ICO詐欺で揺れる仮想通貨の世界
仮想通貨の世界はまだ日が浅いため詐欺的なニュースもよく耳にします。「億り人」ブームに沸き仮想通貨が一気に世間の関心を集めた2017年以降、仮想通貨を通じて資金調達をするICO案件も増加傾向にあるのが一因です。仮想通貨を取引する人たちの裾野が広がるにつれて、ICOに参加しようと考える人たちも増えてきました。実際にICOのプレセールの波に乗って大きな利益を得たケースも少なくありません。
一方、ICO案件を選び間違うと、利益を得られないばかりか詐欺ICOにひっかかってしまい、投資した仮想通貨をすべて失うリスクもともないます。今回は最近急増するICO詐欺ニュースをベースに、ICOが抱える問題点と合わせて、ICOに参加するときに気をつけるべきポイントをご紹介します。
3,200万ドル規模の大型ICO詐欺発生
2018年4月、アメリカから衝撃的なニュースが飛び込んできました。仮想通貨を管轄するアメリカのSEC(証券取引所)が仮想通貨Centraの創立者をICO詐欺容疑で告発したのです。前年から続いてRaymond Trapaniを中心に3,200万ドルもの資金調達を成した創立者3名が告発、逮捕されたことになります。Raymond Trapaniの告発容疑は仮想通貨デビットカードを使って3,200万ドルの資金調達をする際、最先端のテクノロジー開発に成功したかのような誇大な宣伝をしたことにあります。
・有名クレジットカードと提携
・謝った商品説明で投資家をミスリード
・創立者たちの経歴詐称
・トークンの価格操作による購買意欲の扇動
こういったICO詐欺につきものの問題点をSECは重く見て、今回の告発に踏み切ったのです。連動して連邦検察局は証券詐欺罪と有線通信詐欺罪による告発を開始、Raymond Trapaniを逮捕しています。仮想通貨ICOの詐欺問題は日本だけではなくデジタル先進国のアメリカでも急増しているのです。
SECによる投資家教育が進むアメリカ
詐欺的ICOに対応するため、SECではICOのフェイクサイトを開設しました。ICOが詐欺で使われる手口をいくつも盛り込んで作成されているサイトのため、投資家がつい引っかかってしまうポイントが凝縮されているのです。
フェイクサイトである howeycoins.com を見ると、一度は目にしたことのあるようなサイトデザインが目を引きます。中央に大きく”PRE-ICO SALE IS LIVE”(「ICOプレセール実施中)と表示され、その下には「15%ボーナス終了まであと何日何時間何分何秒」とタイムリミットを区切って投資家の焦りを誘います。さらに「こんな素晴らしい機会に参加する今を逃すな!」と煽り文句もあります。画面後半は参加プランによって割引率が細かく設定されていたり、今回のICOチームに参加しているメンバーが顔写真入りで紹介されているなど、信憑性を高めて安心感を与えるなど、よく調べ尽くした成果が盛り込まれています。
もしフェイクサイトだと知らずに「今すぐコインを購入する」のボタンをクリックしたユーザーは、SECが投資家教育のために運営する別のサイト Investor.gov に推移して、もしこれが本当の詐欺ICOサイトなら被害に遭う可能性があったことを教えてくれます。SECには投資家教育支援局という投資家を対象に詐欺などの犯罪から守る部署があります。インターネットの拡大によってICOをはじめ詐欺の被害に遭う投資家は後を絶たず、注意喚起の必要性が高まっています。
こうしたフェイクサイトは開設自体もコストがかからず、しかも投資家教育には一定の有効性が期待できるのがメリットです。2017年から仮想通貨デビットカードの問題が大きくなるのに合わせて、SECにとってもICO詐欺への対応が迫られています。
ICOが抱える問題点とは
そもそもICOは株式上場によるIPOと違って誰でも比較的簡単に資金調達をできるというのが大きなメリットです。そのため世界中のあらゆる場所から企業や団体の規模にかかわらず投資家からまとまった資金を集めることができるようになりました。その点、今後の資金調達の手段として非常に大きな存在になっていくことは確かです。ICOを通して新規プロジェクトやこれまでにないサービスを世に送り出したい企業を資金面から応援することができ、投資家も新規発行された仮想通貨の相場次第で大きな利益を手にする可能性が生まれます。
ただ、仮想通貨の世界は法規制が追いついておらず、とくにICOについては最初から詐欺を目的に立ち上げた企業もあるなど、問題が深刻化しているのが現状です。ICO案件で企業側はまず公式サイトを開設し、ICOのプロジェクトや企業概要を詳細に記載したホワイトペーパーを通して投資家にアピールします。もしまったくスタートアップする見込みのないプロジェクトであっても公式サイトとホワイトペーパーさえあればICOによる資金調達は可能なため、詐欺集団に利用されやすいツールになってしまっているのです。
さらに資金調達の規模を拡大するため、「申込期限まであと何分!」「利益を明確保証!」といったキャッチコピーで投資家を煽るようなサイトデザインに仕上げたり、トークンの自動販売化をするなど、詐欺をバックアップする方法はいくらでもあります。
こうした詐欺ICOがはびこる背景には、仮想通貨の世界がまだまだ若いことがあります。新しく始まったものほど、良い意味でも悪い意味でも先行きが不透明のため、夢やロマンがありつつ、将来はどうなるかわかりません。発展途上の業界では噂や憶測が飛び交い、話が大げさにふくらむこともしばしばです。そんな新興業界に詐欺集団が食い込み、莫大な被害をもたらしているのがICOの現状です。
ICOに参加するならこれだけは注意しよう
仮想通貨ICOは詐欺案件ばかりではありません。新規プロジェクトのための予算を確保するため正しい方法でスタートアップしている企業もたくさんあります。それではICOに参加したいと思ったとき、どういった点に気をつけておけばいいのかをまとめてみましょう。
・公式サイトの情報は必ずチェックしよう
宣伝サイトに煽られ、公式サイトも見ず参加を決めるのはやめましょう。ICOには必ず公式サイトが開設されています。ICOの概要をつかみ、信頼できるかどうかを判断する上でとても重要です。ホワイトペーパーにはなぜ資金調達が必要なのか、どういったプロジェクトなのか、資金の予算配分やプロジェクトのスケジュール、主催する企業の概要まで、細かな情報が記載されています。
多くのICOは海外で行われているため情報が英語で記載されています。案件によっては日本語による情報が手に入れられるケースもありますので、さまざまな角度から情報を収集し、検討するようにしてください。
・急増するフィッシング詐欺に要注意
詐欺ICOの手口はいくつかありますが、とくに最近目立つのが送金先アドレスを悪用するケースです。ICOでは仮想通貨を運営側に送金して参加完了となります。イーサリアムやアルトコインの送金先に指定されたアドレス自体がまったく架空のものというケースが急増しており、注意が必要です。
ICO参加でまとまった仮想通貨を送金する際には、送られてきた送金先アドレスが本当に確かなものか、送信元のメールアドレスに不審な点はないかをしっかりとチェックしましょう。
正確な情報を収集することが大切
仮想通貨ICOは小規模な企業でも資金調達を簡単にするメリットを持つ反面、今見て来たように詐欺的ニュースも増えています。ぜひICOに参加する際は、あらゆる手段で正確な情報を収集して、不審な点はないかを精査していくことが重要です。