「Lattice(ラティス/単位:LTI)」は2018年6月30日までICOトークンセールを実施中です。ICOの目的は、ブロックチェーンに「量子コンピュータ」を応用する研究開発プロジェクトのための資金の調達で、東欧エストニアの企業が計画しました。

「量子コンピュータ」は、どれだけすごい?

junterao【Lattice(ラティス)で未来に投資する】「量子コンピュータ」にブロックチェーンを結びつける未来型研究開発プロジェクト2018年4月24日から6月30日までICOトークンセール実施中のLatticeは、「量子コンピュータ(クアンタム・コンピュータ/Quantum Computer)」技術を進歩させるために発行される仮想通貨です。では量子コンピュータとは、いったい何なのでしょうか? 可能な限りわかりやすく簡潔に説明します。

量子コンピュータは、「量子力学」という物理学の理論を応用してつくるコンピュータです。量子力学は高校の物理にも一部とり入れられていますが、本格的な勉強は大学の理科系の学部に入学してするような難しい学問です。量子力学でどうやってコンピュータをつくるかは、難解すぎるので省きます。

現在ひろく利用されるコンピュータの基本構造は20世紀前半、ハンガリー生まれの数学者ジョン・フォン・ノイマン博士が考え出しました。簡単に言えば「1+1=2」のような基本的な計算を、順番に何億回という天文学的な回数、積み上げて計算の結果を出す「逐次処理方式」という方法です。それを「ノイマン型コンピュータ」と言います。

1億回でも1回を1万分の1秒で行えれば1万秒=2時間43分で終わります。20世紀後半、もっと速く計算できるコンピュータを目指し、IBMなどコンピュータメーカーもインテルなど半導体メーカーも開発競争を繰りひろげました。今のパソコンも、タブレットも、スマホも、そんな技術開発の結晶です。

その一方で、ノイマン型とは異なるコンピュータの基本構造を発想し、それを発展させてノイマン型に追いつき、追い越そうという研究開発の流れも出てきました。それらをまとめて「非ノイマン型コンピュータ」と言います。逐次処理方式に対抗する「並列処理方式」「分散処理方式」や、人間の脳の構造にヒントを得た「ニューロコンピュータ」などさまざまなアイデアが出ましたが、その一つとして量子コンピュータが出てきました。

量子コンピュータとは

非ノイマン型はコンピュータと名乗りながら発想も原理も構造もノイマン型と全く異なる「非主流派」です。その非主流派で大きな期待を集め、メディアでもAI並みに注目される「ホープ」が量子コンピュータです。

今のパソコンはノイマン型の子孫ですから、どうあがいても量子コンピュータになれません。もし将来、量子コンピュータがノイマン型にとって代われば、「量子パソコン」が出現して普及し、現在のパソコンは博物館に追いやられるかもしれませんが、その日は永遠にやってこないと言う人もいます。

「ノイマン型と量子コンピュータは得意分野ごとにすみ分けして共存する」と考えるコンピュータの専門家もいます。その量子コンピュータの得意分野は、国勢調査や天気予報のような「ビッグデータの処理」や、いま注目の「人工知能(AI)」などです。「兼ね合わせ方式による超並列性」という特長を活かせば、現在の世界最速のスーパーコンピュータの3600万倍もの計算速度が実現します。

量子コンピュータ+ブロックチェーンの威力

しかし重要なことを知る必要があります。それは、量子コンピュータは理論が確立し、構造も設計のしかたもわかっていて、部分的な試作や実験もされていますが、完成して実用段階に達した量子コンピュータはまだ何一つ、できていないということです。

それをAIなどに結びつけ、たとえば「どんな暗号でもたちまち解読され、セキュリティが崩壊する」とか、「AIの能力が人間の脳を超えるシンギュラリティ(技術的特異点)をに到達し、人間はAIに支配される」とか、オーバーな想像が一人歩きしています。アメリカのNSA(国家安全保障局)や、マイクロソフト、グーグル、フェイスブックなど有名IT企業がこぞって量子コンピュータの研究開発に乗り出していることも、「すごい未来技術ができる」という想像をかき立てていますが、それはクールにとらえるべきです。

現時点で最も完成形に近づいたとされる量子コンピュータ「D-Wave」も、プロトタイプ(試作品)で完成品ではありません。そのためこれから新たな技術をとり入れて搭載できる余地があります。

その有力候補が、仮想通貨でおなじみの「ブロックチェーン」です。その理由は、ブロックチェーンの特長を活かせば他の量子コンピュータとの「暗号破り対決」に勝てるかもしれないからです。

コンピュータセキュリティを支える「暗号」の世界では将来、「正義の味方」の量子コンピュータがつくった暗号を、「悪の味方」の量子コンピュータが片っ端から解読して大事な情報を悪事に利用するという悪夢のような時代が来るとも言われています。将棋の名人戦のような最高水準の頭脳と頭脳の対決ですが、将棋と違い「助っ人」の出来次第で勝負が決まるとも言われています。その助っ人の有力候補がブロックチェーンです。ブロックチェーンによって、どんな量子コンピュータでもやぶれないコンピュータセキュリティが確立できるのではないかと期待されています。

その研究は世界各国で始まっていますが、有力なのがエストニアという国です。旧ソ連のバルト三国の一角でロシアの隣国ですが、欧州連合加盟国でユーロ圏でもあります。旧ソ連が宇宙開発や原子力開発に熱心な科学大国だった流れで、この国でも量子コンピュータが研究されていますが、その中心的な存在がLattice(ラティス)というIT企業です。Latticeには数学者、物理学者、コンピュータエンジニアなどが集まり、ヘッジファンドを顧客に金融工学を手がけていましたが、フィンテック、ブロックチェーンの研究から量子コンピュータへと進みました。

ブロックチェーンに量子コンピュータを応用

「量子コンピュータ」にブロックチェーンを結びつける未来型研究開発プロジェクト切り札は社名の由来の「格子(ラティス/Lattice)」がつく「格子暗号(Lattice Cipher)」の技術で、それを「ブロックチェーンに量子コンピュータを応用する」と言っています。すでに量子コンピュータ「D-Wave」を実装し、〃破られない〃格子暗号でブロックチェーンを管理する世界初の実証実験に成功したと発表しました。その証拠として開発したソースコードの一部を公開しました。

また、ブロックチェーンは量子コンピュータの技術「量子アニーリング(Quantum Annealing)」の応用先でもあり、その理論はすでに完成しています。その二つが実用化されたら、仮想通貨のテクノロジーは一新され、より安全に、より高速になり、それが評価されて銀行などの金融システムでも採用される可能性があります。

Larriceが研究を加速させる目的でICOする仮想通貨が、社名と同じLatticeです。ICOで得る資金は日本円で最大11億円と見込まれ、格子暗号でブロックチェーンを管理する追加の実証実験や、量子アニーリングによる高速送金の実験などに使われるとホワイトペーパーで述べていて、資金使途は明確です。

ICOに商売っ気がないのは科学者だから?

仮想通貨Latticeは現段階ではイーサリアムベースのERC20トークンですが、イーサリアムの「PoW(プルーフ・オブ・ワーク)」ではなく、トークン保有量に応じて新規発行トークンが付与される「PoS(プルーフ・オブ・ステーク)」を採用しています。一般の投資家にとっては自動的に配当がつくようなもので、このほうがメリットがあります。

最大発行量は不明。事前に無料配布のエアドロップもプライベートセールも何もないまま、ICOトークンセールは2018年4月24日に始まり、6月30日まで実施されます。日本語の公式サイトで申し込めますが、交換に利用できるのはイーサリアム(ETH)だけでレートは1LTI=0.00001ETH。ただし最小購入金額は0.5ETHで日本円換算で35,000円を超えます。早期購入や大量購入のボーナス特典はありません。販売上限(ハードキャップ)の1,000万米ドル(約11億円)に達すればトークンセールは繰り上げ終了します。

ロードマップによれば独自のブロックチェーン技術の開発終了は「2018年7月11日」と日付まで書いてありますが、取引所上場は「2018年9月予定」とありながら、具体的な取引所名などは明らかにされていません。

科学者のプライドなのか、ホワイトペーパーには「量子コンピュータはブロックチェーンを劇的に高速化する」「世界で初めて実現する」「(NEOやIOTAなど)他のプロジェクトは科学的な根拠に乏しい」など、独善的なニュアンスが漂います。〃有言実行〃は結構ですが、見て引いてしまう投資家がいるかもしれません。CEOやメンバーの名前や役割も公表されていません。

ただ技術の概要や優位性を説明するばかりで、市場戦略、ロックアップ(売却禁止)期間、バイバック(買い戻し)やバーン(焼却)のようなトークン価値の維持・向上策が説明されていないことも、ICO評価サイトから指摘されています。

そのあたり今後、商売っ気のなさを反省して積極的に情報を公開し、仮想通貨の実務にくわしい人の助けを借りて投資家へのサービスを充実させ「買ってください」と頭を下げるようになれば、もともと技術や将来性の評価は非常に高いだけに、鬼に金棒でしょう。