なぜ警察はマイニングを取り締まるのか
全国各地で仮想通貨の「マイニング」を警察が摘発するケースが相次いでいます。2018年6月に入って、摘発のスピードが上がっており、不正指令電磁的記録供用といったデジタル犯罪の疑いによる逮捕が続いています。警察庁によると今回の逮捕に至った趣旨は、ホームページを見ただけの人の知らないうちにマイニング作業が勝手に行われてしまう点に注目が集まっています。たしかに、誰でも他人が勝手に自分のパソコンを使って仮想通貨の計算作業をされるのは良しとしないはずです。しかも、マイニングのネット作業は本人だけに報酬が入ります。
今回、全国でマイニングによる検挙を受けた人数は16人に上ります。年齢もさまざまで18歳の未成年から48歳まで、職業も学生や会社員など多様です。マイニングが問題となったのは、趣味の運営サイトにアクセスして来た閲覧者に同意を得ることなくマイニングをさせたことがポイントです。本人が知らないうちに作業に使われるのは社会的に同意を得ていなければ犯罪に当たる可能性があるとしています。
マイニングプログラムは「悪」なのか
マイニングは仮想通貨の計算や記録をする対価として仮想通貨を手に入れることができる仕組みのため、仮想通貨を直接取引するのとは別に、仮想通貨を使って利益を得られるのため以前から注目されていました。自分のパソコンでマイニングをして仮想通貨の成長や運営サポートができ、さらに報酬も得られるという社会的な意味もあったからです。しかし、今回の一連の摘発で問題となっているのはマイニングを「コインハイブ」というプログラムを利用していることでした。
コインハイブを運営サイトに埋め込んでおけば、自動的にサイトにアクセスしてきた閲覧者のパソコンをマイニングの計算作業に利用できるのです。この「コインハイブ」そのものをどう取り扱うか。社会的にはまだ意見が分かれていて統一されているとはいえません。コインハイブは以前からインターネット広告にも活用されていたからです。ただ、広告での活用と違い、マイニングプログラムとしてコインハイブを使うと、サイト閲覧者が気づかない間にパソコンが処理するため「パソコンの動作が遅くなる」「消費電力が増える」といったデメリットを持っています。
ウイルス対策ソフトを開発・提供するメーカーによってはコインハイブを一括して不正プログラムにしているケースも見られます。コインハイブそのものをサイトデザインや広告として利用することは、ユーザビリティをアップできるため一概に悪いとすることは難しいといえます。しかし、今後、コインハイブはサイバー犯罪に盛んに使われる可能性が高くなると指摘する声が高まっており、明確な法整備が必要です。
まだ法律が追いついていないことを改めて浮き彫りにする仮想通貨とマイニング。そもそもマイニングとはどのようなものなのでしょうか。マイニングは仮想通貨の「計算」「記録」「管理」に使われる目に見えないところで仮想通貨を下支えしているものこそマイニングです。仮想通貨の取引には凄まじい数の計算作業がともないます。鉱山を掘ることを英語でマイニングと呼びますが、まさしくコツコツと仮想通貨にまつわる計算があらゆる場所で行われているのです。
仮想通貨は気が遠くなるような計算能力と計算量があって初めて成立する世界です。個人レベルでは考えられないようなハイスペックのパソコンが無数に計算作業に使われています。仮想通貨ではマイニング作業を行った作業を成功させると、その対価として仮想通貨の新規発行を行います。つまり、ハイコストのマイニングを引き受ける代わりに、新たなコインを手に入れられるというわけです。
また、マイニングは仮想通貨の取引の検証と記録管理に使われます。世界中で膨大な仮想通貨の取引が行われていますが、一つ一つの取引が数量や取引相手を含めて本当に正しく実施されたのかを記録し、検証の末、データ改ざんを防止する記録保存が行われます。
マイニングとブロックチェーンの関係
マイニングを通して仮想通貨の記録を正しく保存することを「取引の承認」と呼びます。なぜマイニングによって取引が承認されるのでしょうか。そこにはマイニングの仕組みを支える「ブロックチェーン」が大きく関わっています。ブロックチェーンとは仮想通貨の基本概念の一つです。仮想通貨の計算は一定の固まり(ブロック)ごとに行われます。チェーンのようにブロックの計算が果てしなく続いていくイメージからブロックチェーンという言葉が生まれました。
もし一つのブロックの計算が間違っていたり、改ざんされてしまうと、それから後のブロックすべてを再計算しなければいけません。仮想通貨で取引が一度承認されると改ざんができないのは、ブロックチェーンのマイニングに果てしない計算作業の能力を必要とするからです。
マイニングには3つの方法がある
高性能なパソコンとまとまった電気代など、マイニングを個人で行うには非常にコストが掛かります。それでも自分でマイニングをしてみたいとなったら、どのような方法があるのでしょうか。ここでは3種類を簡単にご説明します。
・クラウドマイニング
3つのマイニングのなかで一番はじめやすい方法です。自分でマイニングをするのではなく、マイニングを企業や団体に代行してもらうというスタイルで、投資に似ています。世界中でマイニングを行っている団体があります。自分でマイニングのために新たな設備を購入することなく、マイニングの団体に出資すれば間接的にマイニングに参加できます。
ただ、投資と同じなので必ずしも利益が出るとは限らないこと、詐欺団体で調達した資金を持ち逃げするケースもあること、変動幅の大きい仮想通貨による支払いのため利益薄2成る可能性があること、などが心配されます。
・プールマイニング
マイニングプールとも呼ばれ、マイニングをする個人が集まってグループで計算作業の効率化を図る方法です。個人の持つ計算能力ではすぐに限界が訪れます。プールマイニングは複数のメンバーが集まって計算した割合によって利益を分配する仕組みです。
個人でもマイニングに参加しやすい反面、個人レベルのパソコンでは仮に参加できても配当は限りなく少なくなります。とくにビットコインやイーサリアムのようなメジャーなコインではその傾向が強まっています。プールマイニングに参加するならまださほど注目が集まっていないコインからスタートすると良いでしょう。
・ソロマイニング
文字通り、団体への投資やプールへの参加をすることなく自分のみでマイニングする方法です。クラウドマイニングやプールマイニングとちがって計算作業をすべて自分で行うため得られた利益もすべて自分のものにできます。チャンス次第でマイニングが順調にいけばそのぶん報酬も膨らみます。またマイニングの団体やマイニングプールに支払う手数料が掛からないため、仲介コストが発生しません。
ただし、ソロマイニングは運が大きく関係しています。前の日はマイニングに成功してまとまった報酬があったのに、次の日はほとんどないといったリスクを常にともないます。当然、マイニングの設備はすべて自分で用意しなければならず、電気代のコストものしかかります。日々収入が安定しないとマイニング作業自体が立ちゆかなくなる可能性も大きくなります。
マイニングについて理解を深めよう
仮想通貨とマイニングには深い関わりがあり、取引を支える大きな柱となっています。それだけにマイニングで利益を上げる人が増える一方、詐欺が横行したりコインハイブ利用による検挙が相次いだりとまだまだマイニングが社会的に認知されているとはいえません。ただ、マイニングは個人でも参加できます。投資として趣味として一度マイニングについて理解を深めておくと仮想通貨の世界がもっと広がっていくことでしょう。