世界で活躍する「QRコード」は日本生まれ

仮想通貨と相性抜群のQRコード「仮想通貨で支払いができます」というお店に行って、スマホを使って仮想通貨で支払いをする時は、レジの近くに置いてある「QRコード」のボードを「QRコードリーダー」の機能がついたウォレットのアプリで撮って読み取り、支払う金額を数字キーで打ち込んで、ウォレットにあるその金額分の仮想通貨のデータをスマホの通信回線経由でお店に送ります。店員さんが送られてきた仮想通貨の金額をレジで確認してレシートを出したら、支払いはそれで終わります。難しいことは、何もありません。そのように、仮想通貨での支払いをとても簡単にしてくれるQRコードとは、いったいどんなものなのでしょうか?

白と黒のまだら模様のようなQRコードは1994年、日本で発明されました。それが今、全世界で仮想通貨での支払いに限らず、いろいろなものに使われています。開発したのは愛知県にあるデンソーという自動車部品メーカーのエンジニアで、もともとは自動車部品工場で、おなじみのすだれ模様のバーコードの代わりに、それより多くの情報をスピーディーに読み取れる「二次元コード」をつくろうと、生み出されました。QRとは英語の「クイック・レスポンス(Quick Response/すばやい反応)」の略です。

いま、全日空の国内線航空券の裏にはQRコードがついています。預ける荷物がなければ、空港の保安検査場にあるQRコードリーダーにそれを読み取らせて搭乗券を受け取れば、それでもう「搭乗手続完了」になります。搭乗口でもう一度QRコードを読み取らせれば、飛行機に乗れます。沖縄のモノレールではきっぷの裏がQRコードになりました。

現在販売中のカメラ付きのスマホのほとんど全部にQRコードリーダーのアプリがついています。QRコードを読み取ればネットでもっとくわしい情報が手に入ります。たとえば新製品のポスターや看板にはQRコードがついていて、街角でスマホをかざしてそれを読み取れば、商品のホームページに飛んでくわしい説明が読めたり、プレゼントの応募ができたりするようになっています。スポーツや音楽のイベントでは、チケットを購入した人に対して紙のチケットの代わりにQRコードをそのスマホに送り、画面のQRコードを入場ゲートのQRコードリーダーで読み取らせれば入場ができる「チケットレス入場」も行われています。

QRコードを読み取れるスマホは世界で爆発的に普及したので、QRコードは仮想通貨の支払いの際にも「標準的なシステム」として利用されるようになりました。もちろん、20ミリ×20ミリの小さなスペースに、バーコードよりも圧倒的に多い情報量(英数字4000文字分、漢字1800字分)を盛り込める、読み取りは一瞬で時間がかからない、データ復元機能や誤り訂正機能があるので汚れや欠けによる誤動作がほとんど起きない、コードを簡単に印刷できるなど、日本人が開発したすぐれた特徴があったからこそ、これだけ普及したとも言えます。

「QRコード」は誰でも簡単に作れる

現在、QRコードはデンソーの子会社デンソーウェーブの登録商標ですが、誰でも使用料無料で作成、利用することができます。プリンターがあれば、パソコンの「QRコード作成用フリーソフト」やスマホの「QRコード作成アプリ」でQRコードを作って、それを簡単に印刷することができます。そうやって「自分のQRコード」を作って渡せば、QRコードを読み取れば自分のホームページに飛べるようにすることも、メールアドレスを知らせて自分宛の電子メールを簡単に出せるようにすることも、LINEのようなSNSで自分とコミュニケーションが簡単にとれるようにすることもできます。他人に見られないようにメッセージを相手に送ることも、自分の銀行の口座番号を知らせて、送金を頼むこともできます。
名刺にQRコードを印刷している人もいますし、自分のホームページにQRコードを表示させている人もいます。

QRコードでビットコインを送金する方法

仮想通貨で買物をする時にお世話になる「QRコード」が秘めている可能性さて、仮想通貨とQRコードは、実はとても相性のいい組み合わせです。ウォレットのアプリにはQRコードを読み込んだり、それをスマホの画面に表示させたり、プリンターに印刷したりできる機能がついています。たとえばウォレットのアプリでビットコインを送金したい時は、送りたい相手のQRコードを読み取った後、送りたいビットコインの金額を数字キーで入力すれば相手に送金することができます。「ビットコイン支払可」のお店での支払いは、そうやって行われています。なお、ビットコインでコーヒー代のような少額の支払いは0.001BTCなど小数点以下3ケタ、4ケタになるので、ケタを間違えないようご注意ください。

逆に、ウォレットのアプリでビットコインのお金を受け取りたい時は、ビットコイン受取用の自分のQRコードを作成して、それを相手に知らせるだけでいいのです。QRコードで送るのは、自分の「ビットコインアドレス」の情報です。QRコードを「作成する」と言っても、ウォレットアプリの中の「ビットコイン受取」のページを開くと、自動的にスマホ画面にQRコードがあらわれます。すでに作成されています。

送金してほしい相手が自分のすぐそばにいて、スマホを持っていたら、自分のスマホを見せて、QRコードを相手のウォレットアプリやQRコードリーダーで読み取ってもらいます。すると、相手のウォレットの送金先アドレス欄に、あなたのビットコインアドレスが自動的に入力されています。あとは相手に数字キーで金額を入れてもらって、送金のボタンを押してもらうと、それだけでビットコインの送金が受け取れます。なお、QRコードには送金額の情報も入れることもできるのいで、その場合、相手は金額を確認して送信ボタンを押すだけになります。

QRコードはスマホ画面でも、紙でも見せることができます。ウォレットのアプリの「ビットコイン受取」のページにあらわれたQRコードを、印刷機能でプリンターで印刷し、QRコードが印刷されたその紙を渡します。相手のウォレットのアプリやQRコードリーダーで紙の上のQRコードを読み取ってもらえば、あとは同じです。「ビットコイン支払可」のお店のレジの横に置いてあるQRコードの紙(ボード)はたいてい、そうやってつくられています。

お店では、スマホの代わりにレジの機械で店員さんがビットコインでの支払いを確認していますが、個人経営の居酒屋や料理店では、お勘定場のそばにQRコードの紙が貼ってあったり、メニューにQRコードの紙がはさまっていたりします。お客さんはそれをスマホのカメラで読み取って、ビットコインなど仮想通貨での支払いができます。お勘定の時にお店のご主人や奥さんが自分のスマホを取り出してビットコインの受け取りを確認していることがありますが、そんなお店では、仮想通貨払いの導入費用はほとんどゼロです。

相手が遠方にいたら、電子メールなどで相手のスマホに自分のビットコインアドレスや送金額のデータを送ります。でも、たとえば結婚祝いなら、ご祝儀のお金に祝電代わりの肉声のメッセージを同封したQRコードを印刷した紙を封書で送るというのもまた、面白いかもしれません。

仮想通貨とQRコードでアイデアが広がる

ビットコインをはじめ仮想通貨は全世界共通で使われています。グローバルな活動をしている団体や人にはそれだけ有利な通貨です。「ユーチューバー」という言葉が流行語になりましたが、ユーチューブで音楽の演奏やダンスのパフォーマンス、何かの妙技やびっくり映像を見せたい人は、最後の画面で自分のウォレットにビットコインで送金するためのQRコードを表示させれば、気に入った人は、全世界どこからでも格安の手数料で、大道芸人の「投げ銭」やチップのようなお金をあげることができます。

訪日外国人の間で人気の日本のあるお寿司屋さんでは、寿司職人が顔写真とローマ字書きの名前とビットコインのQRコードが印刷されたカードをお客さんに配っていて、寿司がおいしいとか会話が楽しいと感じたお客さんは、ビットコインでこっそりチップを支払えるようにしています。チップの習慣がない日本でも、気に入った寿司職人に直接チップをあげられると、外国人の間で好評です。寿司職人にとってもやりがいとお金の一挙両得で、誰がチップをいくらもらったかは、仲間の職人にはわかりません。

このように、仮想通貨とQRコードの組み合わせは、社会の中で、ユニークなアイデアや新しいビジネスがいろいろと出てくる可能性を秘めています。