「Sprouts(スプラウツ/単位:SPRTS)」は2015年6月に公開された古参の部類に入る仮想通貨です。その目的は「慈善活動(チャリティー)」だとされていますが、いまだに具体的な活動は行われていません。2017年12月に「Sprouts+(スプラウツ・プラス)」、2018年1月に「Aurilium(オーリリウム)」に改名(リブランディング)しました。
「もやし」のように勝手に増える仮想通貨
「Sprout」(スプラウツ)とは英語で「新芽」という意味です。春、竹やぶで地面からタケノコの芽が出て、やがてそこから新しい竹が生えてくるように、Sproutsはトークンを保有しているだけで勝手に増殖していくという面白い性質があり、日本の投資家の一部の間では「もやしコイン」と呼ばれています。このあだ名は「Sprouts+」「Aurilium」と改名を繰り返しても変わりません。
一応、その目的は「慈善活動(チャリティー)のためにある」とされ、ウェブサイトでは「人権や環境や医療など地球全体の問題の解決に役立てる」と堂々とうたっていますが、具体的にはどんなことをやって社会に貢献するつもりなのか、いまだに明らかにされていません。
Sproutsは2015年8月に取引が始まった仮想通貨で、新しくて変化が激しいこの世界では3年近くもたてばもう古参です。ビットコイン(BTC)もそうであるように、古参の仮想通貨は最新のものと比べるとどうしても技術的に遅れてしまって取り残されていく「陳腐化」の現象が起きますが、Sproutsはその技術スペックのユニークさによって陳腐化がカバーされているような側面があります。
それは、イーサリアムベースでありながら、アルゴリズムとして「PoW」と「PoS」が両方採用されている「ハイブリッド・タイプ」だという点です。「PoW」は英語のProof of Workの略で、マイニング(採掘)という仕事(Work)によってトークンが増殖し、たとえばビットコイン(BTC)はこのタイプです。
Sprouts(スプラウツ)のマイニングと増加ペース
そのマイニングはロシアや中国で大規模に行われました。一方の「PoS」は英語のProof of Stakeの略で、保有しているだけで勝手にトークンが増殖していきます。たとえばゲーム関連の著名トークンのeXperience Points(XP)がこのタイプで、アルトコインの雄のイーサリアム(ETC)も、アルゴリズムをPoSに移行させると表明しています。
このPoWとPoSが両方混ざっているので、Sproutsはマイニングをすると増えますが、ただ持っているだけでも増えるという性質を帯びています。PoSの増加ペースは保有すると最初の5日で10%増え、それ以後はPoSの利用1回ごとに2%ずつ増えるようになっています。
「勝手に増える」という点は、2015年当時はけっこう話題になり、それを気に入った日本の一部の仮想通貨投資家が、大豆や小豆を買ってきて部屋の中で水を入れた瓶に入れておくと勝手に生えてきて食べられるようになる野菜「もやし」にたとえ、「もやしコイン」というニックネームをつけています。
Sprouts(スプラウツ)の魅力
Sprouts(スプラウツ)は仮想通貨の草創期からあるトークンで、「投資家への利益還元が不十分」「リスクを十分に説明していない」などホワイトペーパーが重箱の隅をつつくようなレビュー(評論)にさらされる最近のICOの洗礼を受けていないこともあり、いろいろな意味で不思議でいっぱいです。目的としている「慈善活動」に実態が伴わないこと、アルゴリズムが2つあることもそうですが、「名前を変えたがる」こともそうです。
Sproutsの開発が低調なのを「再活性化して復活させる」目的で開発チームが交代して(新旧開発チームの間の「内紛説」もあり)2017年12月、ホワイトペーパーも一新させた新版への転換が始まりました。名前を「Sprouts+(スプラウツ・プラス)」と改め、Sproutsとの間で「100万SPRTS=150SPRTS+」という一定レートでの交換を始めました。
まるで売れない芸能人が姓名判断で芸名を変えて心機一転、再出発するようなものでしたが、2018年1月、今度はSprouts+に代わって「Aurilium(オーリリウム)」という新しい名前を使い始めます。誰の入れ知恵なのかラテン語で「協調」「協力」という意味があり、「多くの好意的な意見をいただいた」そうです。
しかし、ツイッターアカウントや掲示板(フォーラム)はこの〃古典の教養の薫り高き名称〃に変わりましたが、ウェブサイトはSproutsのまま、ホワイトペーパーはSprouts+のままです。仮想通貨がその名前を変えるのを「リブランディング」と言いますが、新版をリリースしても、改名しても、投資家の間でも取引所でも元のSproutsの名前で通用していますので心配はいりません。なお、その単位は一貫して「SPRTS」です。
Auriliumは2018年中に正式リリースすべく開発を進めているそうですが、それがいつになるかはまだ明らかにされていません。開発チームはそれについて「我々はボランティアで、それぞれ本業の仕事があって、家族がいて、食べていかねばならない。睡眠時間も必要だ」と言い訳しています。そんな、レビューを書く人が「態度に問題がある」と怒りをぶちまけそうで、〃キワモノ〃視を助長するような「悠長さ」「ユルさ」も、この不思議ちゃんトークンの〃コケティッシュな魅力〃の一つ、と言えるでしょう。
Sproutsは、最初からその開発をボランティアの有志に依存してきました。「草コイン」と呼ばれるような手あかのついていない素人っぽさを応援する人もいれば、そんな怪しいアマチュア集団には絶対に投資したくないと敬遠する人もまた、存在します。野球ファンに高校野球が好きな人もプロ野球が好きな人もいるようなもので、どちらがいい、悪いという話ではありません。
Sprouts(スプラウツ)は仮想通貨の世界の「不思議ちゃん」
Sprouts(スプラウツ)の発行上限は5億SPRTSです。現在の時価総額は8億円余りです。国内の仮想通貨取引所にはまだ上場していません。海外の取引所では「Coin Exchange」に上場しています。日本円では買えませんが、ビットコイン(BTC)、ライトコイン(LTC)、ドージコイン(DOGE)との交換で買えます。
よく指摘されているようにビットコインは手数料が高く、その点ではドージコインで買うのが最も有利と言えます。ドージコインを手に入れるには、Coin Exchangeでビットコイン、ライトコイン、イーサリアムクラシック(ETC)から交換することができます。
不思議ちゃんトークンSproutsは、チャートも気まぐれです。2017年12月のSprouts+への交換開始や、2018年1月のAuriliumへの改名は、そのたびに交換レートをはね上がらせました。しかしアッと言う間にメッキがはげて元の低レートに戻ってしまいました。
2018年6月現在、1SPRTS=0.000070円台です。2015年には0.1円台をつけていた時もありましたが、同じ古参トークンでもビットコインなどとは反対にレートは下がる一方で、なかなか上がりません。安ければ買いやすいことは買いやすいのですが、ビットコインのレートが高騰した2017年末から2018年の年始にかけての頃と違って、他のトークンで得た収益が回ってきて刺激になるような資金流入局面は望めなくなっています。その分、外の追い風頼みよりも、トークン自身の魅力を高める努力が必要になってきています。
Sprouts(スプラウツ)の可能性と将来性
Sprouts(スプラウツ)には、非公式ですが「Discard」という日本語チャットアプリのコミュニティもあり、「もやしが育った」など日本語のメッセージがけっこう活発に飛び交っています。日本には「出来の悪い子どもほどかわいい」ということわざがありますが、ボランティア開発チームに対する妙な好感とコケティッシュな魅力で〃愛される〃不思議ちゃんトークンSproutsも、Auriliumの開発が遅れに遅れて「有言不実行」となれば、さすがに愛想をつかされるはずです。
その意味でも、2018年中にあるというAuriliumのリリースはSproutsにとって、新しいステージへの転換点になります。Auriliumに対する投資家の評価の良し悪しによってSproutsの交換レートの行方も左右されます。投資家の人気が集まってレートが上昇すれば、海外あるいは日本でも新規に取り扱う取引所が現れて、それがレートをさらに上昇させる起爆剤になる可能性もあります。Auriliumに期待をかけるとするなら、1円を割り込んで時価総額も8億円台の現状のレートは割安だと解釈できます。
Sproutsは、今は具体的には何もしていない状態ですが、「人権や環境や医療など地球全体の問題の解決に役立てる慈善活動(チャリティー)」というその目的の看板はおろしていません。たとえば人権なら「アムネスティ・インターナショナル」、環境なら「グリーンピース」、医療なら「国境なき医師団」といった国際的に活動する知名度の高いNGO団体があります。
しかし、Spoutsが寄付やクラウドファンディングを通じてそうした団体を支援するような話が出てくれば、ステータスが上がって、知名度も交換レートも上がる可能性があります。もしそうなれば、Spoutsも〃不思議ちゃん〃を脱して、しっかりした〃大人の仮想通貨〃として公認されます。