近年、仮想通貨やICOに有名な芸能人が参画し、話題になるケースがあります。最も有名なのはGACKT氏が広告塔となったICO「SPINDLE」。賛否両論で、詐欺だという声も上がる中、堂々の上場もつかの間、大幅なICO割れを起こし、今後の動向が見離せないコインでもあります。
そんな中、GACKT氏ほど世間一般には認知されていないですが、その界隈では知らない人はいない伝説の「AV男優」加藤鷹氏も、仮想通貨業界に参入しています。プロジェクトは「AVH」(アニメーションビデオキャッシュ)です。どのような仮想通貨なのか、話題性だけが先行し、SPINDLEの二の舞に張らなないか、長期的に将来性はあるのか、考察していきます。
加藤鷹とは
ご存じない方のために、簡単に加藤鷹氏についても触れておきます。加藤鷹氏は秋田県出身の元AV男優。上京してきた際はアダルト業界といっても撮影スタッフや営業として関わっていましたが、男優に転身。累計1万5000本以上の作品に出演し、「ゴッドフィンガー」といった異名も持つ「日本一有名なAV男優」です。59歳となった現在、AV男優としては引退していますが、男優時代に培った知名度を生かし、現在もタレント活動を行っています。今回の仮想通貨もその活動の一環なのでしょうか?
AVH (アニメーションビデオキャッシュ)の概要
AVH (アニメーションビデオキャッシュ)は読んで名の通り、アダルト産業の取引プラットフォームの構築を目的としています。このプラットフォーム上でアダルトコンテンツのストリーミング視聴や購入、女優とのコミュニケーションと取るといったことが可能になります。その際に仮想通貨としてAVHを支払い手段として用いることが出来ます。
アダルトグッズの政策で有名な日暮里ギフトの社長、奥伸雄氏や、有名AV女優波多野結衣氏もICOのチームメンバーとして参画している、まさにアダルト業界による、アダルト業界のための仮想通貨、といったところでしょうか。
ICOのプロジェクトとしては2018年1月に開始されましたが、当時それほど話題にならなかったのはコインチェックのNEM流出騒動など、全体的にネガティブニュースが目立ち、相場も悲観的だったこともあるかもしれませんが、日本向けというよりは、どちらかというと中国をターゲットに最初のマーケティングを行っていたようです。発行枚数は100億枚。イーサリアムベースで開発されています。時価総額は現在1400位とかなり小さな銘柄です。
AVH (アニメーションビデオキャッシュ)の上場と現在までの値動き
AVH (アニメーションビデオキャッシュ)は年始に開始されたICO案件ですが、2月の頭には上場。現在、HitBTCやCoinTigerといった海外の取引所で売買することが出来ます。(ほとんどの取引はHitBTCにて行われています。)上場直後には0.05ドルを最高値として記録しましたが、その後は多くのICO案件に違わず、暴落。現在は0.005ドル前後で推移しています。
アダルト業界にブロックチェーンを絡めることの意義とメリット
「ブロックチェーン×アダルト」、一見興味深いのですが、だからと言って話題性だけでは有象無象の仮想通貨の中に埋もれてしまいます。この業界の中で、ブロックチェーンを用いる意義はどこにあるのでしょうか?一言でいうと、「透明性」です。アダルト業界は違法アップロードや児童ポルノなど、一歩踏み外すだけで様々なリスクと隣り合わせの業界。
ブロックチェーンやスマートコントラクトといった要素を持ち込むことで心なき行為を行った者を特定できるというだけでなく、それ自体が抑止力となります。優良なコンテンツ作成者や、出演者などの関係者は正当な対価を受け取れる一方、不当なコンテンツが排除されていく中、業界の健全化が期待できます。
AVH (アニメーションビデオキャッシュ)の将来性
AVH (アニメーションビデオキャッシュ)はまだ日本ではそれほど認知されていませんが、プロジェクトの中核に加藤鷹氏をはじめとするアダルト業界の有名人たちが手掛けており、認知されれば話題性の大きなプロジェクトなのではないでしょうか?また、市場の規模が非常に大きく、動く金額も多い。何よりも、「人間の3大欲求」の1つに紐づいており、需要が半永久的であるという点も長期的な視点としては魅力的です。
また、昨今、日本発のICOの多くが日本人向けに過剰な売り煽り、悪質なマーケティングを行い、悲惨な結果に終わっています。AVHは日本発のプロジェクトでありながら初期のマーケティングのターゲットを中国に定めており、目先の資金を集めて儲けるよりも、しっかりとマーケットメイクを行っていく意思を感じられます。まだまだ時価総額も小さく、今後浸透した場合の将来性を考えると、投資先の一つとして選択肢には入ってくるのではないかと思います。
AVH (アニメーションビデオキャッシュ)のリスク
市場の規模やプロジェクト自体に面白みのあるAVH (アニメーションビデオキャッシュ)ですが、勿論、投資判断にあたってはネガティブな面やリスクも考えなければなりません。筆者としては現在考えうるリスクとしては下記の3点を挙げさせていただきます。
①同様のプロジェクトは実は少なくない。
仮想通貨、ブロックチェーンとアダルト業界を絡める、というのは初めて聞いた方には思いもしなかった発想であり、唯一無二のように聞こえるかもしれませんが、実は同様のプロジェクトは複数個立ち上がっています。正当に有望な仮想通貨が時価総額上位を占めている中、今後出てくるICOは「ブロックチェーン」×「何か」という要素がとても重要になってきます。
その中で3大欲求の1つに目が付けられるというのは不自然な流れではないでしょう。しかも、その中でもAVHは相対的に後発のプロジェクトに位置します。手掛けているチームによる、ネームバリューや信用性、といった部分では優位性があるものの、最終的に決め手となる要素の一つが、仮想通貨自体の機能。そこで太刀打ちできない競合に敗北を喫するリスクは念頭に置かなければなりません。(どの通貨にも言えることではありますが)
②業界自体の印象が良くない
AVHのプロジェクト自体はアダルト業界の透明化、健全化といった真っ当なビジョンのもとに進められています。しかし、一昔前とは少し状況が変わっているとはいえ、アダルト業界に対する偏見や悪印象が世間全体から払しょくされているとは言い難いのが現状でしょう。
仮想通貨が広まっていく中で必要な要素の中に「広く流通する」「価値を認める人が増える」といったものがありますが、そういった部分を考慮した際、プロジェクトが見据えている業界自体の印象が、他の仮想通貨と比較した際に阻害要素とならないかといった部分はリスクの一つとして念頭に置く必要があるかと思います。
③業界の闇が深い
本プロジェクトは「業界の健全化」を期待できるものです。これ自体は喜ばしいことではあるのですが、一方でアダルト業界には単なる中央集権化の排除だけでは済まされない、複雑な事情が絡んでいます。そういった階層のプレーヤーたちがこのような健全化の動きの中で不利益を被るとすると、プロジェクトと推進者や参加者に対して敵対的に動く懸念というものも念頭には置いた方がいいかもしれません。
有名人プロデュースの風変わりな案件は成功しうるか
有名人や何らかのブランドネームを利用したICOは今後も沢山出てくることは想像に難くないですが、近い時期に国内で話題となったSPINDLEと異なり、(日本では)それほど目立たない中でプロジェクトが進行していたAVH。様々なリスクを抱えているとは言え、業界の市場は大きく、また、業界を健全化していくことにも大きな意義があります。良くも悪くも話題になったPINDLEも単体でも今後の動向に注目に値しますが、長い目で見た時の両者の成長の見比べはさらに面白いかもしれません。