「IOStoken(アイオーエストークン/単位:IOST)」は2018年1月に公開され、仮想通貨取引所に上場しました。その目的は、ネット通販やSNSのようなオンラインサービスプロバイダ(ネットビジネス)のネットワーク管理者を対象に安心・安全なインフラを提供して、その課題を解決することです。

ネットワーク管理者を助けるインフラを提供

junterao【IOStoken(アイオーエストークン)で安心・安全なインフラを】ネットビジネスを支え管理者の課題を解決するIOStokenはすでにICOを行い、2018年1月に仮想通貨取引所に上場しています。その目的は、ネット通販やアプリの配信、SNSのようなネット上のビジネス(オンラインサービスプロバイダー)の内部で、オンラインサービスが支障なくスムーズに動くように管理している「ネットワーク管理者」の人たちのために、ネットワーク上で発生するさまざまな課題を解決する「ソリューション」を提供し、安心・安全なインフラを提供することです。簡潔に言えば、ネットビジネスがスムーズに運営できるインフラを提供してネット管理者の仕事を助けるプラットフォームを構築するために生まれた仮想通貨です。

名前の「IOS」は「Internet Of Service」の略で、ネット上でのさまざまなサービス提供のことです。それで収益をあげるのがアマゾンやフェイスブックなどのネットビジネスです。そのIOSのために発行されるトークン(token)だから「IOStoken」です。

ネットワーク管理者は仕事の悩みが尽きません。小さな通販サイトでもハッカーによるサイバー攻撃は日常茶飯事で、毎日毎日、防衛対策に追われています。システムがいきなりストップすれば大損害。もしクレジットカード番号など個人情報が流出したら会社の信用にかかわり、せっかく築いた顧客基盤が崩れます。問題点が見つかり臨時メンテナンスを実施して改善したくても、ビジネスが止まるのでボスはいい顔をしません。

顧客はよそと比較して「遅い」「使い勝手が悪い」などうるさく、社内から「メンテナンス時間を短くしろ」「見栄えをよくしろ」など要求が次々入ります。ビジネスが順調で処理能力を上げようと設備や回線をグレードアップしたくても「あまりコストをかけるな」とクギを刺され、スタッフを増やしたくても「人手不足だから今の人数で何とかしろ」と言われます。

大学で情報通信の専門的な勉強をして入社しても、アッと言う間に進歩する技術についていくのは大変で、しかも最新情報はみんな英語。それでも絶対に侵入させず、止まらず、処理が速く便利な理想のネットワークシステムを構築して運用しようと、ネットワーク管理者はみんな一生懸命、努力しています。

IOStokenはそんな縁の下の力持ちの彼らに堅固なインフラ(エコシステム)を提供して助けます。ホワイトペーパーには「超高TPS」「プライバシー保護」「スケーラブル」といった言葉が並びますが、中心にあるのは自前で開発した「効率的分散型分割機能(EDS/Efficient Distributed Sharding)」という、ブロックチェーンを改良する技術です。

効率的分散型分割機能(EDS)とは何か

EDSは、仮想通貨のブロックチェーンの技術をもとにしています。その「分散型台帳ネットワーク」は改ざんされにくく安全性、透明性、信頼性が高いという説明は、おそらく何度も聞いたと思いますが、それを改良してネットワーク管理の領域に応用する新しい技術が効率的分散型分割機能(EDS)です。

その原理を簡単に言えば、ネットワークを「シャード(Shard)」という単位に分割して、全体ではなくシャードの単位で情報を処理します。ブロックチェーンと並ぶ仮想通貨の重要な技術である「スマートコントラクト」も搭載され、セキュリティ性を高めています。

EDSの大きな特長は、個人情報などのプライバシーが保護され、外部からの侵入に対するセキュリティ性が高く、透明性も高いので管理者はシステムの状況を把握しやすく、一時的に高い負荷がかかってもトラブルを起こすことなく運用が続けられるといった点にあります。それによって、ネットワーク管理者がいつも悩まされる「外部のハッカーによるサイバー攻撃のおそれ」や「トランザクションがシステムの処理能力を超えてパンクするおそれ」が、軽減されます。

EDSには別の特長として、カスタマイズの自由度が高く、高度な専門技術を必要とせず、経験が浅い技術者でも「何とかなる」という点もあります。技術者不足が深刻でもスタッフを増員しやすく、早く現場に投入できるのでネットワーク管理者は助かり、若手を研修費用をあまりかけなくても戦力化できるので人件費コストが抑えられ、ボスのシビアなソロバンにも合う、というわけです。

ネットビジネスを新たに起業したい人にとっても、ネットワークインフラの構築や維持に必要なコストが下がり、歓迎されます。たとえばネット通販事業の立ち上げを考える起業家が、コストを抑えるために最初はアマゾンや楽天市場に出店してそのシステムを〃間借り〃しようと考えていたのが、自前のインフラ構築に切り替える可能性も生まれます。

IOStokenは、このEDSの売り込みのために生まれたと言っても差し支えありません。ブロックチェーンを技術的に評価していて、処理速度などの欠点が改善されれば部分的にでもそれをとり入れたいと考えているオンラインサービスプロバイダーは、決して少なくありません。やるかやらないかは別として、基本的には「FANG」と呼ばれるフェイスブックでもアマゾンでもネットフリックスでもグーグルでも、EDS搭載のIOStokenのプラットフォームの導入は可能です。

ネットビジネスを陰で支えるネットワーク管理者が「EDSは良い」と評価してどんどん採用しはじめたら、IOStokenはその維持費用などの支払いに使われて需要が増え、仮想通貨としての価値も上がっていくことになります。それを促すためにIOStokenには、それに対する評価が高くなればなるほどユーザーはマイニング(採掘)の量を増やすことができ、トークン発行量が増加していくアルゴリズム「PoB(Proof of Believeability)」がとり入れられています。

エアドロップには正の効果と負の効果がある

ネットビジネスを支え管理者の課題を解決するIOStokenの発行量の上限は210億IOSTです。国内の仮想通貨取引所には上場していませんが、海外では日本人ユーザーも多い大手取引所のBinance(バイナンス)をはじめ、KuCoin(クーコイン)、Huobi(フオビ)、OKEx(オーケーイーエックス)、BigONE、IDEXなどに上場しています。

ホワイトペーパーのロードマップによれば、現在はまだ開発の初期段階で、テストを終えて2019年の第2四半期(4~6月)から第3四半期(7~9月)にかけての時期にEDSを搭載したIOSネットワークのDAppsがリリースされ、ネットワーク管理者向けに提供される予定になっています。

IOStokenはバイナンスに上場後の2018年1月中旬、期間限定でトークンを希望者1人につき68IOST(当時のレートで約240円)でタダで配布する「エアドロップ(Airdrop)」を実施しました。たとえて言えばヘリコプターから金券が降ってきて、拾って取引所に持っていくと即、現金に交換できるようなものですから、大きな話題を呼びました。その「正の効果」のおかげか、バタバタと10を超える取引所に上場しました。
レートのピークは2018年1月25日で1IOST=0.13米ドル(約14円)を超えましたが、半月ほどでレートは0.03米ドル(約3円)付近まで崩れてしまいました。これはエアドロップの「負の効果」と言えます。タダでもらったものはたとえ日本円で1,000円未満でも、長く持つより、売り急いで早く利益確定したくなる人間心理があるからです。その後は低迷していましたが、5月初旬に1IOST=0.07米ドル(約8円)を超えて第2のピークを迎えました。しかしその月のうちに0.04米ドル(約5円)前後まで下がり、なかなか離陸しません。

IOStokenの構想は、ネットワーク管理者本人やネットビジネスの経営者や、その近くにいる人なら理解しやすくても、そうでない人たちにはなかなか理解されにくいという弱みがあります。たとえばネット通販サイトでよく買物している人で、そこのネットワーク管理者の悩み、苦しみを想像できる人は、ほとんどいないでしょう。想像できても、割引サービスなどしてくれません。たいていは大規模なシステムダウンや個人情報の流出事件が起きて報道された時、「当事者の技術の人は大変だろうな」と思う程度でしょうか。

仮想通貨の投資家には情報技術がわかる人が多いといいますが、それでも個人向けの「B2C」と比べれば企業向けの「B2B」は、成功へのロードマップをなかなかイメージしにくいものです。だからこそIOStokenはエアドロップを実施して投資家の注目を集めようとしたのでしょう。

今後、やはり重要になるのは、IOStokenのEDSの技術はネットワーク管理者にこんなに支持されたという実績数字です。トークンのレートは上がりそうでなかなか上がりませんが、投資するなら、たとえば「FANG」が採用するなどある程度の実績を残せるまでは長い目で見ていく必要がありそうです。