「MOLD(モルド/単位:MLD)」は日本発の仮想通貨で、2018年1月までICOトークンプレセールが実施され、年4月にHitBTCに上場しました。その目的は、ブロックチェーンを活用してゲーム内のアイテムを取引するマーケットプレイスを構築することと、新作ゲームの開発を支援することです。

ゲーム内アイテムをブロックチェーンで取引

junterao【MOLD(モルド)で新作ゲーム開発を支援する】日本発!ゲーム内のアイテムのマーケットプレイスを構築MOLD(モルド)は、Moning Field Japanという企業が運営する日本発の仮想通貨です。代表の朝野拓巳氏ら主要メンバーは日本人で、公式サイトもホワイトペーパーも日本語がベースです。ゲーム業界に縁のある人たちが関わったゲームのための仮想通貨です。2017年10月から2018年1月9日までICOトークンプレセールが実施され、約20億MLD、イーサリアム換算で15,726ETH分を販売しました。

その第一の目的は、ブロックチェーン技術を活用してネット上に、ゲームユーザーが「アイテム」を購入できるマーケットプレイス(取引市場)を構築することです。ロールプレイングゲーム(RPG)やバトルシミュレーションゲームは、ゲーム内で使う武器や防具や書物など「アイテム」が重要な役割を果たします。

ダウンロードは無料でもアイテムの販売(課金)で収益を得るタイプのゲームもあり、アイテムをユーザー同士が交換したり、金銭で購入できる場合もあります。ネット上ではゲームのアイテム(バーチャルグッズ)を交換、売買できるサイトがいくつも営業していて、そんなビジネスを「RMT(リアルタイム・トレーディング)」といい、「WAX」トークンを発行した「OPSkins(オプスキンズ)」などは、その最大手です。

ゲームアイテムはデジタルデータですから、それをユーザーのアカウントとともに暗号化し、MOLDのトークンに置き換えて保存すれば、仮想通貨の基本技術「ブロックチェーン」を利用できます。ブロックチェーンの基本は「非中央集権的な分散管理」で、それによりゲームメーカーやRMTサイトに管理されない自由な取引が実現します。

「管理者がいないと詐欺的な取引や法外な値段の取引が横行する」と思うかもしれませんが、データがアカウントとひも付けされ、ブロックチェーンの特長である「安全性」「公平性」「信頼性」がきくためそんな〃悪事〃は封じ込められると、MOLDでは説明しています。集中管理型ではないので、サーバーダウンなどの事故・事件で止まる心配もありません。

MOLDはアイテムだけでなく、オンラインゲームやスマホのゲームアプリのキャラクターデータ、ゲーム内のポイントやゲーム内通貨、アカウントなども取引できるマーケットプレイスを構想しています。MOLDのプロジェクトが開設する「分散型RMT」では、購入や換金は法定通貨や仮想通貨などゲーム外の「リアルマネー」がひろく使えますが、MOLDのトークンが最も使いやすく、メリットもあるので、マーケットプレイスが活発に利用されればMOLDトークンの需要も増え、レートも上がることになります。

MOLDは、ゲーム内で「難敵」を倒したゲーマーにMOLDトークンで賞金を出すことも考えています。もし今後、人気ランキング上位のゲームでMOLDが利用されはじめたら、MOLDのレートの上昇に火がつく可能性があります。

MOLD(モルド)がゲーム業界の成長を促せる理由

MOLD(モルド)は、ゲームユーザーが望むようなマーケットプレイスをつくり出し、手数料を稼いだり、トークンの価値が上昇したら、それで得た利益を新作ゲームの開発に投資して支援するとアナウンスしています。それがICOの第二の目的です。ICOまでに得た資金の一部もそれに使いました。ゲームユーザーであるトークンの保有者も、1MLD=1票でMOLDの利益の分配先を決められる「分配投票システム」への参加を通じ、新作ゲームの開発に関わることができます。

すでに新作のプロジェクトがいくつか動き出していますが、MOLDの投資先は「MOLDファミリー」になるので、課金やアイテムの販売でMOLDトークンが使われます。ファミリーが拡大していくとMOLDトークンはさらに使われるようになり、その利益で投資を回収できます。そうやってゲームの業界内で資金がうまく循環するしくみをつくり、業界をさらに発展させていこうという構想です。なお、ホワイトペーパーには「世界の貧困地域をゲームで助けたい」とあり、製作への関与など何らかの形で、資金の循環ルートに途上国も組み込まれる可能性があります。

ゲーム業界にとってのメリットはそれだけではありません。ユーザーにとってMOLDは、ゲームをすることがお金になる可能性を開いてくれます。と言っても「eスポーツ」のプロゲーマーになれるわけではありません。

あるゲームをプレイして、それでゲットして強化したアイテム、手塩にかけて育成したキャラクター、稼いだゲーム内ポイント、手じまいしたいアカウントなどを他の人に売り、イーサリアムを介して法定通貨の米ドルやユーロや日本円に交換できる安全なしくみが確立するからです。今まで10万円、100万円とゲームに注ぎ込んできた課金分の何割かを回収することもできるでしょう。

そのようにしてMOLDが「ゲーマーであることの金銭的なリスク」を下げ、ゲーム参加人口を増やすことができれば、eスポーツのプロゲーマーを頂点とするピラミッドの底辺をひろげます。

それは、1993年にプロのJリーグができてサッカーをする子どもや中・高生が増え、日本がワールドカップの常連国になったように、頂点を高くさせてゲーム業界全体の発展につながっていきます。もちろん頂点のeスポーツにも、マーケットプレイスを通じて関わるチャンスは大いにあります。MOLDはeスポーツの大会を開催する構想も打ち出しています。

海外投資家を動かすにはレートの上昇が必要

MOLD(モルド)はイーサリアムベースのERC20トークンです。その最大発行量は25億MLDとなっています。2017年10月に台湾の「アジア暗号通貨取引所」に上場しましたが、ICOトークンプレセールで約20億MLDを販売した後、2018年4月2日に日本人ユーザーも多い大手仮想通貨取引所のHitBTCに上場しました。日本の取引所ではまだ取り扱いがありませんが、運営が日本企業で代表者も日本人なので、今後の上場も有力と言えます。

レートは4月のHitBTC上場直後1MLD=約1.5円に上昇しましたが、すぐに下落。5月4日には1MLD=1円に迫りましたが、6月現在では0.25円近辺で低迷しています。「萌え系」の女の子の公式キャラクターがいるなど日本色を強く出しているのは日本人投資家には心強いですが、海外の投資家の人気はいまひとつ盛り上がっていません。

仮想通貨の投資家には「儲かるか、儲からないか」だけが関心事で、日本のアニメやゲームや、そのマーケットには全く興味がない人もいます。そんな人に効くのはやはりレートが再び上昇をみせることです。

MOLD(モルド)の他にもゲーム内通貨がある

日本発!ゲーム内のアイテムのマーケットプレイスを構築MOLD(モルド)の最大のライバルは、日本の取引所Zaif(ザイフ)にも上場しゲーム内通貨として採用された実績もある古参コイン「ビットクリスタル(BCY)」です。しかしこれはバックにスイスのEDS(EverdreamSoft)社がいて、その息がかかったゲームに限定されるという縛りがあり、日本発のMOLDは新作への投資で「MOLDファミリー」を拡大していけば、対抗できる余地があります。

ゲームのアイテムを金銭で売買するRMTは、法律上はグレーゾーンです。ゲームの利用規約ではたいてい禁止されていますが、実際はおおっぴらに取引されています。日本には規制する法律はありませんが、ゲームメーカーは利用規約違反で裁判所に訴えることはできます。しかし今まで、アイテム販売差し止めの民事訴訟は起こされていません。

RMTの将来性

RMTには二つの可能性があります。ルールによる規制が強化されて厳しく取り締まられ、表のビジネスとして成り立たなくなる方向と、ゲームメーカーからも公認されてルールが変わり市民権を得るという方向です。過去の例で言えば、パソコンソフトをコピーした海賊版の販売は前者で、かつて「貸出禁止」だった音楽や映画のソフトのレンタルは後者の道をたどりました。いま、「WORD」や「EXCEL」の海賊版は地下ルートでしか入手できませんが、CDやDVDのレンタルショップは街の中で堂々と営業しています。

RMTで詐欺まがいの取引、不公平な取引が頻発したら、取り締まりの口実を与えて当局につぶされかねませんが、健全で公平な取引が大多数を占め、いかがわしい取引は排除される「自浄作用」が働くようなら、ゲーム業界から公認される道が開けます。MOLDが目指しているのは、もちろん後者です。

MOLDについて「RMT自体グレーゾーンでリスキーだ」と断定する人がいますが、MOLDがブロックチェーンの技術を活用してRMTから不健全な要素、不公平な要素を一掃できたら、公認されてルールも変わり、グレーゾーンがホワイトゾーンに変わる可能性はあります。とはいえ、法律をつくるのは政治家ですから、ルールが本当に変わるのか、やってみないとわからない部分はあります。