、それに関わる技術は日々変化しますので法律もそれに合わせて変化していくことでしょう。
仮想通貨利用者は税制度を理解する
仮想通貨法により仮想通貨は決済手段、財産的な価値があるものとして認められているため、以前の消費税から「所得税」に該当すると国税庁が見解を出しています。よって、売買や決済で得た利益を「雑所得(雑収入)」として確定申告する必要があります。具体的には仮想通貨で出た利益だけではなくその他の所得と合計した総合課税になります。課税方法は累進課税が適用され最大で45%の税率が設定されています。そこに住民税が一律10%上乗せされることになっています。
仮想通貨で1億円以上を稼いだ投資家を「億り人」と呼んでいいましたが、55%の税率になりますので半分以上は税金として支払うことになります。なお、課税対象になるのは利益確定を行った部分になります。仮に保有している通貨が暴騰して元手の何百倍になっても持っているだけならば課税対象にはなりません。
仮想通貨法の内容はユーザー保護の観点から仮想通貨や交換業者の定義をはっきりさせ、交換業者には厳しい規則を設けています。仮想通貨法に明記されていませんが利用者は税制についても念頭に入れ、しっかりと確定申告しなければいけません。