仮想通貨市場は、仮想通貨取引所で出回っている銘柄だけでなく仮想通貨をモデルにしているICOについても注目されています。ICOで販売されるICOコインやトークンは、仮想通貨同様にそのままでは価値がないものの、価値が上昇すれば多額の利益を獲得できるという点は、仮想通貨と変わりません。
加えて、ICOは仮想通貨取引所に上場されることでオリジナルの仮想通貨として取り扱うという未来もあるので、将来性という意味ではオリジナルを超えているということが垣間見れます。
しかし、ICOは調達した資金を持ち逃げする詐欺などトラブルが仮想通貨以上に起こりますので、安易に参加するのは危険なことも頭に入れておかなければなりません。本稿では、ICOの一つであるPGC(フィリピングローバルコイン)のトラブルについて説明していきます。
PGC(フィリピングローバルコイン)とはどのようなICOなのか
PGC(フィリピングローバルコイン)は、フィリピンにおいて送金手数料を減らすために開発されているICOです。2018年1月からエマニュエル・ドゥテルテ氏が中心となって、プロジェクトが進行しています。
フィリピンでは出稼ぎに出ている労働者が多いですが、法定通貨を実家に送金するとなると手数料が高額になることが問題になります。労働者にとってはこの手数料が大きな足かせになってしまうので、この状況を何としたいという声がいくつも出ていたのです。
そんな中で開発されていたPGCは、ICOコインであるがゆえに安価な手数料で素早く送金することができるようになっています。銀行口座を持たないことも多いフィリピンの労働者にとってはとても大きな要素となり、実際に新聞に掲載されるなど大いに注目を集めることになりました。
PGCはこれ以外にもフィリピンにおいて様々なサポートを行う予定を示しており、PGCに投資することでフィリピン全体にとってのプラス要素があるということも人を惹きつける要因になっています。
ICOではこのように投資としての価値だけでなく、ICOの開発されている技術において注目を集めるということもあります。PGCは投資以外のプロジェクト面でも大いに評価されているので、多くの投資家が集まった事例の一つと言えるでしょう。
PGC(フィリピングローバルコイン)を運営する中心人物の一人が逮捕されたという報道が
以上のように有力視されていたPGC(フィリピングローバルコイン)ですが、そんな中で2018年5月に衝撃的なニュースが流れてきます。PGCを運営している中心人物の一人が、暴行を指示した疑いで逮捕されたというニュースがネット上に掲載されることになり、投資家の間では大きな衝撃が走ることになりました。
(https://news.nifty.com/article/world/worldall/12137-5024/)
PGCは正式なプロジェクトをまだ開始していない時期であるため、とても大事な時期であったとはいえるのですが、ここにきてこのようなニュースは、大きな不安を与えることになりました。ICOは運営するメンバーの信頼で成り立っている部分もありますので、このようなニュースは大きな注目を与えることになります。
当然既にPGCにある程度の投資を行っていた人は不安を覚えることになり、PGCの公式ツイッターに対していろいろな質問をする動きが出てきました。プロジェクト開始前に頓挫することなると投資したお金が戻ってこない可能性もあるので、そのような行動を起こすのも仕方のないことかもしれません。
ICOもオリジナルの仮想通貨と変わることなく、一つのニュースや噂等で価値が揺れ動く可能性があります。投資を行う上ではニュースを確認する必要がありますので、しっかりと欠かさないことが重要です。
PGC(フィリピングローバルコイン)の公式はプロジェクトには影響がないことを強調
この報道を受けて、PGC(フィリピングローバルコイン)の公式ツイッターでは投資家に対して回答を行うことになりました。まず投資関連に関しては、この報道がプロジェクトに影響を与えるわけではないということです。
投資家にとって一番重要になるのはプロジェクトの継続であるため、その点をしっかりと伝えたいという意図を垣間見ることができます。プロジェクト側として「このまま終わってしまうのではないか」と不安を与えたままにしておくと、参加者が減ることに繋がるため、しっかりと発表することが重要であるという考えが予想できます。
これに加えて、事件は不起訴であることと暴行事件に関しては全くの無関係であったことを強調し、あくまでPGCとは無関係の問題であることを説明しました。事件に関する詳細報道は出ていないものの、2018年5月現在に「近々釈放されると聞いている」と主張を行っています。
2018年6月現在もPGCの本格的なプロジェクト開始には至っていませんので、PGCそのものへの不安も払しょくされていません。プロジェクトの開始についても近いうちに行われることを示唆してはいるものの、これからどのような動きがあるのかについて注視していく必要があるのは間違いありません。
他にもあったフィリピンのICOにおけるトラブル
フィリピンの生活をよりよくするためのICOだっただけに、大きな衝撃を与えることになったPGC(フィリピングローバルコイン)。しかし、フィリピンのICOに関してはその他のトラブルも起こっていました。
フィリピンのICOにおいて大きなトラブルを引き起こしたのは、ノアコインです。ノアコインはICOコインとして登場し、PGC同様に送金手数料に関する問題を解決する目的としてプロジェクトを開始することになりました。
そんなノアコインのトラブルの発端になったのは、「フィリピン政府と中央銀行が関わる国家ぐるみのプロジェクト」と主張していた点です。これによって信頼できると判断した投資家が次々とノアコインに投資したのですが、その後フィリピン政府や中央銀行から全く関係がないという旨のコメントが出されたことで、トラブルに発展しています。当然ノアコインは詐欺案件であるということが多くの人の認識となり、実際に返金騒動まで起こってしまったのです。
現在は仮想通貨取引所に上場を果たしたことで見直しの流れもあるノアコインですが、常に信用ができない点が残っています。詐欺なのではないかと疑われているICOはフィリピンに限ったものではないので、ICOの参加に際してもより慎重にならなければなりません。
海外のICO参加に関して法規制が敷かれる可能性も
このように危険な案件が多いICOですが、日本政府も同様に認識をしています。実際に金融庁の会合では海外のICOの参加を禁止するべきなのでは、という意見が見られました。規制が敷かれるというのはそれだけ利益を出すのが難しくなります。
一方で、現在のICOの状況では少しでも詐欺被害に遭う人を少なくするために、ある程度仕方ないという認識も出てくるでしょう。実際にICOの詐欺に遭ってしまった事例も報告されていますので、日本政府としても「今後悪質なICOを放置できない」と積極的に動く可能性は十分にあります。
重要なのは、「法規制が敷かれ後の市場に対応することができるのか」という点です。規制が敷かれる=ICOで利益を出すことができない、というわけではないので、自分でしっかりと法規制が敷かれた状況を理解して、どのような投資を行うのかを明確にするのが重要になります。
ICOは前述でも触れましたが、プラス面に目を向ければ投資以外の魅力を持っています。それだけに、どのようにして有益なICOに関わっていくかということが、一番問われているといえるでしょう。