日本では、SNSを中心に仮想通貨が大ブームとなっています。最近では紙雑誌やテレビなどでも仮想通貨に関する特集をすることが多く、投資に興味がない人でも「仮想通貨」や「ビットコイン」という言葉を聞く機会が増えたでしょう。
では、日本以外の国での仮想通貨の普及率はどの程度なのでしょうか。残念ながらすべての国で普及率を調査したデータは今のところ存在しませんが、世界の主要国が集まるG20でも仮想通貨が議題として取り上げられているように、仮想通貨は徐々に普及し始めています。
そこでまずは、世界の主要国で行われた調査結果を紹介します。
ダリアリサーチによる調査
ダリアリサーチは、ドイツに本社がある世界市場調査会社です。ダリアリサーチは、2018年5月9日に仮想通貨の保有状況などについて、仮想通貨の市場が大きいといわれている8カ国での調査結果を発表しました。なお、8カ国とはアメリカ・イギリス・ドイツ・日本・韓国・中国・インド・ブラジルです。
そして、インターネットを通じて29,000人からアンケートをとり、仮想通貨に対する認知度、仮想通貨とは何なのかということについての理解度、購買意欲、保有率が公表されました。
仮想通貨の認知度と理解度
調査によるとまず、全体の75%にあたる人が仮想通貨のことを認知していました。認知とは「聞いたことがある」という状態です。認知度のトップは韓国で約87%の人が仮想通貨という言葉を聞いたことがある、と回答しました。
日本は韓国に次ぐ第2位で約83%です。仮想通貨に興味が無くても、SNSやメディアで仮想通貨という言葉を目にしたり、耳にする頻度は増えているので、納得感がある数字ではないでしょうか。最下位でもブラジルの61%なので、調査対象の8カ国では、かなりの人が仮想通貨という言葉を認知しているとわかります。
次いで、「仮想通貨とは何なのか」についての理解度ですが、全体では50%という結果になりました。理解度のトップは日本の61%で、2位は韓国の60%でした。最下位は中国の36%です。人口が多く貧富の差も大きいので、仮想通貨という言葉は知っていても、詳しく理解して投資しようと考える人は3人に1人程度なのでしょう。
仮想通貨の購買意欲と保有率
仮想通貨について認知していたり、理解していたりしても実際に投資をする人はそれほど多くありません。調査によると、6ヶ月以内に仮想通貨投資をしようと考えている人は、平均で4%にとどまりました。この購買意欲についての調査では、イングランドの6%、アメリカ・ブラジル・ドイツの5%が上位でした。一方、日本は3%、韓国は2%となっていて、認知度と理解度が高めの2カ国では購買意欲がそれほど高くないようです。
次いで、保有率ですが、トップは日本の11%でした。つまり、日本人は世界で一番仮想通貨投資をしている人の割合が多い国と言えるのです。一方、これまでのデータでは日本と類似することが多かった韓国は、6%で第5位になっています。
平均は7%で、日本以下、ドイツ、アメリカ、イングランドという順番になっています。日本人はすでに仮想通貨を保有している人が多いので、「これから買おう」と考えている人が少ないのかもしれません。
ダリアリサーチの調査はインターネットを通して行われたので、全ての調査結果は、一般的な感覚よりも高めに算出されていると思われます。それでも、仮想通貨市場が大きい国では大半の人が仮想通貨について知っているということなので、普及率はかなり高いといえるでしょう。
なお、ダリアリサーチの調査は下記のURLで公表されています。
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日本での普及率についての調査
サイバーエージェントの子会社である「新R25」が、2018年4月に日本国内での仮想通貨の普及率について調査しています。この調査では、仮想通貨などの新技術にたいするアンテナが一番強い全国の25~30歳の男性が調査対象になっています。
調査によると、仮想通貨を保有している割合は全体の14%となりました。ダリアリサーチの調査では日本全体で11%だったので、やはり25~30歳という年齢層は、仮想通貨への関心が強いようです。
ちなみに、はじめて仮想通貨投資をしたのは79%が「2017年以降」となっており、仮想通貨ブームに合わせて投資を始めた人が多いようです。また、保有額は「5万円以下」と回答した人がもっとも多く35%を占めました。基本的には、自分が自由に使えるお小遣い程度の範囲で投資している人が多いようです。
新R25による調査は、下記のURLで閲覧できます。
https://www.cyberagent.co.jp/news/detail/id=21497
主要国以外での仮想通貨の普及率
ここまで紹介してきた調査は、日本を含めた先進国が多く、仮想通貨市場が大きい国についてでした。しかし仮想通貨は、実は発展途上国でこそ、真価が発揮されるといわれています。そこで、先進国以外の普及率についても解説します。
まず、仮想通貨が広く普及する可能性が高いと言われているのが、東南アジアです。実は東南アジアでは、日本のように銀行口座やクレジットカードが一般的に使われているわけではありません。クレジットカードの普及率は3%、銀行口座の保有率は27%程度といわれていて、大半の人は資産をどこかに預けるという発想がないのです。
また、銀行口座などを持っていないということは、銀行振込による送金や、現金以外での決済も広まっていないということです。だからこそ、仮想通貨が普及する可能性が高いと言われています。仮想通貨は銀行口座などを持っていなくても、スマホさえあれば取引可能で、店舗決済にも使えます。
東南アジアのなかでもタイはスマホ保有率が70%、マレーシアは81%となっていて、銀行口座よりもはるかに普及率が高いのです。実際、OmiseGoという仮想通貨が、東南アジアを中心に広まっていて店舗決済で使われています。具体的な普及率についての調査結果はありませんが、東南アジアが仮想通貨先進国になる可能性もおおいにあります。
また、中東やアフリカには、国策として仮想通貨を積極的に推進している国家もあります。たとえばジンバブエは、法定通貨であるジンバブエドルがインフレしてしまい、実質的にはほぼ価値がなくなってしまっています。そこで、国家が仮想通貨を発行して法定通貨の代わりに普及させようとしています。
他にも南スーダンやナイジェリアなども法定通貨のインフレによって経済が混乱していて、仮想通貨を取り入れようという動きがあります。経済危機によって国内が混乱しているベネズエラも、仮想通貨を国家が発行しようという動きがありました。
このように、発展途上国だからこそ仮想通貨のメリットを享受できる国も少なくありません。発展途上国では、マネーロンダリングなどへの悪用を懸念して、中国や韓国のように仮想通貨にたいして厳し目な規制を敷く国もありますが、発展途上国は仮想通貨の普及をチャンスととらえていることが多く、規制もほぼありません。
仮想通貨はインターネットにつながる端末さえあれば、誰でも取引可能です。法定通貨のように国家の壁に阻まれることもないので、国内経済が混乱している国こそ、仮想通貨を普及されることによって経済を回復できる可能性があるのです。今後は、東南アジアや中東、アフリカなどの発展途上国でも仮想通貨の普及率が上がっていく可能性が高いはずです。