ICOが有価証券で有るか否かは、非常に重要です。SEC高官がイーサリアムは有価証券ではないとの見解を示しました。どのような仮想通貨が通貨として捉え得るかに一定の基準が示されたと言えます。また、コインベースにイーサリアムクラシックが上場しました。コインベースが、イーサリアムクラシックを上場させたことの一因として、非中央集権的であることを挙げています。

さらに、SECの通貨の基準として、ユーティリティであることも重要な要素として上げられています。リップルは中央集権的であると揶揄されることもありますが、独自のスマートコントラクトを立ち上げるなどユーティリティを高め続けています。

日本では、コインハイブを使用したマイニングを違法行為であるとして摘発・検挙に至りました。仮想通貨と既存の規制や法的解釈が、今後どのように兼ね合いを取っていくのか。象徴的なニュースが相次ぎました。

ビットコインは通貨、キーワードは非中央集権とユーティリティ

まず確認しておくべきことは、SECの見解としては、「通貨とは、ビットコインのようなものである。」ということです。ビットコインのようなものとは、どのようなものでしょうか。仮想通貨においては、「特定の発行者が存在しない」ということが、一つ重要な点になります。通貨の供給量が増えても利益を受け取る主体が存在しません。新たなビットコインはシステム内部のプログラムとアルゴリズムが供給します。

ビットコインと同じようなアルゴリズムで、既に稼働している仮想通貨には、利益を受け取る発行主体が存在しません。初期の段階でICOを行い、資金調達をしても、新たな通貨発行益は存在しないことになります。この段階まで成長した経済圏を、既に作り得ていれば、「非中央集権」で「ユーティリティ」がある通貨と言えます。

通貨発行から、その後の開発をどのように進め、現在どの段階にあるのかかが、有価証券であるかどうかのポイントになります。時間性の中での、曖昧な判断になります。だからこそ判断が難しく、既存の制度と、どう折り合いをつけるかに注目が集まります。現段階で通貨としての条件を満たしていても、初期の資金調達(ICO)が違法であったかの判断は、保留されています。

イーサリアムクラシックがコインベース上場決定

SECの高官から、イーサリアムについての見解が発表されました。「イーサリアムは有価証券ではない。」とのことですが、それは現状でのイーサリアムが、そうであるということです。明確な判断はまだなされていません。リップルに関しては名言されていないようです。

コインベースにイーサリアムクラシックの上場が発表されましたが、少なからず驚きの声があるようです。他の時価総額の高い仮想通貨ではなく、コインベースがイーサリアムクラシックを選んだ理由に非中央集権であることが重要なポイントであるようです。過去にはリップルの上場が噂されましたが、今回もリップルは上場しませんでした。

しかし、コインベースは各種ライセンスを獲得し有価証券を扱うための準備を進めているようです。入念な準備を行い、最終的には完全な形でリップルが上場する可能性もあります。資本の大きい取引所ならではの、画策を練っているのかもしれません。ビットコイン以外の仮想通貨が、どのような判定を受けるのかと合わせて、注目すべきでしょう。

また、コインチェックは匿名系通貨の取り扱い中止を決定していましたが、新たにオーガーの取り扱いも中止すると発表しました。各取引所の規制局側・法律への対応によって今後の仮想通貨業界の下地が作られていくのでしょう。

オーガーに関しては、システムそのものの中に、法への抵触が危惧される部分がありコインチェックは取り扱いを断念したようです。新しいシステムと法との兼ね合いにおいて、過渡期的状況と言えるでしょう。

リップルが独自の新スマートコントラクト立ち上げ

リップルが新たなスマートコントラクト「Codius」を立ち上げました。スマートコントラクトと言えばイーサリアムですが、リップルの新たなスマートコントラクトは、イーサリアムの現状の課題を解決する、スケールの大きいビジョンを持っているようです。端的に説明すると、それぞれのブロックチェーン上でのデータをCodius上で共有できるとのことです。さらに、法定通貨や外部APIとの連動も可能であり、設立者のStefan Thomas氏によれば、Codiusは「ブロックチェーンのためのOS」です。

リップルは価値のインターネットを理念とし、これまでも独自の活動を展開してきました。大手銀行から地方銀行まで、多くの銀行と提携しています。銀行機関は既存の権力の象徴でもあります。さらに、リップルはあくまで企業であり、自社開発されたシステム上で運用されるトークンがxrp(リップル)です。果たして、リップルは仮想通貨なのか。暗号通貨業界からは批判を受け、現行の法律の観点からしても掴み所のない存在です。

リップルの歴史は長く、ビットコインの後追いとして生まれたプロジェクトではありません。そもそも、リップル社の企業としての理念があり、ビットコインのシステム(つまり、ブロックチェーン)を参考にして、今の形になっています。そのリップルが、新たにスマートコントラクトを立ち上げたというのは注目に値します。イーサリアムというスマートコントラクトの実例を観察・検証しながら、開発したCodiusがどれ程のポテンシャルを秘めているのかは未知数です。

リップルは、既存の経済母体だけでなく、仮想通貨コミュニティをも包含した金融インフラになるつもりかもしれません。

広告提示と強制マイニングの違いは?

仮想通貨のキーワードは「非中央集権」と「ユーティリティ」仮想通貨自体への法規制もさることながら、マイナー・マイニングに対する法の解釈も問われています。日本ではCoinhive利用者が16人摘発されました。Coinhiveとは、仮想通貨Moneroを発掘(マイニング)するためのプログラムです。マイナーが提供するサイトやブログを、閲覧した利用者のCPUパワーを自動的にマイニングに利用します。もちろん、マイニングされた仮想通貨はサイトオーナーの元に回収されます。

これが違法行為に当たるかどうかは論議が別れ、特に広告収入と比較して、どれほど違法性があるかは検討の余地が有ります。マイニングに、自身の認識なく加担していることがサイト利用者に視覚化されていないことが問題とされていますが、広告閲覧によってサイトオーナーが収益を得ていることを知っている方が、どれほどいるのでしょうか?

十分に法整備が整えられていない中での、一斉摘発となりましたが、今後Webサービスと収益化についての議論は続いていくでしょう。中央に発行主体の存在しない仮想通貨の安全性を誰が担保するのかは、マイニングによる多量の電気消費と併せて考えられるべき問題です。通貨という社会インフラを分散的にどう管理するのかについては、多くの人の認識が必要になります。

先物取引と市場の動きが直結

仮想通貨業界にとって重大なニュースが多くある中で市場は停滞しています。これは、新規参入者が少ないことが原因かもしれません。米調査会社ファンドストラッドの調査によると、「ビットコインの価格はCBOEの先物期限に強く影響を受けている。」とのことです。つまり、ショート(売り)でポジションを取ったトレーダーが一斉にポジションを解消(ビットコインを売る)することで急激な価格下落が起きるという見解です。

さらに、現物で所有するビットコインも大量に売ってしまえば、価格が下がり、より大きな利益を上げることができます。去年の年末には市場参加者が激増し、ショートポジションでの売りを、上回る買いが入ったことで、一時200万を超える価格帯に突入したとされています。現状では、トレーダーの売りを上回る、買い(新規参入者の買い)が減少しているのでしょう。また、長期保有者よりも短期売買に比重をかけるトレーダーが増えたことで価格を支える絶対数が減っているとの見方もあります。

コインチェック再開の兆しは、オーガーがラインナップから消えたことで、さらに強まりました。SBIVC本格始動に向けてビットコインキャッシュとビットコインのJPYペアの上場もアナウンスされました。SBIの株価は上がっており、間接的に仮想通貨市場の盛り上がりが予兆されているのかもしれません。トレーダーは、仮想通貨市場攻勢の兆しを見逃さずに、次のショートポジション解消のタイミングに注目するのも良いでしょう。