ビットコインが50~60万円以上」まで急騰、仮想通貨市場でのドミナンスも50%超
インターネット上で流通する仮想通貨(暗号通貨)のビットコインが、10月13日に「1ビットコイン=50~60万円」を突破する史上最高値の価格をつけて急騰を続けています。ビットコインのチャートから見るテクニカル分析では、今年4~5月当たりから上昇基調が続いていて、「国家権力(特に中国)による仮想通貨規制強化・仮想通貨の実質価値の懐疑」のニュースなどで何度か小幅の急落を経験しながらも、全体として2016年以前の相場に戻ることはないと予測されていました。しかし、ここまで短期間にビットコインの価格が「史上最高値」を連続更新したことには本当に驚かされたという人が多いのではないでしょうか。ここまでビットコインの価値が急速に高まるのであれば、まだ価格が安かった去年のうちに、ビットコインを数単位でも買って持っておけば良かったと悔しい思いをしている人も多いかもしれませんね。
それだけここ1年ほどの間に、ビットコインを購入して投資したり使用したりしている人の数も増加しているはずですが、ビットコインや分裂したビットコイン・キャッシュは目に見えない「仮想通貨」であるため、「利用者数と投資・決済の規模拡大」の実感は伴いにくいのです。ビットコインの10月の価格高騰によって、仮想通貨市場全体に対するビットコインの市場占有率(ドミナンス)も約53%まで回復して、イーサリアム(約18%)やリップル(約6%)など他の仮想通貨を再び大きく引き離しました。一時はビットコインのドミナンスは40%を割り込むレベルにまで低下して、イーサリアムがぐんぐん伸びて追い上げていたのですが、10月に入ってから再びビットコインが「仮想通貨の基軸通貨的な地位」に返り咲いたような状況になっています。
2016年末の段階では「1ビットコイン=10万円前後」のレートでしたから、1年足らずの期間で「約5~6倍の価格」がついたことになります。常識的に考えれば、ビットコインをはじめとする仮想通貨市場とそのブームは、「投機家・投資家の利益獲得の思惑」で異常に過熱するバブル景気に近づいていると言えるでしょう。それでは、なぜビットコインはバブル崩壊リスクを抱えながらも、ここまで力強く買われて価格が高騰しているのでしょうか?
今、ビットコインが高騰している理由は何なのか?
2017年8月頃からのビットコイン価格の下落と上昇にもっとも大きな影響を与えていた要因は、「中国政府の仮想通貨に対する規制強化(否定的姿勢)」でした。アメリカに次ぐ世界第二位のGDPを誇る経済大国・投資大国である中国は、仮想通貨の流通量・投資額も非常に大きな国です。その中国がビットコインのような仮想通貨のICO(イニシャル・コイン・オファリング, 新規仮想通貨公開)を違法行為であるとして禁止、仮想通貨の国内取引所での取引も合わせて禁止するとアナウンスしたことが、熱くなっていたビットコイン市場に冷水を浴びせたのです。
しかし、9月になると中国政府が最近実施したとされる仮想通貨の規制措置が若干緩和されるというニュースが流れます。大手証券ゴールドマン・サックス・グループが「顧客の仮想通貨取引を支援する新規サービスの構築」を目指すと発表したこともあり、再びビットコインの需要が高まり仮想通貨市場が過熱したのです。「中国政府の仮想通貨(ビットコイン)規制の報道」は、当初こそ仮想通貨の普及範囲が狭まり、国家権力による仮想通貨取引の規制強化で「仮想通貨全般の信用・需要」が低下するという悲観的な見方もでました。
中国の仮想通貨規制と公権力の一元管理を拒む分散管理の仮想通貨
今ではその規制強化による悲観的な見方も薄らぎ始めた観があり、米国の仮想通貨の投資家や研究者の中には、中国のような権限の強い巨大国家が強引に規制しようとしたこと自体が「ブロックチェーン・分散管理システムをはじめとする仮想通貨の技術的な有効性」を示しているとポジティブな解釈をする人も出てきています。元々、仮想通貨自体が中国人によって大量に取引きされていたことも関係しますが、中国当局が厳しめに仮想通貨の法規制をしても十分な実効性があるかは疑わしいという見方もあるということです。つまり、インターネット(WWW)の基幹技術と同じで、仮想通貨には国家権力でさえ完全には禁止(規制)できないだろうと思わせるだけの「技術的な優位性・市場的な普及力・人々の投資や決済、送金での需要」があると思われるようになっているのです。
中国共産党の一党体制である中国は、「公権力(共産党)・政府に都合の悪い言論や情報、歴史」が公開されているインターネットを法的に規制しています。「万里の長城」とも呼ばれる巨大なファイヤウォールで、中国人民が自由にインターネット上の情報にアクセスできないようにしたり、反政府的な意見を書き込みできないようにしたりしていますが、そのネット規制も完全ではなく法の網(ファイヤウォール)を掻い潜って自由にネットを利用する中国人も多くいます。中国のネット規制の不完全性(国家の規制の部分的な緩み)と同じようなことが、「ビットコインをはじめとする仮想通貨規制」でも起こり得ると考えられていることで、仮想通貨市場は盛り上がりやすくなります。
仮想通貨の特徴として国家・中央銀行などの「発行主体・運用機関」が存在せず、発行ルールはブロックチェーンの技術とプログラムのコードが決めるということがあります。仮想通貨の技術的・理念的な性格として、インターネット普及の初期にあったような「国家権力からの独立性・自由度(法規制を寄せ付けにくい自治性・匿名性と技術的な分散管理システム)」が言われることも人気の一因でしょう。
ビットコインの分裂期待による高騰
ビットコイン高騰の分かりやすい理由に、ビットコインが分裂する可能性が取りざたされていることがあります。ビットコインからビットコイン・キャッシュが分裂した際、「株式分割のような枚数増加の恩恵」があったからです。ビットコインの人気上昇で取引量が急速に増えて、取引にかかる時間が長くなったり情報処理に問題が起こりやすくなったりしています。この技術的・ハード的な情報処理問題に対処する計画として「SegWi2xハードフォーク(2XHF)」が中国のグループから立案されたのですが、この計画に対する立場を巡ってビットコイン関係者内部でグループ・地域の対立があるといいます。その内部事情から、近くビットコインがさらに新たな仮想通貨ビットコイン・ゴールドに分裂して、保有枚数が増やせるのではないかという憶測的な見方も出て、今のうちにビットコインを多く保有しておこうとする投機の動きが過熱した面もあるのです。
ビットコインの高騰と仮想通貨バブルの継続性
ビットコイン価格の高値がいつまで続くのかについて、「仮想通貨の自由市場の正確な予測」をすることは誰にもできません。史上最高値のさらなる更新が続く期間を正確に予測できれば、全力でビットコインを借金してでも買って、大金持ちになれるかもしれませんが……。ビットコイン・ゴールドで大きな利益を獲得できるかもしれないという投機筋の思惑も、ビットコイン価格に関係してきます。SegWi2xハードフォーク(2XHF)の計画が実施されるのか、ビットコインは分裂するのかの大勢が明らかになる11月19日まで暴落はないのではないかという合理的な見方も成り立ちます。
アメリカの元ファンドマネジャーで個人投資家として成功したマイケル・ノボグラッツ氏は、ビットコイン相場を「史上最大級のバブルだ。ビットコインは1万ドルを超えるだろう」と強気で楽観的な発言をしていますが、高騰が続く市場価値に十分な根拠がないバブルは「いつか必ず弾ける」というのは、歴史の教訓が指し示すところではあります。仮想通貨(ビットコイン)は、利用者による仮想通貨そのものへの信用によってのみ価値が保証されている財産的価値なので、仮想通貨市場にビットコインがもっと欲しいという人の需要が集まるならば、ビットコインの高値は続いていきます。
ビットコイン市場については「下落リスク(バブル崩壊リスク)は常にあるが天井も見えない」というのが正直な感想になりますが、ビットコインを含む仮想通貨の技術基盤・インフラ的価値・利用率は今後も向上していきます。さらに仮想通貨を「投資・投機」ではなく「日常の決済(買い物)の手段」として持つ人も増えてくると予測されます。市場価値の上がり下がりは繰り返されるとしても、ビットコイン(仮想通貨)そのものが無価値化するほどの大暴落は当面ないでしょう。