外国の企業からの利益を目的に法人税の軽減をする政策を打ち出している国や地域はいくつが存在しますが、現状では国を豊かにする政策という以前に、諸外国の法人が支払う税金を減らすことを第一に考えて利用しているということが問題視され、政策を打ち出している国や地域はタックスヘイブンと言われて問題になっています。
この問題は仮想通貨に関しても波及しており、「仮想通貨で得た利益にはたくさんの税率が掛かるから何とか支払う税金を減らしたい」と考えて、タックスヘイブンとされている国や地域にそれを求めるという例が急速に増えているのです。本稿では、仮想通貨とタックスヘイブンの問題点と、仮想通貨取引が盛んな日本におけるタックスヘイブンとの因果関係について説明していきます。
悪意をもってタックスヘイブンを利用する法人がある
タックスヘイブンとなっている国や地域に儲けを集めて税金を減らすという法人が多い現状ですが、それ以外もタックスヘイブンは利用されています。例えば、マネーロンダリングや粉飾決算に関してもタックスヘイブンの国や地域は舞台になっているのです。
タックスヘイブンは匿名性が高いことをメリットの一つにしてあげているのですが、法人はそれを利用して儲けがあると偽ったり、汚いお金を洗浄して口座に入れているのが現状です。このように悪意を持った人に上手く利用されているのがタックスヘイブンの最大の問題点といえるでしょう。
上記の税金の問題を含めてタックスヘイブンに対して多くの国が対策を行っていますが、その中には法人税の引き下げというものがあります。これに関しては「税金下げるからタックスヘイブンにペーパーカンパニーを置かないで」という弱気なものであり、どちらかというと法人側の思うつぼになっているといえるでしょう。
外国の政策に対して横槍を入れるのが難しい現状では、なかなかタックスヘイブンを何とかすることができないというのが現状です。このような問題が山積しているため、タックスヘイブンの「ヘイブン」が「ヘブン」と似ていることから「税金天国」とも揶揄されています。
意外とハードルの低いタックスヘイブン
ここまでは、タックスヘイブンの問題点について説明してきましたが、法人に対しては「ハードルの低さ」についても好まれています。タックスヘイブンは積立投資を行うことで利用することができるのですが、実は毎月3万円程度の支払いしか求められません。
口座作成に関しては連帯名義人が必要になるのですが、現地で知り合いをつくることで連帯名義人となってもらい、口座を作成する法人もあります。もちろん、日本においてもタックスヘイブンで口座を作成して節税を行っている人がいて問題視されたことがありました。
いろいろな制限こそあるものの莫大な利益を出している法人であれば、タックスヘイブンを利用するメリットは十分あるといえるでしょう。これはいろいろな事業を行っている人に関係のある話題であるため、当然仮想通貨関連事業を行っている人も関係ある話になってきます。仮想通貨関連事業も世界中で関心が高いものであるため、それによって利益を獲得していればタックスヘイブンに口座を作成したりペーパーカンパニーを設立する法人も増加することは間違いありません。
それでは、個人的に仮想通貨に投資している人はこのタックスヘイブンは関係あるのでしょうか。
詳しくは、後述で仮想通貨投資家とタックスヘイブンについて説明していきます。
非居住者となって仮想通貨の利益を一気に手中に?
タックスヘイブンを利用する人の中には、そもそも国から出てタックスヘイブンの国に住むという「非居住者」としての立場を確立する人もいます。一時期はこうなってしまうとタックスヘイブンでの税金支払いのみが義務になるので、実際にこのようにして税金を払わない生活を目論んだ法人がどんどん増えました。
現在は各国ともにいろいろな規制を敷いているもののまだまだ非居住者になるメリットは大きく、問題視されているものの一つであることは間違いありません。タックスヘイブンにペーパーカンパニーを設立するよりも本格的ですが、より確実に節税を目指しています。
仮想通貨市場が盛り上がっている現状では、上述のようにタックスヘイブンの現地の人の協力を受けることで、非居住者になることを目指している動きが出てきています。タックスヘイブンに住むことになればそこでの税制のもと仮想通貨に関する納税を行うので、元居た国と比べると相当な減税を行うことが可能です。
これは仮想通貨の利用者が世界全体を見渡してもかなり多い日本ではかなり大きな問題であり、税収入が少なくなるという危惧さえ出てきます。法人に関してはタックスヘイブンでの子会社にあたる税金を支払わせる法があるのでなんとかなっていますが、非居住者については「国外転出時課税制度」が敷かれたものの、完全に規制することは難しい状況です。
背景に仮想通貨の利益に対する高い税率が
日本国内の法律上「非居住者」と認められるに至るまでのハードルは高いので、現状ではあまり現実的ではないことかもしれません。それでも、仮想通貨で莫大な利益を得た人の場合は「移住した方がプラスだ」と考える可能性もあります。
その背景には仮想通貨での所得の分類を雑所得としたことが背景になります。雑所得は所得が多ければそれ程税率の上がり幅が大きいのが特徴で、利益が多ければそれ程払う税率が高くなることが払う側からすれば難しい問題になるのです。
最高の税率は(4000万円超えの雑所得を得た人)45%となっており、これに住民税の10%を加えると利益の半分以上を納税しなければならないということになります。この他にも赤字分の翌年繰り越しができないなど、仮想通貨の投資に関する納税の話題はシビアになっているのです。
実際にタックスヘイブンの現地に移住となるとそれに応じてかなりの出費になりますから、簡単に移住といっても全くお金が掛からないということではありません。しかし、たくさんの利益を仮想通貨を大量に取得している人の中にはかなりの納税額を避けるため、香港やシンガポールに移住してから法定通貨に替えることを目論んでいる人もいます。
今後の日本における仮想通貨とタックスヘイブン
税金を納めることは国民にとっての義務です。ですから、仮想通貨で利益を出した場合はしっかりと確定申告を行ってそれによって出された税金をしっかりと納めることに努めましょう。
それとは別に、仮想通貨の市場が現状よりも盛り上がっていけば、どのようにして扱っていくかということについても変わってくるかもしれません。特に税金に関しては現状とても税率が高いので、これに対して何らかの変化があるのか注目すべきポイントになるでしょう。
仮想通貨とタックスヘイブンの問題点に関しては前述の通り日本だけではなく、海外でも大きな懸案事項になっています。それだけに、海外の動きは日本にいる人も注目していかなければならないことです。
これから海外が仮想通貨の利益に対する税金をタックスヘイブンで支払おうとする人に対して規制を行う可能性もありますし、逆に歩み寄った政策を打ち出す可能性も十分あるでしょう。
日本においてもそれを参考にした政策を打ち出して、手探りの感がある仮想通貨市場を改良していく可能性があるので、投資を行う人もタックスヘイブンと仮想通貨の動きに関してはチェックしておいた方がいいです。