Segwit2Xという言葉をご存知でしょうか?ビットコインなどの仮想通貨を保有し、売買などの取引に参加されている方であれば詳細はともかくとして、言葉について一度は耳にしたことがあるかと思います。

ビットコインは2009年に初めての取引が開始されてから年々取引量が拡大し、ビットコインに追従するようにさまざまなアルトコインと呼ばれる仮想通貨の種類も増え、仮想通貨市場は発展の一途をたどっています。この日本でも、2017年4月に施行された「改正資金決済法」により仮想通貨も国が認める決済手段となったことを契機にビットコインを中心に、仮想通貨市場に参入する企業や個人投資家が飛躍的に増えました。

このような仮想通貨を用いた経済活動の急速な発展に伴って生じている問題に「スケーラビリティ」と呼ばれるブロックチェーン技術に関する課題が、グローバルな仮想通貨市場において、にわかにクローズアップされています。Segwit2Xとは、このスケーラビリティといったブロックチェーン技術を用いた経済活動における課題の解決策のひとつとなるのですが、今回はこのSegwit2Xにフォーカスをしながら、ビットコインをめぐる現在の問題点と今後の展望について解説をします。

Segwit2xとは

ビットコインとsegwit2x前段で概要について触れましたが、改めて「Segwit2X」というものは「スケーラビリティ問題」と呼ばれるビットコインの取引処理能力の限界に対する解決方法のひとつになります。

この「スケーラビリティ」という問題を端的に説明すると、ビットコインの根幹をなすシステムである「ブロックチェーン」は、実施された取引内容を「ブロック」に格納して、それをいくつものつながれた「チェーン」のように連結させて管理する仕組みになっているのですが、1つ1つのブロックに格納できるデータ容量には制限があるため、取引量が拡大するにつれてデータ量が多くなり、従来のデータ容量では対応できなくなってきた問題を「スケーラビリティ」と称しています。

この問題を解決するために、いくつもの提案がなされているのですが、そのひとつが「Segwit2x」となります。Segwit2Xがどのような解決方法であるか、簡単に説明をしておくと

●ブロックに格納するデータを圧縮して、格納できるデータ容量を2倍以上にする
●ブロックそのもののサイズアップを図り、より多くの取引データを格納できるようにする

簡単に内容をまとめると上記2つのポイントに集約されます。

もともとのスケーラビリティと呼ばれる、ブロックチェーンが抱えるデータ容量に対する課題に対して、格納データの圧縮とブロックそのものの容量アップという解決策は非常に合理的な内容と思えるのですが、この解決策をめぐってはいくつかの議論が展開されており、現在でも完全な解決はされていません。

そこには、ビットコインの運営上の特徴とそれに伴う問題点が強く関連をしています。

ビットコインの運営方法に関する特徴と問題点

ビットコインで生じたスケーラビリティの問題については、ブロックチェーンの容量拡大やデータ圧縮など運営や管理をしているシステムの改良などで簡単に対応ができそうなものです。

前段で紹介したように、具体的なアイデアとしてSegwit2xなども提案されており、シンプルに解決へと向かいそうなものですが、実際にはそのようには進んでおりません。なぜでしょうか?そこにはビットコインならではの運営上の特徴がもたらす弊害が存在しています。

ビットコインには特定の運営企業や管理者は存在しません。周知のこととなりますが、そもそもビットコインというシステムは「サトシナカモト」と称する人物が2009年に発表したとされている論文がもととなって構築されたオープンソースのシステムです。

実際の運営と管理は、「コア開発者」と呼ばれるビットコインのシステムプロトコルを作成している数名のグループと、各ブロックに取引データを入力する「マイナー」によって行われています。彼らの関係性は対等で、特定個人やグループの意見や意思によってビットコイン全体としての意思決定がなされることはなく、あくまでもコア開発者やマイナー、そして関連する関係者全体の意思を民主的な方法で採択していくシステムをとっています。

通常の法定通貨や運営主体を持つ仮想通貨などの場合には、その運営管理における意思決定はしかるべき執行機関によって決定がなされるため、意思決定のプロセスにおいてさまざまな議論がなされ、反対意見などがあったとしても、最終的には意思統一が図られて、行動への転換が速やかに行われます。

ですがビットコインにおいては、このような意思決定に関する執行機関が存在しないため、それぞれの思惑や意思によって全体の意思統一が難しく、このスケーラビリティに対する解決策についても意見が割れてしまい、副次的な問題が発生するに至っているのです。

その大きな問題のひとつが、次にあげる「ハードフォーク」と呼ばれるビットコインの分裂問題です。

ビットコインの改善をめぐるハードフォーク(分裂)について

「フォーク」という英語は「割れる」という意味で、ビットコインに関しては、通貨としての分裂を意味しています。スケーラビリティの問題が生じたことにより、これまでのブロックチェーンシステムに何らかの改善を加えなければいけないことは、全ての関係者にとって一致した見解でした。ですが、その解決方法について意見が分裂し、ついにはビットコインの運営に関する分裂にまで及んでいるのがビットコインをめぐるフォーク(分裂)問題です。

ビットコインのフォークについては、「ソフトフォーク」と「ハードフォーク」の2種類があります。「ソフトフォーク」とは、従来のビットコインシステムとの互換性を保ちながらスケーラビリティの問題に対応するという解決策を際しています。具体的には「Segwit」と呼ばれるコア開発者のグループが提案をしている方法です。

これに対して「ハードフォーク」とは、従来のビットコインとは互換性を持たない、新しいシステムを構築する方法となります。つまり、ビットコインとは完全に違った新しい通貨が誕生することとなり、このことが投資家を巻き込んで大きな話題となっています。「Segwit2x」はこちらのハードフォークに属する解決方法で、マイナーが強く提案している方法です。

次の段において、Segwitの特徴について詳しく解説をします。

Segwitとは

ビットコインが抱えるハードフォーク問題と今後の展望について「Segwit」とは「Segregated Witness」の略で、直訳をすると「署名の分離」といった意味となります。従来のビットコインブロックチェーンのブロックに収められていた情報のなかから、通常のクライアントが使用することがない電子署名の情報をカットすることで、ブロックに格納するデータ容量を25%まで圧縮することを指します。

この方法を推進するのがコア開発者グループですが、マイナーたちはこの方法には賛同せず、「ブロックのサイズアップ」を提案しているのです。ビットコインにおけるブロックチェーンの各ブロック容量は1メガバイトとなっていますが、これを2メガ・8メガ・16メガへと拡張しようというのがマイナーたちの提案です。

この方法をマイナーが提案する理由は、ブロックサイズが大きくなると、より多くの取引データを入力することが可能となるため、彼らが手にするマイニング報酬が増えることとなります。さらに、ブロックサイズが大きくなり処理データ量が増えると、より高額で高性能な処理用PCが必要となるため、このような超ハイスペックPCを作成・保有し、取り扱うことができる一部のマイナーが自分たちに有利な環境を作ることができるからです。

このような一部マイナーによる寡占状態が発生することを防ぎたいコア開発者と自分たちの利益拡大を目論むマイナーとの間で意見分裂が発生しているのが現状となります。

復活するのか?Segwit2xの今後に注目

Segwit2xは、ブロックのサイズアップを望むマイナーたちが、コア開発者との折り合いをつけるべく提案をした折衷案のようなもので、最初にデータ圧縮を行い、通貨分裂を一旦回避する。
その後に、改めてブロックサイズを2メガまで拡張を行い、新たな通貨を誕生させるというもので、当初はこの案が採用となり2017年11月に実装されることになっていました。

しかし、実際には2017年11月にSegwit2xは実装されておらず、今後のスケジュールなどについても発表されておりません。その間に2017年8月には「ビットコインキャッシュ(BCC)」がビットコインから分裂をして誕生するなど、中国の大手マイナーグループはハードフォークを実行しています。

今後、どのような展開を見せていくのか目が離せない状況に変わりはありませんが、それぞれの通貨に対する特徴を理解して、的確な投資機会を見逃さないことと、リスクヘッジを行うことが重要となります。