2017年は「仮想通貨元年」と呼ばれ国内では仮想通貨の取引が非常に盛んでした。中には「億り人(おくりびと)」と呼ばれ仮想通貨の投資だけで1億円以上を稼ぎ出した利用者も存在しました。2017年の年末はビットコインを始め多くの仮想通貨が暴騰し利益を出した方もいるのではないでしょうか。しかし、一転して2018年、仮想通貨市場は冷え込みを見せます。その理由は様々考えられますが、今後の仮想通貨市場は以前のような勢いを取り戻すのか解説していきます。
仮想通貨熱に沸いた2017年を振り返る
今後の仮想通貨市場を解説する前に2017年はどのような流れで仮想通貨市場が盛り上がったのか振り返ります。仮想通貨市場はアルトコインもビットコインで取引されることが多いため、ビットコインの価格を例えながら進めていきます。2017年当初、ビットコインの取引が非常に盛んだったのは中国で、それまで5万円程度で取引されていたビットコインは10万円まで価格が上昇します。
しかし、中国政府は2017年9月に仮想通貨の取引禁止を発表し多くの取引所が閉鎖、もしくは拠点を移すことになります。拍車をかけるかのように世界的な金融機関JPモルガンの最高経営責任者(CEO)はビットコインを詐欺だと発言し、ビットコインの価格は下がります。(55万円から6割減の22万円まで下落)
9月以降は10月、11月と大きなニュースはありませんでしたが日11月にはビットコイン価格が100万円の大台を突破し、この頃になるとメディアにもどんどん取り上げられるようになります。そして、ビットコインの価格上昇に注目した多くのユーザーが投機目的で仮想通貨市場に参入。ビットコインを取り上げると12月も乱高下を繰り返しますが過去最高値の220万円をマークし、アルトコインもビットコインの影響を受け価格の暴騰を見せた銘柄が続出でした。
2018年の幕開けと同時に仮想通貨市場の冷え込み
ビットコインが過去最高値を更新した12月17日から徐々に価格を下げていき1月16日には1日で30%も価格を下げました。価格が30%も下落したとなれば市場規模の縮小も甚大なものです。ビットコインの市場規模は80兆円から40兆円まで縮小したとみられています。市場の相場が下がった理由はいくつか考えられます。
まず、中国の法規制がさらに強化されたことです。1月17日に中国政府はビットコインの取引を全面的に禁止する方針があると報じました。中国国内ではインターネットを介した取引所での取引が禁じられ、取引所を介さない相対(あいたい)取引をしようと香港まで足を伸ばして売買を行なった投資家もいたとのこと。中国ではICOも禁止し、仮想通貨に関しては非常に厳しい態度を見せています。
さらに、韓国では1月11日に規制当局が仮想通貨の取引を全面的に禁止する発表を出します。この発表は仮想通貨市場にも大きな影響を与えたと言えます。韓国は国内の失業率の高さもあり仮想通貨で資産を増やそうと多くの投資家がいました。イーサリアムの10%ほど、リップルに関していうと約15%はウォンで取引されていましたので、韓国の法規制は仮想通貨市場に大きなダメージです。このニュースの後、韓国では取引所に口座を開設するハードルも上がりました。(実名確認入出金サービス)2月22日、インサイダー取引を防止するため、公務員に限って仮想通貨取引を全面的に禁止しています。
そうこうしている間に、日本の仮想通貨取引所であるコインチェックによるNEMの多額流出事件も影響し仮想通貨市場はどんどん冷え込むことになります。ビットコインの価格は2月に60万円台まで落ち込みます。その後、4月はドイツで仮想通貨を紙幣と応答に扱うニュースやイスラム国でのビットコイン容認など好転材料もあってか90万円台まで回復し、2018年6月上旬現在ビットコインは83万円ほどになっています。
仮想通貨市場も今後は市場規模を拡大する
一時の過熱ぶりからすればまだ物足りなさを感じる仮想通貨市場ですが、今後は市場規模を拡大する要素を含んでいます。日本国内の要素でいうと、コインチェックを買収したマネックスグループやヤフーと言ったネット証券の大手が仮想通貨業界に参入することで市場の活性化が期待できます。IT先進国で知られるインドのフィンテック企業がビットコインはイスラム法で許容されるとの取材結果により30分でビットコインの価格が10万円ほど値上がりしました。(2018年4月のこと)ですから、インターネットのテクノロジーを駆使する企業の取り組みや発言によって市場の相場は巻き返すことも難しくないと考えられます。
投資の幅を考えると2017年12月にシカゴ・マーカンタル取引所(CME)とシカゴ・オプション取引所(CBOE)の先物取引所に仮想通貨が上場しました。シカゴ・マーカンタル取引所は世界でも大規模な先物取引を行なう取引所ですから多くの投資家が仮想通貨市場に流れてくる可能性もあります。ビットコインの上場型投資信託(ETF)ができるようになれば生命保険会社や損保会社、銀行などの機関投資家の大きな資金が流れてくる可能性もあり市場規模の拡大が見込まれます。株式の投資やFXに比べるとまだまだ投資家の信頼を得ていなかった仮想通貨でしたが規模の大きな先物取引所への上場で注目度が上がったのは間違いないでしょう。
そして、多くの仮想通貨の基盤でもあるブロックチェーン技術の導入に着目している企業が増えているのも仮想通貨市場へ好影響を与えるでしょう。セキュリティ水準の高さや取引のしやすさなどブロックチェーン技術に金融機関や大企業が注目し導入の声をあげています。例えば、クレジットカードで知られるマスターカード、ウインドウズでおなじみのマイクロソフト、国内では東京海上日動などがブロックチェーンの導入を進めています。ブロックチェーンを使うニーズが広まると取引の決済には仮想通貨を使うことが考えられ、流通も広まるでしょう。もう少し身近な例をあげるとブロックチェーンを使ったゲームも広がりをみせています。多くはイーサリアムのブロックチェーンを使ったゲームでアイテムの購入などにもイーサリアムを使います。スマートフォンアプリのゲームのように当たり前になってくると、投機以外でも仮想通貨市場の拡大が図れます。
いろんな要素を考えると市場規模は拡大すると考えられますし、それに伴って特にメジャーな仮想通貨は価格を伸ばしていくでしょう。
ビットコインに変わりリップルが仮想通貨市場を牽引か
仮想通貨の王様と言っても過言ではなく、仮想通貨市場では時価総額は2位のイーサリアムに大きな差をつけています。しかし、日本人投資家にも絶大な人気を誇るリップル(通貨名称はXRP)は存在感を増しています。価格こそ6月初旬現在で70円ほどと低いですが、その技術に注目が集まっています。
リップルには銀行の送金システムを革命的にかえる機能があります。特に時間も手数料も莫大にかかる国際送金を「安く速く」行なう機能が搭載されているのです。その仕組みに賛同した金融機関が数多く提携しています。国内では三井住友銀行、みずほ銀行、三菱東京UFJ銀行といったメガバンクから地方銀行まで60行をこす銀行が提携。海外ではイングランド銀行やインドネシア銀行など中央銀行でさえリップルに提携をしています。最終的に提携する銀行同士間では手数料も格安で瞬時の送金が可能になります。
イーサリアムであれば第三者を介さずに契約行為ができるスマートコントラクト、ビットコインのブロックチェーン技術は様々な分野に応用が可能になりました。ここにきてリップルの送金機能がそれらに対抗している情勢も垣間見ることができます。時価総額では1位のビットコインの5分の1くらいですが、国家も注目する技術を持っているリップルには仮想通貨市場の中心的存在に躍り出る可能性もあります。