バルト三国という国々を聞いたことありませんか? 元々は旧ソ連の一部だった国々で、ソ連が崩壊した後に独立したのがバルト三国といわれている、リトアニア、ラトビア、エストニアの三国のことです。この三国は面積も日本よりはるかに小さく、人口も特別多いわけではありません。しかしこの三国の中の特にエストニアという国に、今、世界の注目が集まっています。
昨年エストニア国家が独自の仮想通貨、エストコインの発行を決めたからです。ではどうしてエストニアは独自コインの発行を決めたのでしょうか。さらに独自の仮想通貨を発行している国、
または、発行を考えている国はあるのでしょうか。
エストニアという国とは
冒頭で書いたようにエストニアはバルト三国の一つで、正式名をエストニア共和国で首都はタリンです。人口は130万人ほどとかなり少なく、面積も九州ほどの面積しかありません。1991年旧ソ連から独立してからロシアに対しての備えとしてEUの加盟やNATOへの加盟を果たし、経済的には非常に発展している国となっています。
現在の大統領はケルスティ・カリュライド大統領で、エストニアでは史上初の女性大統領です。しかし大統領制を敷いているアメリカや韓国と違いエストニアの大統領は、日本でいう天皇と同じ象徴的な役目となっています。
・日本よりもはるかに先を進んでいるIT先進国、エストニア
エストニアは『未来型国家』ともいわれています。なぜならば、行政サービスの99%がインターネットで手続きを完了できるからです。残り1%の『結婚、離婚、不動産売却』のみ書類での手続きとなっています。さらに電子居住者システム『e-residency』という起業家や外資の融資を誘致するためのサービスがあります。2014年から始まったもので、エストニアにいなくてもエストニア国内のサービスを利用できるというものです。申請に100ユーロ、国外の場合エストニア大使館へ行かないといけません。
e-residencyには日本の安倍晋三内閣総理大臣も参加しています。興味あったら登録してみてもよいのではないでしょうか。https://e-resident.gov.ee/
・教育水準の高さと自由経済
エストニアの教育水準は全世界からみても非常に高く、国際学力ランキング(POSA)の科学的知識分野では、日本に次ぐ3位となっています。さらにIT教育も盛んで小学校から高校生までがテクノロジーに関する基礎知識やスキルを学んでいます。そしてこのような高い教育水準から生まれたものが、現在マイクロソフトに売却されたインターネット電話で有名な『Skype』です。『Skype』もエストニアから誕生しています。
そしてエストニアは政府が市場に介入しない『自由放任主義』という経済システムを取り入れています。この自由放任主義というのは現在、香港、シンガポール、ニュージーランド、スイス、オーストラリア、エストニアの6か国となっています。税制も非常にシンプルにできていて、所得税は所得に関わらず一律20%、消費税は一部の例外品を除き20%となっています。
・エストニアを取り巻く社会情勢
経済やITでは世界トップクラスのエストニアですが、国際情勢は非常に緊張状態となっています。隣国で旧支配国であるロシアへの警戒。そしてエストニアの人口の4分の1ほどのロシア系住民とエストニア語を話せない人達との経済格差の広がりから、緊張状態が続いています。そしてエストニアはEUの東端でロシアとは最前線に位置にいることから、エストニアの住民たちの中には軍事訓練を行っている人たちもいます。
エストコインとは
昨年2017年8月日本の多くのメディアは、エストニアがe-Govermment構想の一環としてICOとしてエストコインを発行するということを発表報じたので、覚えている方もいるのではないでしょうか。e-Govermmentとは、行政分野へのIT技術の活用によって、国民の利便性の向上や行政手続きの簡略化を目的としたものです。そしてエストコインのアドバイザーに就任するのではないか、といわれているのが、イーサリアムを製作したヴィタック・ブリテン氏です。
ただ2018年6月22日現在、エストコインの話は全く進んでいないばかりか、ヨーロッパ中央銀行のトップ、マリオ・ドラギ総裁から「人口が130万人の国ではユーロのみが通貨になり得る」という批判や地元銀行からの批判が相次いだことから、計画の縮小化を決定しています。
エストコイン発行の理由
ではエストニアはどうしてICOとして、エストコインを発行するというのを決めたのでしょうか。それはエストニアの電子居住者システム『e-residency』を利用する際のインセンティブとして使われると、エストニアIT政策を担当しているSiimSikkut氏は答えています。エストコイン発行によって資金が集まることで、インセンティブ目当ての多くの起業家をe-residencyへ呼び込めることができます。さらにエストニアで企業を起こすことで、エストニアに税金として、お金が落ちるという仕組みです。
前述したようにヨーロッパ中央銀行のトップ、マリオ・ドラギ総裁からエストコインは猛烈な反対をされています。これに対しエストニアIT政策を担当しているSiimSikkut氏はこう反論しています。「我々は政治家との議論の結果、エストコインはe-residencyのコミュニティ内で使われることに合意している。他の選択肢はなく、我々は新しい通貨を創造しているわけではない」
元々マリオ・ドラギ氏は仮想通貨に対しては批判的な立場をとっていました。最近は少し変わってきましたが、エストコインを反対している立場から考慮すると、やはりまだまだ仮想通貨に対しては批判的な考えをもっているようです。
ではどうして、エストニアがe-Govermment構想を他の国以上に迅速に進めているかというと、そこには過去に二度も旧ソ連に占領されるという辛酸を舐めているからです。もし仮にエストニアが占領され、領土がなくなったとしても、『国民のデータ』さえあれば国を立て直すことができるとエストニア政府は考えているからです。
ICOとは
一般的に資金の調達というと、銀行からの借入やベンチャーキャピタルからの出資などがあります。ICOはここ数年で急増した資金調達方法の一つです。ICO(Intial Coin Offering)日本語約では、『新規仮想通貨公開』などのように訳されることが多くなっています。ではICOというものがどのような資金調達方法かといいますと、まずA社が資金調達をするために、仮想通貨(トークン)を発行します。
そしてそのトークンを投資家に、ビットコインまたはイーサリアムなどの仮想通貨を使って買ってもらうというのが、というのがICOです。ここで初心者の方は勘違いしがちなのですが、ICOを買った際は基本売ることができません。売ることができるようになるのは、他の取引所へと上場が決まったときだけです。なので、ICOの中には詐欺コインといわれるものも多いので、注意して投資をしないといけません。最悪何の使いみちもない、電子ゴミに高いお金を支払ってしまうなんてことになりかねません。
すでに仮想通貨発行している国
・ベネズエラ 現在米国から経済制裁を受けている国です。インフレ率は2,600%以上になり、ベネズエラ通貨である『ボリバル』は1年で96%も価値が下落してしまっています。そんな中ベネズエラ政府が発行したものが『ペトロ』です。ペトロは石油1バレルの価値となっており、すでに4,154億円もの資金調達に成功しています。さらに金に裏付けされた仮想通貨『ペドロゴールド』を販売しペトロと同じくらいの資金を調達したのではないかといわれています。
・マーシャル諸島共和国ソブリン 自国通貨として米ドルを使用していましたが今後は、ドルと共に2つめの通貨として『ソブリン』が流通するようになります。また、ソブリンは米ドルに連動する法定通貨になります。ICOで調達された資金の一部はナショナルトラストファンド、マーシャル島沖での核実験の被害者への医療費として割り当てられるようです。